プロローグ
魔族の王は退屈だ。
魔族には大体種族ごとに首領がいて大体統括できているし、
人間のように雑多に混ざって生きる種族も、大体が種族や魔力量で
自然とランク付けされ、そこを覆すような争いごとは滅多に起きない。
そして、彼らは自分たちで生活をしている。
だから、本来なら、魔族には政治などは必要ない。
なのになぜ王が必要なのかといえば、王がいれば場が安定するのだ。
その魔力が大きければ大きいほど、その地のリズムが安定し、
その地に住むものたちの魔力も安定する。
その安定した魔力を吸収し、魔王の魔力はますます安定する。
存在すればそれでいいから、仕事は決して多くない。
そこをもってきて、王が不自由な思いをしないよう仕えるもの、そして
少しはある細々とした仕事の管理をするものなどが
魔王のすることをますます減らす。そして寿命は無駄に長い。
…そして、暇を持て余す。
歴代の王も退屈だったようで、ギャンブルしてみたり、
無駄に人間の国を脅かしてみたり、
気に入ったペットを飼って育てて遊んでみたり、
淫蕩にふけってみたり…。色々工夫して退屈を紛らわしていたようだ。
私も一通りはしてみたが、正直つまらなかった。ギャンブルは相手の思考も
未来も見えてしまうし、人間は脅しても怯えて近づいても来ない。
綺麗どころを集めて乱れた生活もしてみたが、ときめくものが一つもない。
唯一続いてるのが、虹色に輝く鳥を飼っていることだ。もちろん、ただの
鳥ではない。予言をするのだ。ただし、当たることはほぼ全くないと言われている。
明日は晴れると言われたら傘の用意をするといいと言われるほどに。
その当たらない予言を楽しむ気持ちでそのアホ鳥を可愛がり、そのたわごとをいつも聞き流していたのだが。
…それが全ての発端になった。




