↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/10

第五話

 その後、円は部活のため体育館へと戻った。

 一方慎は、体育館に向かう円に『何事もなかったように振る舞っとけ』と釘を刺してから、文と一緒に八百万探偵部の部室(不法占拠した空き教室)へと帰ってきていた。

 ――考えをまとめる。

 聞いたところあの人形は、円が荷物を取ろうとして自分のロッカーを開けたら、その中に入っていたらしい。人形をロッカーに入れたのは、脅迫状を送りつけてきたのと同一人物と見て間違いないだろう。


「……ふむ……」


 口に手を当て、どこに向ける気もない視線を床に送る。

 客観的には調査らしいことを何一つしていないが、慎は既に事件の核心に気づいていた。

 核心――中心にある事象。

 それは事件の起きた原因であり――犯人の動機だ。

 ……ただ、


「犯人そのものがわからなきゃ意味ね―よな」


 犯人が誰なのかが皆目見当つかなかった。


「……まったく、どうしたものか……」


 腕を組み顔を上げると、視界の端に和風の人形が映った。

 先程の悪趣味な呪人形だ。事件の手がかりにと、回収しておいた。

 その人形を慎は改めて眺めてみる。服は傷つき、髪もまったく整っていないが、よく見るとその身体の部位に目立った汚れはない。胸部の『呪』の字についても、赤黒い色をしているが最近書かれたような鮮やかさもある。この人形はそれほど古い物ではないようだ。――そして、服や髪は年期ではなく、意図的にボロボロにされたと、そんな気がした。演出のためにわざわざ作ったのだろう。

 少し上に目を動かすと、人形の顔が目に入った。やはり新しげな質感だ。しっかりした作りで、それ故に「作り物」の感じを大層醸しだしていた。呪いの人形を自称するにはどうにも無機質である。

 しかし、瞳にはどこか悲愴感が滲んでいた。


「……慎……」


 急に名前を呼ばれて、今度は文に目を向けた。


「なんだ?」


 文が自ら話を切り出すなんて珍しい。つまり文がこれから話そうとしているのは、それほど大事なことなのだろう。

 文は件の人形を指差し、


「……その人形にも……悪意は、ない……」

「ん? ……あ、そうか。これにも一応、お前の力は有効なんだな」


 慎の言葉に、コクリと頷いて返す。


「……それにしても、やっぱり悪意はない……か……」


 こんな人形、一見すると悪意に満ち満ちてるがな。慎はそんなことを考えてから、訊いた。


「悪意がないなら、何があるんだ?」

「……謝罪の念……」

「……なるほど――って、ん? 謝罪?」


 慎はそこで一つの『違和感』を覚えた。

 否、思い出した。

 違和感というか、少し引っかかっていたことがあったのだ。

 慎は、「もしかして」と虚空に呟き、思考を再開する。


 そして、閃いた。


「――そういうことか」


 慎はニヤリ、と口の端をつり上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。