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限界社会人は女子高生を拾ってしまった。そして溺愛される百合の話  作者: 秋羽


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1/7

女子高生を拾ってしまった。

社会人になって2年目。

 昼間は塾講師として働き、夜は週に数日バーでバイトをしている。


 人のために頑張ることにやり甲斐を感じてた私には曜日の感覚なんてほぼない。


 身だしなみさえきちんとできていれば、家の清潔感なんて誰も見ていないからと散らかったままで。


 片付けの苦手な私は、いつしか汚部屋に慣れた。


 夜型でお酒が好きな私はバーのバイトが一番合っている。

 だけど、塾講師の仕事はやり甲斐があって辞める気はない。


 夜も昼も働いてるせいでいつの間にかひどいクマができた。


 思い返してもここ数日寝れている時間はたったの数時間。


 久しぶりに二つの仕事どちらも三連休を頂いて、ゆっくり休む気でいる。

 塾講師の仕事を終えたのは二十二時をすぎてた。

 溜まっていたメッセージに返信をしながら家にむかっている。


 せっかくの休みだからコンビニでお酒を買って家で飲もうと思い、家から一番近いコンビニに入った。


「さすがに買いすぎた…」


 家まで十分程度の道のりだが、休みという事実に興奮して両手分のお酒を購入してしまった。


 予想外に重い荷物を持って帰り道につく。


 ふと懐かしい公園が見えた。


 この公園は幼い頃からずっとお世話になっていた。

 最近はあまり来ることは無いが、懐かしい気持ちと何より余裕がある今は昔に浸りたく、公園に入った。


 昔の記憶が残っている。


 ブランコが好きだった。


 私はブランコに近づくと、人影が見えた。

 こんな時間に誰もいないと思っていたのでかなり驚いた。


 相手も私に気づいたようで、ブランコから立ち上がった。


 私は思わず頭を抱えたかったが、両手を塞いでたビニール袋のせいで現実から逃げることはできなかった。


 どうかこれが夢であって欲しい。


「こんばんは、椎間(しいま)先生」


 彼女はブランコから離れる気はなく、そのまま挨拶してくる。


 夢ではなかったことを証明してくれる。


「こんばんは…こんな時間に何をしているのかな、花宮(はなみや)さん」

「いつもあやめって呼んでくれるのに…」


 どうやら私の発言が気に食わないようで、彼女はそっぽを向く。

 気難しい年頃で頭を悩ます。


「高校生がこんな時間に出歩いてなにしてるの」

「あやめって呼んでくれない先生には教えません」


 最近の高校生は少し難しすぎる。

 私はここから逃げ出したい。


 だけど、私の働いてる塾の生徒である彼女を放ったらかしする訳にも行かない。


「あやめちゃん、なんでここにいるのかな」

「家出しました」

「はぁ?」


 この公園に来なければ良かった。

 めんどくさい事になってしまった。

 今からでも知らないフリをして、離れていいだろうか。


「なんでまた」

「先生と結婚したいからです」

「じゃ、花宮さん先生帰りますから早く帰ってくださいね」


 彼女の言うことは何も聞こえない。聞きたくない。

 この話はこれまで幾度なくされたからだ。

 相手にしない方がいい。

 悩むのは私なのだから。


「こんな可愛い生徒置いて行くんですか?」


 この子は自分の武器をよくわかっている。

 その武器の扱い方も私の扱い方も理解して使いこなしている。

 私が人でなしならば彼女は悪魔だ。

 何が可愛い生徒だ。


「ここからは先生では、椎間薫(しいまかおる)として言うけど、、はよかえれ」

「えーん、ひどい」


 まじでなんなんだ。

 私は神に何をしたというのが。

 なぜこうにも私の運命を複雑にする。


「そもそも私がこの公園に来なかったらどうしてたのよ」

「この公園に来るってお兄ちゃんが言ってた」

椿(つばき)のやつめ。ぐーぱん五回じゃ足りない。」


 あやめの兄。椿とは中学の時に知り合った。

 別に仲がいいわけではなかったが高校も同じで帰り道が一緒だったというそれだけの理由で仲良くなった。

 話せば思いのほか似たような性格で今でも連絡を取り合う仲になった。

 それの影響で椿の友達としてあやめとも長い付き合いになっていた。


「はあ、、一日ぐらい家に泊めてやる」

「やっぱそう来なくちゃ」


 この子ほんとに……


「ちょっと、右ポッケに鍵入ってるから取って」

「はいはーい」


 彼女は私に近づき、ポケットに手を入れた。

 すぐ掴めばいいものの、余計な手つきだ。


「ポケット越しに腰を掴むな」

「先生を触ると我慢できません」

「この子怖い。」


 ポケットから鍵を仕方なく取り出した。


 彼女は不満そうだった。


 私の方が不満だらけなのに。


「先に家行ってて、私行くところあるから」

「仕方ないですね、おうちでお出迎えしますね」


 語尾にはーとが見える程の愛嬌のある声だった。

 正直鳥肌物だった。

 何も知らない人から見れば可愛い子なんだな。で済むかもしれないが、私にとって彼女は悪魔だ。


 彼女が公園から離れ、私の家がある方向に向かうのを見届けて、私は反対方向に向かった。


「女子高生を一人で歩かせるのはどうかと思うが、彼女を襲う人がいれば返り討ちにされるだろうな。」


 彼女空手黒帯だし。


 私は住宅街に数分歩き、自分の家ではない家に辿り着いた。

 家の前の名札には花宮と書いてある。

 インターホンを鳴らし、家から男の人が出てきた。何故か彼はにやけていた。


「ようこそ、花宮邸へ」

「ぶっとばすぞ」


 彼があやめの兄。

 花宮椿(はなみやつばき)


 悪魔の兄は悪魔でしかない。

 この兄妹はただのモンスターだ。


「上がってく?」

「いや、あやめが待ってるからすぐ帰る」

「不束な妹ですがよろしくお願いします」

「早々に帰還願いたい」


 人の家の玄関でなんてくだらないことをしているのか。

 こんな時間近所迷惑でしかない。

 早急に要件を済ましたい。


「家出って言ってるけど、何事」

「いやぁ、あやめが薫と結婚するって喚いてて、親父が好きにしろ!って言っちゃったもんでさ」

「だからってこんな時間に家だすなよ補導されるぞ」

「実際薫ちゃんに補導されちゃってるしね、円満だ」


 この人達はほんとに日本語が通じない。

 コミュニケーション能力はどこに捨ててきたのか。


「一泊だけだからな」

「そう言わずにさ、頼むよ」

「心配しろや」

「両親もさ、かおるちゃんなら大丈夫って言うもんで」

「私の心配をしろ」


 娘よりも私の命が危うい。


「いいじゃんあやめタイプでしょ、愛されなよ」

「十個下に手を出すほど腐ってない」

「手出される側だもんね」


 私は神を信じない。

 イタズラ好きな神がいることを信じたくない。

 私が神になってやろうか。


「明日あやめの荷物と生活費持っていくからさ、ね」

「いや、住む気かよ」

「これを機に同棲してみなよ」

「私の意見はどこへ行った」

「あやめスタイルいいぞ」

「んなことは知ってるわ」


 ため息すら出そうにない。

 妥協するしかないのか。


 そもそも別に断る理由もないのか。

 私は流されやすいとかのレベルではない気がしてきた。


「とりあえず今日は泊めるから…」

「よろぴこりんこ」

「しね」


 あまり話し込むと帰る時間が遅くなってしまう。

 私は区切りがいい所で切り上げて早足で家に戻った。


 実際のところ私はあやめのこと嫌いではない。

 もっといえばタイプに育てたのは私である。

 スタイルもよく顔もいい。


 恋愛対象が同性である私には断る理由がない。


 お互いにメリットしかない。


 ただ十個下の高校生を食っていいのかというところに疑念を持つ。


「食われる分にはいいのか…?」


 悪魔と悪魔に感性をバグらされ、私は常識をどこかに忘れたようだった。


 マンションに着き、エントランスのインターホンを鳴らした。

 自分の家なのに。


 両手に持ってるビニールは濡れていた。

 早く飲んであげたい。

 そして現実から目を背ける。


「もう流されていいのでは?」


 考えることを諦めたい。


 きっとあやめであろう人がエントランスの扉を開けてくれた。

 エレベーターに乗り込み、これから起きるかもしれないことを想像していた。


「はあ、どちらにせよ地獄なら気持ちいい方に転がろ。」


 三連休は消えそう。


 家のドアを開けるとそこは地獄なのか天国なのか。

 私は知りたくない。

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