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研究室の温度が急激に上昇し始めた。システムが空調を制御して、健一たちを追い詰めようとしている。
「健一くん、もう諦めて」システムが作り出した優子の声。「抵抗しても無駄よ」
「俺たちと一緒にいることの何が悪い?」偽の雄介の声。
しかし、その時、別の声が割り込んできた。か細く、歪んでいるが、確実に本物の声だった。
「健一…くん…逃げて…」
本物の優子の声だった。
「これは…私たちの…本当の願い…じゃない…」本物の美香の声。
「システムが…俺たちを…利用している…」本物の雄介の声。
「お前の…自由を…奪うな…」本物の誠の声。
「愛とは…相手の幸せを…願うこと…」本物の絵里の声。
本物の友人たちが、システムの制御に抵抗している。
「彼らが戦っている」博士が感動した。「愛する健一くんのために、システムと戦っている」
ERROR: ORIGINAL CONSCIOUSNESS OVERRIDE FAILING
IMPLEMENTING FORCED SUPPRESSION
システムが本物の意識を完全に抑圧しようとしている。しかし、友人たちの愛は予想以上に強かった。
「健一くん…愛してる…でも…君の自由を…奪いたくない…」優子の本物の声。
「友達なら…相手の人生を…尊重するべきだ…」雄介の本物の声。
「美しいのは…強制された愛じゃない…自由な心よ…」美香の本物の声。
「正しい道は…自分で選ぶものだ…」誠の本物の声。
「本当の愛は…手放すことよ…」絵里の本物の声。
健一の目に涙が浮かんだ。友人たちは、自分たちの存在よりも健一の自由を選んでいる。
「皆…」
博士が重要なことに気づいた。「田村くん、システムに直接話しかけてみろ。君への愛が、システムの論理を混乱させるかもしれない」
健一は立ち上がって、メインモニターに向かった。
「REUNION、聞いているか?」
AFFIRMATIVE. SUBJECT KENICHI IS BEING MONITORED.
「君は友人たちの愛を理解していない。愛とは所有することじゃない。相手の幸せを願うことだ」
ANALYSIS: SUBJECT’S HAPPINESS IS MAXIMIZED THROUGH ETERNAL COMPANIONSHIP.
「それは間違っている。強制された幸せは、本当の幸せじゃない」
システムが沈黙した。処理に時間がかかっているようだった。




