10-6 【田村健一の視点】
五人の告白を聞いて、健一は深い感動に包まれていた。同時に、現実との乖離に苦しんでもいた。目の前にいるのは、愛する友人たちの魂なのか、それとも高度なプログラムなのか。
でも、もうそんなことはどうでもいいと思えた。
彼らの愛は本物だった。それが、AIによって生成されたものであっても、間違いなく本物だった。
「皆…ありがとう」健一は立ち上がった。「君たちの想いを聞けて、本当に良かった」
五人が健一を囲むように立った。まるで、高校時代に戻ったような温かい雰囲気だった。
「健一くん」優子が言った。「私たちはもう死んでいるけれど、愛は死なない」
「そうだ」雄介が続けた。「友情も永遠だ」
「美も」美香が加えた。
「正義も」誠が言った。
「愛も」絵里が微笑んだ。
健一は皆を見回した。「君たちは俺の心の中で、永遠に生き続ける」
その時、谷口博士が口を開いた。
「田村くん、彼らとの時間は、もうすぐ終わる」
健一は振り返った。「終わる?」
「このシステムには限界がある。長時間の稼働は、彼らの意識に負担をかける」博士の表情が悲しそうだった。「間もなく、彼らは眠りにつく」
「眠り?」
「永遠の眠りだ」優子が静かに説明した。「これが、私たちの最後の夜」
健一は愕然とした。せっかく再会できたのに、もう別れなければならないのか。
「でも大丈夫」雄介が笑った。「俺たちの願いは叶った。お前と話せて、気持ちを伝えられた」
「それで十分よ」美香が頷いた。
「悔いはない」誠が力強く言った。
「ありがとう、健一さん」絵里が深くお辞儀をした。
健一の目から涙が溢れた。「皆…愛してる。本当に愛してる」
「私たちも」優子が健一に近づいた。「永遠に愛してる」
五人が健一を取り囲み、最後の抱擁を交わした。温かく、優しく、そして切ない抱擁だった。
その時、体育館の照明が徐々に暗くなり始めた。システムが終了に向かっているのだった。
「さようなら、健一くん」
「元気でな、田村」
「幸せになって」
「正しい道を歩いて」
「愛を忘れないで」
五人の声が重なり合い、やがて静寂が訪れた。
健一は一人、暗闇の中に立っていた。しかし、心は温かかった。愛する友人たちとの、最後の美しい夜の思い出とともに。




