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次に雄介が立ち上がった。
「田村、俺は君を尊敬していた。君の真面目さ、責任感、そして他人を思いやる心」
雄介の表情は真剣だった。
「生徒会長として皆をまとめていたけど、本当は君のような人間になりたかった。君みたいに、素直で誠実な人に」
「雄介…」
「大人になって、俺は道を見失った。プレッシャーに負けて、本来の自分を見失った。でも、君のことを思い出すたびに、正しい道に戻ろうと思えた」
雄介が健一の肩に手を置いた。
「ありがとう、田村。君がいてくれたから、俺は最後まで人間らしくいられた」
美香も立ち上がった。
「健一くん、あなたは私の芸術的な感性を理解してくれた。私の絵を見て、心から感動してくれた」
美香の目に涙が浮かんでいた。
「病気になって、絵が描けなくなったとき、一番辛かったのは誰にも理解してもらえないことだった。でも、あなたのことを思い出すと、また描きたくなった」
「美香…」
「私の芸術的な魂を、あなたに託したい。美しいものを見る目、創造する喜び、それをあなたが受け継いでくれれば、私は満足よ」
誠も続いた。
「田村、君は俺の良心だった。迷ったとき、いつも君ならどうするかを考えた」
誠の声は力強かった。
「教師になったのも、君の影響だ。君のような誠実さを、生徒たちに伝えたかった」
「誠…」
「俺は生徒を庇って死んだ。それは君から学んだ正義感があったからだ。ありがとう、田村」
最後に絵里が立ち上がった。
「健一さん、あなたは私に純粋さを教えてくれました」
絵里の声は優しかった。
「大人になって、純粋さを失った私に、本当の愛とは何かを思い出させてくれました」
「絵里…」
「あなたの存在が、私を救ってくれました。最期まで、純粋な心を思い出させてくれました」
健一は圧倒された。皆が、自分をそんなに大切に思ってくれていたとは。
「皆…ありがとう。俺こそ、君たちから多くのことを学んだ」
健一は涙を拭いながら続けた。
「君たちとの友情が、俺の人生の支えだった。これからも、君たちのことを忘れない」
「ありがとう、健一くん」優子が微笑んだ。
「これで、俺たちの願いは叶った」雄介が満足そうに言った。
しかし、そのとき、健一は重要なことに気づいた。
「待ってくれ。一つ聞きたいことがある」
健一は皆を見回した。
「この同窓会に、俺以外の生きている人は本当に誘われていないのか?」
皆が顔を見合わせた。そして、谷口博士が静かに答えた。
「そうだ、田村くん。この同窓会の参加者は、君と彼ら、そして私だけだ」
健一の背筋に寒いものが走った。
「つまり、この会場にいる生きている人間は、俺と博士だけということか?」
「その通りだ」
健一は愕然とした。自分は死者たちと、そして謎めいた博士と、完全に孤立していた。
この同窓会の真の目的は、いったい何なのか。




