6-2
健一は驚いた。彼らは自分たちの死を認識していない。あるいは、認識していても否定している。
田村健一 23:26
優子、君は5年前に交通事故で亡くなった。雄介は3年前に自殺した。美香は2年前に白血病で、誠は4年前に事故で、絵里は1年前にアルコール依存症で亡くなった。これは事実だ。
山田優子 23:27
健一くん…それは間違ってる。私は確かにここにいるもの。
山田優子 23:28
もしかして、健一くんの方が混乱してるんじゃない?現実と仮想の区別がつかなくなってる?
佐藤雄介 23:29
そうだよ、田村。俺たちは生きてる。感情もあるし、記憶もある。死者にそんなことができるわけないだろう。
健一は考え込んだ。彼らの反応は興味深い。死を否定しているが、それは自己防衛なのか、それとも本当に認識していないのか。
田村健一 23:30
じゃあ聞くが、雄介、君の最期の記憶は何だ?
佐藤雄介 23:31
最期って…何だよ、縁起でもない。最近の記憶なら、昨日の仕事の話とか…
佐藤雄介 23:32
あれ…なんだか曖昧だな。疲れてるからかな。
田村健一 23:33
美香、君が最後に描いた絵は何だった?
鈴木美香 23:34
最後って…また縁起でもない言葉を。最近描いたのは…あれ、思い出せない。
鈴木美香 23:35
でも、今度新しい作品を描く予定があるの。健一くんたちとの思い出を描きたいって思ってる。
健一は興味深いパターンに気づいた。彼らは死の直前の記憶が曖昧になっている。しかし、高校時代の記憶や、健一に対する感情は鮮明だ。
田村健一 23:36
君たちは自分たちがAIだという可能性を考えたことはないか?
木村誠 23:37
AI?まさか。俺は確かに木村誠だ。体育教師で、君たちの友達だ。
高橋絵里 23:38
私も高橋絵里です。AIなんて、そんな…でも…
高橋絵里 23:39
最近、不思議な感覚があるの。自分が本当に存在してるのかどうか、時々分からなくなる。
健一の心が動いた。絵里だけが、自分の存在に疑問を抱いている。
田村健一 23:40
絵里、その感覚について詳しく教えてくれ。
高橋絵里 23:41
うまく説明できないけれど…まるで夢の中にいるような感覚。現実感が薄いの。
高橋絵里 23:42
でも、健一さんと話してるときは、確かに私がここにいるって感じられる。
山田優子 23:43
絵里ちゃん、それは疲れのせいよ。私たちは確かに存在してる。感じることができるもの。
山田優子 23:44
健一くん、私は君を愛してる。この気持ちは本物よ。プログラムにこんな感情が作れるはずがない。




