幕間、検証班、メリーホワイトクリスマス!!
※本編がお見せできる内容ではないので、こちらを公開します。
———桐花琴乃視点、検証班4人のクリスマスゲームパーティー———
クリスマスイブ当日、私たち検証班は恒例になった4人だけのクリスマス会を実施した。
「というわけで、今年も始まりました。検証班対抗クリスマスゲーム大会!!」
「おー」
「いいぞー!」
「やったー」
毎年、検証班である私達4人はクリスマスに集まってパーティーをする事にしている。
これは独身時代だけのイベント、いつかは誰かが結婚したら終わるだろう。ずっとそう思ってた。
それなのに、まさか4人とも同じ人と結婚して、結婚した後もこうやって一緒に遊べるだなんて思ってもいなかったな。
「なんと、今回のゲーム大会の優勝者には、この私、雪白えみりの肉弾接待の甲斐もあって、あくあ様からプレゼントが頂ける事になりました!!」
「わーい!」
「やったー!」
「おー!」
えみりさんは勿体ぶったようにみんなの顔を見渡す。
そういう細かい演出はいいからさっさと発表してくださいよ。
「なんと! 優勝者には、あくあ様が一日限定でお兄様になってくれます!!」
ふぅ……。
私達、3人は精神を整えるように軽く息を吐く。
「みんなには悪いけど、今日は負けないから」
カノンさんの本気宣言に周囲がピリつく。
「どうやら、国営放送で見せてない本気の森川楓を見せる時がきたようですね」
楓さんは普通にその本気を国営放送で見せてください。
きっと鬼塚アナや社員さん達が泣いて喜んでくれますよ。
「というわけで、対戦ゲームはコチラになります!!」
えみりさんがテーブルの上に一つのゲームを置く。
こっ、これは、全女子が一度はプレイした事がある幸せ人生計画ゲームじゃないですか!?
「ルールは簡単。ルーレットを回してみんなでゴールを目指してください。そして、ゴールに到達した時点で、誰が幸せだったかをみんなで話し合って決めるゲームです」
もちろん知ってますよ。
このゲームの肝は最後の話し合いだ。
例えゲームで負けても、最後のレスバと論破次第では簡単に逆転できるゲームです。
それが原因で友情にヒビが入ったり、関係が壊れたりするので、一時期は悪魔のゲームと呼ばれていました。
「というわけで、最初はこの私、雪白えみりから時計回りにルーレットを回し行きたいと思います」
えみりさんがルーレットを回すと7という数字を引いた。
このゲームは引いた数字だけマス目を進められるゲームではありますが、必ずしも高い数字を出せばいいマス目に止まれるというわけではありません。
「4、5、6、7……やったー! 河原であくあ様の写真集を拾う。幸福度が100上がる!!」
「嘘でしょ!?」
「ぐわー!」
そんなバカな!!
幸せ人生計画ゲームといえば、世知辛い世相を反映した社会的なゲームとされています。
河原のマスといえば普通はロケットランチャーを拾うのが定番なのに、そんな美味しいイベントが発生していいんですか!?
「じゃあ、次は私ね。4!」
カノンさんはコマを4つ進める。
「えーと……茶の間のコタツで寝転がってた近所に住んでる小熊先輩から、クリスマスにはサケを食べなさいと言われサーモンサンドを貰う。幸福度が100上がる」
「小熊先輩!?」
「まさかのゆかりゴンきたー!」
嘘……でしょ。
過酷な事で有名な幸せ人生計画ゲームの茶の間イベントといえば、茶の間でクマに遭遇して病院送りにされて10回お休みになるのが定番です。
それなのに小熊先輩? そんなぬるいイベントで大丈夫なんですか?
「次は私ね。やったー! 10だ!! どーもどーも、運だけで生きてきた女、森川楓とは私の事です!!」
ふふっ、楓さんったら、幸せ人生計画ゲームの初手10は最悪の一手だって知らないのかしら?
「9、10と……。おお! 鉛筆を転がして運よく乙女咲に合格!! 奇跡的にあくあ君と同じクラスになる。幸福度100ゲット!!」
え……。初手の10マス目って基本的に不幸イベント確定ですよね?
頑張って入学した学校に男子がいなかった。3年間、男子のいない高校生活が確定、幸福度マイナスとか。
告白もしてないのに目があっただけで振られた。3年間の引きこもりが確定とか!!
「次は姐さんですよ」
「あ、はい」
私はルーレットを回す。
9……ですか。高い数字は良くないんですけどね。
私は自分のコマを9マス進ませる。
「あ……」
私は止まったコマに書かれていた文章に視線を落とす。
【高校入学前にまさかのラッキーイベント!? 受験当日に駅で落としたパスをあくあ君が拾って届けてくれた。もしかしてこの人も同じ学校に入学するのかな? 恋の予感。幸福度300アップ】
うわああああああああああああああ!
うわああああああああああああああ!
うわああああああああああああああ!
「姐さんいいなー!」
「やば。こんなイベントあるんだ」
「くっ、後1マス手前なら!!」
インコさん。いますぐにでもクソゲーが入ってるパソコンごと粗大ゴミに出しましょう。
あなたのやりたかった本当の乙女ゲーがここにあります。
「って、幸せ人生計画ゲームのくせに、色々と緩すぎませんか!?」
「ね。私も同じ事考えてた」
私とカノンさんは、ゲームが入っていた箱に視線を落とす。
【製造企業:タカラエミリー】
まーた、聖あくあ教団のフロント企業じゃないですか!
どうりで難易度がおかしいと思ってました。
えみりさんは無言でその下を指差す。
【ライセンス:ベリルエンターテイメント、監修:白銀あくあ】
なんですと!?
私、こんなの聞いてないんですけど!?
「実はこれ、1月1日にFC会員向けに送付されるベリルのお年玉です」
ええっ!?
FC向けの商品にそんなの準備してたんだ。
「スタッフさんや取引先の人にも送るみたいだから、多分ベリルで知ってたのは阿古さんとあくあ様だけだと思う」
あ、そういえば、天鳥社長が1月1日に特別ボーナスとは別にお年玉プレゼント送るから楽しみにしててねって言ってたっけ……。
これの事だったんだ。
「ねね。早く続きやろ」
「やろうやろう!」
「わかったわかった」
カノンさんと楓さんに促されてえみりさんがルーレットを回す。
ふふっ、あの幸せ人生計画ゲームがこんなにも楽しいゲームになってたなんて思いもしませんでした。
これもやっぱりベリルが、ううん、あくあさんがアイドルをしてくれたおかげなのかな。
「やったー! 勝ったー!」
「結局、カノンが1番かよー!」
「くっ、後少しだったのに」
ふぅ。やはりカノンさんが最初にゴールしましたか。
それでも勝負はまだ終わってません。
「で、ここから誰が勝ちかを話し合うわけなんですが……どうしますか?」
正直、ゲームが楽しすぎて、もう誰が勝ちでもいいかなと思ってます。
えみりさんと楓さんは、最初にゴールしたカノンさんに視線を向ける。
「もう、全員優勝でいいんじゃない? 結局、ゲームの中でも4人全員あくあと結婚できたし! その時点で全員優勝でしょ」
「私もそれがいいと思います」
「やったー! 全員優勝だ!」
「うおおおおおお!」
私たちは4人で手を握って喜び合う。
「でも、優勝商品どうする?」
「そっちは問題ありません。あくあ様はこまけー事なんか気にしない男。優勝者は4人全員ですと伝えても。そうか。で納得してくれる。そういう器の大きい男なのです」
えみりさんの言葉に私たちはうんうんと頷く。
私はあくあさんのそういうところが大好きですよ。
「というわけで、誰が優勝してもいいように、あくあ様から優勝者にプレイの際にはこれを着てくれとお願いされたので、皆さんにはこの服を渡しておこうと思います」
「なになに?」
「どういうこと?」
「って! これ、私が高校生の時の制服じゃないですか!!」
いつの間に、っていうか、前にもこういう事ありましたよね!?
もう2度とないようにクローゼットの奥底深くに封印してたのに!!
「うちには優秀な忍者がいますから。にんにん!」
「忍者ずるい! 聖あくあ教ずっるい!!」
りんちゃんの仕業かと私は頭を抱える。
「そんな事言わずにみんな一度着てみましょうよ」
ま、まぁ、着てみるだけなら。
って、あれ? こんなムチムチだっけ。シャツもなんかパツパツだし、ちょっとだけきついかも?
やば、もしかしたら少しだけ太っちゃったかも。
「ぐへへ。姐さんの制服姿が一番背徳感が半端ないっすね」
「もー!」
えみりさんに後ろから抱きつかれたせいで、限界だったシャツのボタンが弾け飛ぶ。
クリスマスイブにまで、何やってるんですか!
私は今日も変わらず、えみりさんに説教しました。
———白銀カノン視点、検証班のクリスマス。———
冷静になった私たちは制服を脱いで元の服に着替え直す。
「えー。というわけで、次は恒例のプレゼント交換会です!!」
「やったー!」
「待ってました!」
えみり先輩の言葉に楓先輩と姐さんが手を叩いて拍手を送る。
その一方でジト目になった私は、手を叩きつつえみり先輩へと疑いの目を向けた。
「えみり先輩、去年の電動マッサージ器みたいに今年は変なの買ってないですよね?」
「いやいや、あれは純粋な気持ちで、皆さんのコリをほぐして欲しいなと思ったわけですよ。ぐへへ」
そんなぐへった顔をして、全然誤魔化せてないじゃない!
全くもう!!
「それではいつものようにくじを引いていきたいと思います。あ、自分のを引いたら引き直しです!」
えみり先輩はくじが入った箱を私の方へと差し出す。
「ほら、カノン。そうやって疑うなら、今回は最初にお前が引けよ。去年はお前が最後まで残ってたからな」
「わかった」
今年はえみり先輩のクリスマスプレゼントじゃありませんように!
私はそんな事を祈りながら、くじが入った箱から折り畳んだ紙を引く。
できたら姐さんのがいいな。私は自分が引いたくじの紙を広げる。
「げっ!」
「おめでとう、カノン!! 私からのプレゼントです。どうぞ!!」
もーーーーーーーーーーっ!
なんでまたえみり先輩のプレゼントなのよーーー!
絶対に工作してるでしょ!! えっ? そんな事してないって? 私の運がいいだけ?
悪いだけの間違いでしょ!!
「どぞー」
えみり先輩は私にプレゼントの入った紙袋を渡す。
またニヤニヤした顔をして。絶対に変なのを選んだんでしょ。
私は紙袋の中に入っていた袋を取り出す。
「何、これ、服?」
「ささっ! 隣の部屋で着替えてきてください」
えみり先輩からとはいえ、せっかくいただいたプレゼントなんだから着なきゃダメだよね。
私は途中、着替えを手伝うと言って入ってこようとしたえみり先輩に座布団を放り投げて撃退しつつ、プレゼントされた服に着替える。
「何よこれー!!」
「ありがとうございますありがとうございます!」
えみり先輩は涙を流しつつ私に向かって手を擦り合わせる。
私の服を見た楓先輩は顔を赤くし、姐さんは自分が引かなくて良かったと安堵する顔をした。
「なんでクリスマスなのに水着なの!? もしかしてバカなの!?」
「いやいや、冬に水着を着たっていい。でも特別なクリスマス感を味わいたい。その両方を余す所なく堪能できるのが、この欲張りコスプレセットなのです!! いやー、地毛の金髪と碧い瞳が相まって、コスプレ度が高くて捗りますなぁ!!」
私はすけべなえみり先輩の視線から隠すように、水着の上から羽織ってたマントを体に巻き付ける。
「ううっ、着るんじゃなかった」
「文句を言いつつもちゃんと着てくれるカノぽんの優しさに私は感動しました。と言うわけで私もお揃いを着てきました」
なんで、えみり先輩も同じなのを着てるのよ!
ほら、やっぱりさっきのくじは不正だったんでしょ!!
私はえみり先輩に疑いの目を向ける。
「いえいえ、不正じゃないですよ。その証拠に姐さんと楓パイセンの水着も用意しています」
「うぇっ!?」
「はぁっ!?」
こうなったら2人とも巻き込まれてください。
私は水着を手に持つと、真顔で2人に迫る。
楓先輩と姐さんの2人は私の圧に負けたのか、隣の部屋でえみり先輩が用意した衣装に着替えてくれた。
「なんかすーすーする。お腹壊しそう」
「楓パイセン、よく似合ってますよ。やはりポニーテールと水着の方程式から導き出されるうなじは正義ですね」
「うんうん。それに足が綺麗だからビキニがよく似合ってるよ!」
私とえみり先輩に褒められた楓パイセンが照れた顔をする。
「えへっ、えへへっ、あくあ君も喜んでくれるかな?」
「当然でしょ」
「うんうん!」
俺は三度の飯より女子の女子の水着が好きなんだって言ってたから、きっとあくあもすごく喜んでくれるよ。
「ううっ、なんで私まで」
「姐さん……えっ……」
「う、うん……」
「私、雪白えみりはとんでもないものを生み出してしまいました。これが聖なる夜のチジョーってやつですか。ぐへへ!」
姐さんに三白眼で睨まれたえみり先輩が私の影に隠れる。
えみり先輩はなんで怒られるのがわかってて、そういう事をいうんだろう。
言わなきゃ死んじゃう病気なのかな?
「くっ、殺せ」
姐さん、そのセリフは逆効果だよ。それともわかってて言ってるかな?
布面積が私たちの着ている水着よりも一回り小さい水着からこぼれ落ちそうなお肉を隠すように、姐さんはマントを体に巻き付ける。
「それじゃあ、次は誰が引きますか? ぐへへ」
「じゃあ、次は私が引く!」
楓先輩が意気揚々とくじを引く。
「カノンきたー!」
「くっそおおおおお!」
私の名前を引いた楓先輩が喜ぶ。
それを見たえみり先輩が悔しがる。
「ていうか、私のも全員分あるから安心して」
「やったー!」
「実は私も」
「私も私も!」
あれ? 全員分買ってるなら、このくじを引く茶番いる?
ていうか、えみり先輩はプレゼントの管理してるんだから知ってるでしょ!!
「ナニコレ? 小さすぎない?」
楓先輩は袋から取り出した私のプレゼント見て固まる。
「私たちの子供のベビー服。実はお揃いで作ったんだよね」
「ああ! なるほど!!」
私はえみり先輩や姐さんにも手作りのベビー服を渡す。
どれも基本の形は色だけど、フリルやリボンのオプションや生地で少しずつ味付けを変えてある。
「かわいい! カノンさん、ありがとうございます!」
「お前、器用になったな。昔は……」
えみり先輩、昔の話はいいでしょ!
そもそも昔の話をするなら、私が中学生の時に手伝ってもらったコスプレ衣装の制作で、わざと布面積を小さくしてた事はいまだに根に持ってるんだから!!
「それじゃあ次は私のどぞー!」
楓先輩からのプレゼントをみんなで開封する。
「これは……」
「ナニコレ?」
「楓先輩?」
私たちは楓先輩に一斉に視線を向ける。
「これはイリアとインコからお勧めされた筋トレグッズの一つです」
あー、なんか胡散臭そうな通販でありそー……。
また楓先輩が騙されたんじゃないかと、私と姐さん、えみり先輩の3人が悲しそうな顔になる。
「なんとこの棒切れのようなものをブンブンと振るだけで、お腹のお肉がシェイプアップできます!!」
楓先輩の一言に全員が真顔になる。
お腹のお肉は女の子にとっての一生の敵。
そのお肉が駆逐できる道具ですって?
全員で説明書を読むと、4人で並んで棒切れをブンブンと振る。
「結構きついかも」
「意外と全身の筋肉使うのね」
効果があるかどうかはわからないけど、とりあえず使ってみようと思った。
多分、三日くらいでみんな飽きるんだろうけど……。
「それじゃあ、最後に私からのプレゼントですね」
姐さんのプレゼントをみんなで確認する。
「こっ、これは!?」
「嘘だろ。あの姐さんが!?」
私がプレゼントを見て固まる両隣で、楓先輩とえみり先輩が喜びのハイタッチを決める。
え? 姐さん、マジ……?
「コホン、皆さんも知っての通り、私達は母であると共に女でもあるのです」
「いいぞー!」
「そうだそうだ!」
うん、わかるよ。
私は無言で頷く。
「故に皆さんもこの下着をつけて、頑張りましょう!!」
私は姐さんからプレゼントされた下着を広げる。
ちょっと大人びた赤い下着。ヴィクトリアお姉様はこういうの買いそうだけど、私は持ってないタイプの下着だ。あくあも私がこういうの着たら喜んでくれるかな?
「白青かー。あんま持ってないなー」
「いいじゃん。えみり。お前の見た目なら、黙ってたら似合うべ」
黙ってるの前提なんだ。
でも、私も似合うと思う。
「楓先輩の黒もいいじゃん」
「な。私もこういうのあんまり買わないからいいかも」
みんなで貰った下着を当て合う。
そこに誰かが扉を開けて入ってきた。
「あ、ごめん。みんな、居たのか……って、その格好は!?」
私たちの姿を見たあくあがガッツポーズをきめる。
あ……えみり先輩からもらったプレゼントの水着を着たままにしてた。
「ありがとうございますありがとうございます!」
私たちの姿を見たあくあは、泣いて喜んでくれた。
その姿を見て顔を見合わせた私たちは、お互いにありがとうと言い合うと、4人であくあを囲んだ。
「それじゃあ、あくあ、わかってるよね」
「あくあさん、このまま逃げられると思わないでくださいね」
「あくあ様、覚悟を決めてください」
「あくあ君、しよう?」
こうして私達は聖なる夜の二次会を始めた。
※えみり視点と森川さん視点はノクターンなのでなしです。
Twitterアカウントです。作品に関すること呟いたり投票したりしてます。
https://x.com/yuuritohoney




