月街アヤナ、あくあサンタのプレゼント。
12月24日、私はクリスマス特番のために朝早くからスタジオに入る。
すると、先にスタジオに入っていたゆかり先輩がサンタの格好でだらけていた。
放送開始まであと1分切ってるのに、スタジオ内に設置されたこたつに入って自宅の様に寛いでいるゆかり先輩を見て私は苦笑する。
「ゆかり先輩、お待たせしました」
「アヤナちゃん、今日は生放送頑張ろうね。あっ、おみかん食べる?」
はは……こういうのスタジオのオブジェ代わりに置いてあるものって、普通は食べないものなんだけど。なんていう常識は、ゆかり先輩には通用しない。
私はこたつの中に入ると、ゆかり先輩からはんぶんこしてもらったみかんを食べる。
「ねぇ、ところで、明日、女の子同士でやるクリスマスプレゼント交換会の準備した?」
「はい。誰に当たるのかわからないから、誰に当たってもいいように選ぶのが大変でした」
白銀キングダムに住んでる女の子は多いから、みんなでプレゼント交換をしたら大変な事になる。
そこでカノンさんが思いついたのが女の子同士のクリスマスプレゼントだった。
「楓とえみりちゃんの2人には注意しておいた方がいいわよ。何持ってくるかわからないんだから」
「はは……」
確かに、あの2人は何を持ってくるかわからないんだよね……。
ゆかり先輩は2個目のおみかんを剥き始める。
「意外とインコやイリアはまともなものを持って来んのよ。でも、まろんは変な勘違いからやばいの持ってくる時あるから気をつけなきゃね」
「あ、わかります。まろん先輩って天然だから、たまにとんでもない事をする時がありますよね」
そういえば、番組はまだ始まらないのかな?
私はゆかり先輩と話しながら、視線を目の前に向ける。
すると、オンエア中のライトが点灯していました。
「って、もう始まってるじゃないですか! ゆかり先輩、寛いでる場合じゃないです。始まってますよ!!」
「んぐごっ!」
私はみかんで喉を詰まらせそうになったゆかり先輩の背中を叩く。
そこで違和感を感じた私は周囲へと視線を向ける。
すると、後ろに設置されたモニターにコメントが流れていた。
【あっ、やっと気がついたw】
【最初に2人がおみかんを食べる時から見てましたよ。ぐへへ!】
【ほーん、女の子同士でクリスマスプレゼントの交換会するんだ。いいなぁ〜】
【完全に自宅だったなw】
【いつもとは違って無防備なアヤナちゃんのミニスカがチラついてドキドキしました!!】
【普通にみかん食ってて草w】
【2人とも、私たちの事はお気になさらず普段通りでお願いします】
【そうそう、私たちはただの壁ですからwww】
え? 何これ?
番組視聴してる人がSNSで呟いたコメントをリアルタイムで流してる!?
嘘でしょ……。私は羞恥心で顔を赤くする。
「ちょっとぉ! そういうのは先に言いなさいよ!!」
「ちょ、ゆかり先輩。オンエア中です!!」
ゆかり先輩はオンエア中なのに、カメラを無視してプロデューサーに突っ込んでいく。
ううっ、まだ始まったばかりなのに、もう番組が無茶苦茶だぁ。
『小雛先輩ーっ! 聞こえますかー! 俺です。俺、俺』
「はあ!? 俺ってどこの俺よ!! 新手の詐欺じゃないでしょうね!?」
ゆかり先輩、声だけでもわかるけど、こんな事を言う人なんて1人しかいませんよ。
でも、あくあの存在自体がなんらかの詐欺に引っかかってそうなのは否定しません。
『俺です。あくあです!』
「ちょっと、あんた、どこに居るのよ!! 遅刻じゃない! もう、番組が始まってるんだから、早く来なさい!!」
私はゆかり先輩の言葉にこくこくと頷く。
あくあが遅刻するなんて珍しいけど、また、道を歩いてたらテロリストにでも遭遇したのかな?
普通ならないけど、あくあならありえるよね。
『小雛先輩、俺は今、住宅街のど真ん中にいます!!』
「あっ、見て。アヤナちゃん、後ろのモニター!」
さっきまでコメントが流れていたモニターを見ると、サンタの服を着たあくあが手を振っていた。
住宅街なのはわかるけど、ここ、どこ!?
「ちょっと、あんた。朝の7時なんだから、スタッフもあんまり騒いじゃダメよ! 迷惑がかかるんだから!」
『そうですよね。だから、今日は俺から、みんなへのお詫びを兼ねてクリスマスプレゼントを配ろうと思うんです』
あくあはプレゼントの袋や箱が詰まっていそうな白くて大きな袋を担ぎ上げると、そのまま近くの家のピンポンを鳴らした。
ちょ、ちょ、ちょ、それって、大丈夫なの!?
『はい』
『朝早くからすみません! いつもお世話になっています。BERYLの白銀あくあです!』
インターホンの向こう側から何かが倒れるガタガタという音が聞こえてきた。
おーい! 大丈夫ですかーーーー?
『あくあくあくあ様!?』
『そうです。貴女の白銀あくあです。今日は日頃からみんなに心配をかけさせているお詫びとして、クリスマスプレゼントを持ってきました!!』
しばらくすると、家の扉が半分開いて女の人の声だけが聞こえてきた。
『ごめんなさい。その、化粧していなくて……』
『あっ、大丈夫ですよ。カメラには映しませんから』
そう言って、あくあは扉に近づいていく。
ちょっと、ダメだってば、あくあ!
あくあにすっぴんを見られたら、その人だって戸惑っちゃうよ!!
『奥さん……そのままでも十分お綺麗ですよ。だからテレビに映っちゃダメです。俺だけにしときましょう』
『あ、ありがとうございます』
私の隣に居るゆかり先輩が「あんた、それお詫びじゃなくて、ただ口説いてるだけじゃない!!」とツッコミを入れる。
ふふっ、私はゆかり先輩の的確すぎるツッコミに思わず吹き出してしまう。
『あっ、そんな奥さんにはこれ、俺が選んだ化粧水をプレゼントします』
『えっ? えっ? 本当にいいんですか!?』
えーっ、いいなぁ。番組の企画会議からちゃんと参加するあくあの事だから、きっとこれもスタッフが用意したんじゃなくて、本当に自分で選んで買ってきた化粧水なんだと思う。
『実はこれ、男女兼用だから俺も使ってるんですよ、それにほら、香りもすごくいい匂いがするでしょ?』
『え? あっ……すごくいい匂いがしゅる……』
ちょっと!? カメラが映ってないところで何やってるの!?
ううっ、せめて化粧水がどこのブランドかだけでも知りたい。って、思ってたら、見慣れたべりべりのスタッフはおみかんの隣に化粧水をポンと置いて戻って行った。
「何これ? え? 実際にあくあがプレゼントしたやつ?」
「わっ。コロールの新作だぁ」
相変わらずあくあはこういう要所のプレゼントだけは外さないよね。
私とゆかり先輩の2人は、早速手のひらに化粧水を落とす。
「ん、なんかすごく良い匂いがする!!」
「え……この匂い。あいつ高校生なのに、こんなエロい匂いの化粧水使ってるの?」
ちょ! ゆかり先輩! 朝からそういう事を言わないんでくださいよ!
もーっ、そんなの言ったら、良い匂いって言った私が欲求不満な女の子みたいじゃないですか!!
【えーと、アヤナちゃんは朝から欲求不満と】
【あくあサンタ様〜、ここにもホワイトクリスマスしたい女の子がいまぁす】
【あくたんと付き合ってからアヤナちゃんの湿度が若干高くなってる気がする】
【↑それが良い!!】
【まろんさんも湿度高いし、純粋なのはふらんちゃんだけだよ】
【なんか私も朝から興奮してきた】
ちょっとぉ!? ゆかり先輩のせいで、みんなが変な勘違いをしちゃったじゃないですか。
私は別のモニターに映ったコメント欄を隠すように両手をぶんぶんと振る。
「あっ、よかったらこれ家族の人にもどうぞ」
「ありがとうございます!」
プレゼントを渡し終わったあくあがスタッフのところに戻ってくる。
『というわけで、しばらく周辺の人たちにプレゼントを配って回ろうと思います。それじゃあ、また!』
「ちょ! またって!! スタジオに居る私達はどうしたらいいのよ!!」
そこであくあとの音声が途切れる。
えっ? スタジオに残されてる私たちはどうしたらいいの?
もしかして、私たちも今からプレゼントの袋を持って配りに行けとか?
私とゆかり先輩はお互いに顔を見合わせると、スタッフの方へと視線を向ける。
「えー、お二人にはあくあ君がプレゼントを配っている間に、こちらの対応をお願い致します」
スタッフの何人かが一斉にセットの上に上がってくる。
1人のスタッフは机の上に電話機をセットすると、私たちの背後に回ったスタッフたちは何かが書かれた看板を後ろに取り付け始めた。
私は目を細めると看板に書かれた文字をじっと見つめる。
【ベリル&ベリル、緊急クレーム対応室】
えっ? なになに!? これって、どういう事ですか!?
私とゆかり先輩がもう一度プロデューサーへと視線を向ける。
「実はベリル&ベリルなんですが、国営放送の森川楓さんクレーム対応室と並んで今年度、最も苦情がきた番組のトップ2に選ばれたんですね。それで、ですね。男の子を矢面に立たせるは、画面的にも良くないので、普段から出演してもらっているお2人に今日はクレーム対応という名前の相談室をしてもらいたいと思います」
「ちょっとぉ!? そんなのあんたたちがやりなさいよ!! 出演者にやらせるんじゃないわよ!!」
スタッフの1人がカンペの代わりに、何かのグラフ表を私たちに見せる。
「えー、実はベリル&ベリルで1番、クレームが多かった人に、なんと! この私、ベリベリのプロデューサーを抑えて、我らが小雛ゆかりさんが圧倒的なクレーム件数の多さで選ばれました。拍手!!」
「あ、ありがとう。って、ちがーーーーーう!! ぜっんぜん、めでたくないじゃないのよ!!」
私はプロデューサーのところに向かおうとするゆかり先輩を全力で止める。
あの、もしかして、私ってこのために呼ばれてます?
「あっ、ちなみに。アヤナちゃんへのクレームは物凄く少なかったです」
そうなんだ……。
私へのクレームってなんだろうと、少しモヤモヤした気持ちになる。
「えー、アヤナちゃんへのクレームの代表例を紹介すると、都内在住のAさんから、もっと白銀あくあさんと2人だけの企画を増やすべきだと思います。ラーメン捗るさんから、もっとアヤナちゃんがぐへへなハプニングにあう企画が見たいです。というような、前向きなクレームをいただいています。というか、こんなのしかありませんでした!!」
「ちょっと! そのAさんって本人でしょ!! あいつ、企画会議で通らなかったからって、何、裏で姑息なことしてんのよ!! あと、2人目のそいつもほぼほぼ身内じゃないの。そういうのはクレームじゃなくてただのあくあハラスメントと捗るハラスメントでしょ!! 番組で事前に弾いておきなさいよね!!」
私は両手で顔を覆い隠すと、首を左右に振る。
もう、もう! 2人とも、後でカノンさんに言っておくんだから!!
【朗報、捗る無双】
【捗るは何してんねんw】
【都内在住のAさんはたくさんいるはずなのに、誰か透けて見えるのは私だけかな?】
【↑私も。もしかしたらエスパーの才能に目覚めたのかもしれない】
【朝からアヤナちゃんの恥ずかしがる顔が見れて大満足です。ぐへへ!】
【↑おい、こいつだこいつ!!】
【アヤナちゃーん! 犯人の1人がここに居るよー】
コメント欄に視線を向けようとしたら、テーブルに置いてあった電話の音が鳴り始めた。
すると、ゆかり先輩がすぐに電話を手に取る。
「もしもし?」
『はぁはぁ、アヤナちゃんの今日は何色でつか?』
小雛先輩は秒で電話を切る。
【初手から放送事故きたー!】
【多分、捗るきたー!】
【↑ばっか、お前、私なら小雛パイセンのも聞く】
【↑やっぱり本物は次元が違うな!!】
【パチモンの捗るが出没した番組はここですか?】
【やっぱ生放送は最高だな!!】
【クレーム対応で新たなクレーム案件を作っていく番組があると聞いて】
【真正面から放送倫理委員会に喧嘩を売ってる番組は面構えがちげーわ】
電話を切って数秒も経たないうちに、すぐに電話が鳴る。
ゆかり先輩は警戒するような顔を見せながらも、再び電話をとった。
「はい、もしもし」
『あ、もしもし』
今度は大丈夫そうかな?
私とゆかり先輩の2人は、座ってこたつの中に足を入れる。
「で、なんの相談な訳?」
『あ、え、えっとですね……。こんな朝早くからあくあ君の番組をしてるせいで、会社に行きたくなっちゃいました。せめて、夜にやってくださいよ!!』
確かに。朝の7時から夜の18時までなんて時間帯が微妙だよね。
普通に録画にして夜にやればよかったのに……。
「ね。普通に録画で夜やればいいのに。朝5時から入ってる私の身にもなって欲しいわ。ねぇ、私も途中、電話の線を引っこ抜いてここで寝ていい?」
「はは……ゆかり先輩、流石にそれはそれでまずい気がします」
スタッフの1人が手に持った手でカンペを叩く。
えーと、なになに? 相談の内容が認められた場合は、私がくじを引いてクリスマスプレゼントを選べってこと? なるほどね。
「なんか、クリスマスプレゼントくれるんだって。何が欲しい?」
『えっ? 私もさっきの化粧水が欲しい……』
ちょっとぉ!? くじを引く私の身にもなってくださいよ!!
そもそも、これと同じ化粧水なんて入ってるんだろうか?
私がそんな事を考えていると、スタッフの1人がボールペンでカンペを叩いた。
あっ、入ってるんだ。じゃあ、頑張らなきゃ。
私は腕まくりをすると、箱の中に手を突っ込む。
「うーん、これ!!」
くじを引いた私は紙切れに書かれた文字を見る。
えっと、17番? 私が数字を見て戸惑っていると、スタッフの1人がシールが貼られたフリップを持ってきた。
あっ、なるほど。これに貼られた数字のシールを剥がせばいいんだね。
「それじゃあ、剥がしますよ〜」
「化粧水! 化粧水!」
私はゆっくりとシールを剥がしていく。
[コロールの]
きたきたきた!!
私とゆかり先輩の2人は顔を見合わせると、一気にシールを剥がす。
[コロールの美容液]
えっ? 化粧水じゃなくて美容液!?
うそ〜、後、ちょっとだったのに!!
「ごめん。化粧水じゃなくて美容液だったわ」
『いえ、めちゃくちゃ嬉しいです。もう化粧水と美容液なら誤差みたいなもんですよ!!』
いや、化粧水と美容液は違うからね。
あ、それもサンプルあるんだ。
私たちのテーブルの上に同じ美容液が置かれる。
「これも白銀あくあさんが使ってる奴です」
「「へぇ〜」」
私とゆかり先輩は美容液の蓋を開けると、2人ですんすんと匂いを嗅ぐ。
「ん。バニラ系のアンバーウッドだ。私、これ好きかも……」
「ちょ、なんであいつ高校生の癖に、こんなエロい匂いの化粧品ばっか持ってんの!?」
だから、私が好きって言ったのに、そういう事を言わないでくださいよ!!
確かに物凄くそんな匂いばっかりするけど!!
【欲求不満なアヤナちゃんが世間にバレてお姉さんは何よりです】
【あくあ様ー、早くアヤナちゃんを抱きしめてあげて】
【あのまろんさんの妹分がムラついてないわけなんてないんですよ!!】
【実はeau de Cologneの清楚担当はふらんちゃん】
【↑eau de Cologneに清楚なんていないぞ。居るのはドスケベ3姉妹だけだ】
【これさ、テレビで紹介された商品、大丈夫? 今日からお店で列できない?】
だから、私はそうじゃないもん!!
そりゃ、私だって年頃だし全然って事はないけども……その、普通の女の子と一緒だもん!!
私は後ろのコメント欄からプイッと顔を背ける。
『小雛先輩ー! アヤナー! 俺だー!!』
あ、あくあの声だ。どうしたんだろう?
私は再度、後ろのモニターへと視線を向ける。
って、そこ、どこの学校!? あくあってば、何やってるの!?
『おはよう。みんな!』
『あ、あくあ様だ!』
『きゃーっ!』
『やばっ! 本物初めて見た!!』
『えっ? なんであくあ様がこんなところにいるの!?』
『テレビで見るより、はるかにかっこいい……』
あくあはすぐに女子高生達に囲まれる。
ふーん、デレデレしてすごく嬉しそうだね。
別にいいんだよ。うん。別にね。
『ほら、毎日勉強とか部活とか頑張ってるみんなにこれ。俺からのクリスマスプレゼント』
『『『『『きゃーっ!!』』』』』
あくあは1人ずつにプレゼントを手渡していく。
すると、そのうちの1人のところで、プレゼントを渡すのを止めた。
『唇、切れてるけど、痛くない?』
『あっ、はい。大丈夫です。痛いけど、今日は朝練あるからって急いでたら、リップ忘れちゃって』
あー、この時期は唇が乾燥しちゃうよね。
あくあはサンタ服のポケットから、リップクリームを取り出す。
『俺の使う?』
『えっ……? えっ!? い……いいんですか?』
ちょ! え!? あくあ、それって間接キスになっちゃうけど、大丈夫!?
女の子の顔がみるみるうちに赤くなる。
『いいよ。塗ってあげる。ほら、顔あげて』
『『『『『きゃーっ!!』』』』』
あくあは女の子の顎に手をおくと、その子の唇にリップクリームを塗ってあげた。
ううっ、あくあのリップの塗り方が上手だから、見てるこっちがすごく恥ずかしくなってくる。
「だから、なんでこいつはいちいちエロいのよ!!」
「ゆかり先輩、しーっ!」
今いいところなんだから、ジッとしててください!!
『どう?』
『あ、その……甘酸っぱいレモンの味がしました』
女の子は唇に手を当てて恥ずかしそうに顔を真っ赤にした。
それを見た周りの女の子達から、黄色い悲鳴が聞こえてくる。
い、いいなぁ。私も今度、わざと唇乾燥させて、あくあにやってもらおうかな。
『それじゃあ、君にはこれ。うちのアヤナがCMで使ってるキスしたくなるリップをプレゼントしちゃう。ちなみに効果は俺とアヤナで確かめてるから、安心して』
「ちょっとぉ!!」
私は思わずこたつから立ち上がってツッコミを入れる。
そっ、そこで私の名前を出す必要はないよね!?
もおおおおおおおおおおおおおおおお!!
【へぇ、その話……詳しく聞いてもいいかな?】
【アヤナちゃんに質問です! どうやって確かめたんですか!? はぁはぁ!】
【↑さっきのやつかと思ったら、普通に捗るだったわ】
【こーれ、2人でたくさんちゅっちゅっしてます!!】
【アヤナちゃん、そういうのもっとみんなが見える場所でやっていいんだよ】
【リップの会社に、実際の使用感がみたいから、アヤナちゃんに手本動画を撮るようにって意見送っとこ】
【↑それだ!!】
私はこたつの中に潜り込んでふて寝する。
ふーんだ。いいもん。小雛先輩じゃなくて私が番組をボイコットして寝るもーん!!
「ちょっと、あくあ!! あんたのせいで、アヤナちゃんが機嫌を損ねちゃったじゃないのよ! どうにかしなさい!!」
『えっ!? アヤナ、どうしたんだ!? もしかして、アヤナもリップクリーム塗って欲しかったのか!? それなら今度、俺がたくさん塗り塗りしてあげるから、機嫌をなおしてくれ!!』
……そういう事なら。
私はむくりと体を起こすと、ほっぺたを少しだけ膨らませて画面からそっぽを向く。
すると、こたつの上に置いてある電話が再び鳴った。
「はい、もしもし、つまんない相談だったらぶっ飛ばすわよ」
『こっわ! って、そうじゃなくて、学校の看板が映ってるから早く離れた方がいいですよ! このままだと、人だかりができちゃいます!』
え? あ……本当だ。校門の前で配ってたから、あくあが居る場所が完全にバレちゃった。
このままだといっぱい人が来ちゃうかも。
「あくあ、あんた。今すぐにそこから離れなさい! 身動きが取れなくなるわよ!!」
『わかりました!!』
あくあは学校の先生にプレゼントの入った袋ごと手渡すと、女子高生達に手を振ってそのままロケバスに乗り込む。
ふぅ、優しい人が電話をかけてきてくれて本当によかった。
「あんた、ありがとね。プレゼント、何が当たったら嬉しい?」
『え? じゃあ、あくあ君の使用済みリッ……じゃなくて、アヤナちゃんが使ってるリップがいいです!』
あ、うん。わかるよ。私も、あくあが使ったのが欲しいもん。
私は袖を捲ると、くじの入った箱の中に手を突っ込む。
「当たれ!」
そう願って引いたくじには、34番と書かれていた。
私は34番と書かれたシールの端っこを摘むと、ゆっくりと剥がしていく。
[リップ]
これは絶対にきたでしょ!!
私とゆかり先輩はハイタッチして喜ぶと、そのままシールを一気に剥がした。
[リップティント]
えっ? ティント!?
私はがっくりと肩を落とす。
「ごめんなさい。これ、私が使ってるのじゃないです」
私は口元を手で押さえると、カメラに向かってぺこりと頭を下げる。
すると、隣にいるゆかり先輩がプロデューサーに向かって話しかけた。
「ねぇ、これもあくあが選んだやつよね。なんかエピソードとか、誰かが使ってるとかないの?」
「はい。これは、あくあさんがカノンさんにプレゼントしたやつですね。あ、もちろんサンプルもありますよ。あくあさんがお二人に合う色を選んでるので、それを使ってください」
えっ? じゃあ、これってカノンさんが使ってるやつ!?
しかも私とゆかり先輩、両方の色に合わせてるのを用意してくれているんだ。やったー!!
【うおおおおおおおおおおお!】
【同じくらい当たりきた!!】
【アヤナちゃんのもいいけど、カノン様が使ってるやつならいいじゃん!!】
【ぐへへ、このリップ、かなりイイぞ!】
【↑捗る、期待……していいんだよな?】
私とゆかり先輩は、こたつの上に置かれたリップティントを手に取る。
あっ、鏡もありがとうございます。
私とゆかり先輩はリップを落とすと、2人で唇にリップティントを塗った。
「あっ、これいいかも。色合いが素敵。ゆかり先輩の唇、すごく綺麗です」
「そういうアヤナちゃんの唇もいいわよ。結構、エロいけど……」
もおおおおおおおおお!
ゆかり先輩ってば、そろそろそのワードから離れてくださいよ!!
私より、ゆかり先輩の方が欲求不満じゃないですか!!
【こーれ、この後に爆売れします】
【小雛ゆかりの色合い、落ち着いてていいなぁ。あくあ君、センスいいわ】
【アヤナちゃんの唇、イイわ】
【ぐへへ! ちょっと嗜みのやつ、塗ってこ】
【↑ちょっとぉ!?】
【捗る、嗜みが何色のをあくあ君から贈られたか、後で写真あげといてw】
私は唇に指先を当てると、鏡をじっと見つめる。
なんか、ちょっとだけドキドキしてきちゃった。
って、生放送中なのに、私は何を考えてるのよ!!
聖夜だからって、そんな事を考えちゃダメでしょ!
私は首を左右に振ると、番組に集中した。
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