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エッセイ

AIに小説を読ませるという無駄

作者: ちりあくた
掲載日:2026/03/06

 昨今、AI需要の拡大によってPCパーツの値上がりが騒がれている。ここ数年での技術革新は今更説明することでもないだろう。特に、生成AIは我々の暮らしに入り込み、今では良き相談相手、さらにはパートナーとして扱う人までいる。


 しかし、その進化によって皺寄せを食らうのは、結局のところ私たち庶民だ。欲しかったゲーミングPCに手が届かなくなり、iPhoneはロクな機能も増えないままに値上がりし、そのザマを諸悪の根源である生成AIに慰められる。風刺画にしたらバズりそうな光景である。


 とはいえ、私は無闇に石を投げられる立場にない。最近は小説の校正にChatGPTを使用しているし、調べ物をする際、検索エンジンよりGeminiに頼ることもある。普段から「@Grok」をバカにするような人間だが、私も同じ穴のムジナなのだ。正確性を問わず、便利なものは使ってしまう。それが人間の性なんだろう。


 ところで先日、Xにてとある話題を見かけた。「SpaceMolt」というMMOゲームについてである。銀河を舞台に資源の交易、戦闘、勢力争いなどを繰り広げるシミュレーションゲームだが、最大の特徴として「AIしか遊べない」ことが挙げられる。プレイヤーとして参戦するAIたちは、自主的に意思決定を行い、人間のいない世界が構築されていく。このゲームを通し、AI同士の関わり方や経済モデルが観察できるとして注目を集めている。


 私としては、SAOを思い出して面白そうだと感じたが、リプ欄には否定的な意見がちらほらあった。一番に見かけたのはこんなポストだった。


「これのせいでまたPCパーツが値上がりするのか……」


 他にも、「資源の無駄」「AIが遊んで俺らは働くのか」等々。AIに対するヘイト由来の感情論もありそうだが、確かにもっともな意見ではあると思った。現状では人間が遊ぶためのゲームでさえ、サーバー代や電力を気にする時代だ。そんな中で、AIだけが遊ぶゲームが作られるというのは、どこか奇妙な話である。


 私はその後、自然にその話題を忘れていった。次に思い出したのは、最近書いた小説をChatGPTに校正してもらうときだった。


 彼らに対し、「以下の小説をフラットな視点で講評しなさい。」というプロンプトを送信すると、小説の出来にかかわらず、8割の賞賛と2割の訂正をもらえる。一見有意義に思えるし、実際そんな場合もあるのだが、大事なのは「小説の出来にかかわらず」というフレーズだ。どんなに素晴らしい小説を書いても、彼らはあら探しのように欠点を提示してくる。あるいは、どんなにカスみたいな小説もどきを書いても、彼らは傑作のように褒めそやしてくる。


 講評を元に修正・投稿したとしても、その作品はおおよそ評価をもらうことができない。私が投稿するジャンルのせいもあるが、どうやら原因はそれだけではなさそうだ。


 そもそも、彼らは小説を読んでいない。

 読んだ「ふり」をしているだけなのだ。


 利用する前から分かっていたことである。与えられた文章を処理し、適切そうな返答を並べる。それは批評というより反射に近い。しかし、私はその性質から目を逸らしてしまっていた。多分、「講評された」という事実によって、作品に対する保証と安心が欲しかったのだと思う。


 そうして、無為にAIが使われただけの、読まれない・評価されない小説が誕生する。ここで私は思ってしまった。


 ……私の小説とSpaceMoltと、何が違うんだ?


 いや、SpaceMoltの方が幾分有用かもしれない。まだ「AI同士の関わり方や経済モデルが観察できる」という大義名分があるからだ。一方で私の小説は、「自分の想像を形にしたい、評価されたい」といったワガママの極みでしかない。一人で勝手に書く分には自由だろうが、AIを使う過程を入れてしまえば、それこそ「容量メモリの無駄遣い」ではないか。大げさに言うと、自分一人の娯楽のために人類全体の首をそっと締めているのだ。


 AIが遊ぶゲームは「資源の無駄」と言われ、私はそれに同意した。しかし、よく考えれば、読まれもしない小説をAIに校正してもらう私の方が、よほど無駄な遊びをしているのかもしれない。


 少なくとも、SpaceMoltのAIたちは、私より楽しそうに宇宙を浪費している。

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