エピソード11:ヂーハオ②グアンロンチョン包囲戦!夜の静寂を裂く邪悪!
真夜中近く。グアンロンチョンの街中と農地の境界にある人気のない道で、酔っ払った老人が地面に横たわっていた。
「流れ...今日がその日だと示している...」
一方、グアンロンチョンの門前では、紫色の格闘着に斗笠を被った筋肉質で引き締まった体格の男が近づいてくる。見張り小屋で警備中のヨンチーが剣を構え、警告する。
「止まれ!お前は何者だ!?」
男は両手を上げながら答える。
「ヨンチー、たった1週間留守にしただけで侵入者扱いか?傷つくぞ」
男が斗笠を脱ぐと、その顔を見たヨンチーは認識した。
「あっ、ヂーハオか!すまん、本当にわからなかった...お前...随分変わったな。たくましくなった。斗笠と暗闇で顔が見えなかったし。みんな心配してたんだ。無事で良かった」
「ああ、元気だよ。ヌーリーのダルバートが早く食べたくてな」
「運がいい。今日作ってたぞ」
ヨンチーが門を開けると、ヂーハオが中へ入る。すれ違いざま、ヨンチーはヂーハオの胸に黒い痣のようなものがあるのに気づく。一見タトゥーのようだが、よく見ると皮膚の内側から滲み出ているように見える。
「おい、どうしたんだ?その傷は...」
「ああ、これか?変化と価値の印さ」
突然、ヂーハオがヨンチーの首を締め上げる。ヨンチーは逃げようとするが、なぜか力が抜けていく...。
「なあ、ヨンチー。人にはな、持ってるくせにそれをまったく価値のないもんとして扱う奴もいれば、ほんとは手にすべきもんを必死に奪い取らなきゃいけねえ奴もいるんだ。『不公平』ってのはな、『価値』ってもんの大切さをわかってねえ奴らが作るもんさ。」
ヨンチーは気を失い、崩れ落ちる。ヂーハオは外に向かって手招きする──まるで誰かが見ているかのように。そして再び斗笠を被り、グアンロンチョンへと足を踏み入れる。
一方、共同住宅ではロンウェイ、フェイフォン、シュエンウーが話を続けていた。ヂーリーが近づいてくる。
「ところで、二人は私の家で泊まる?それともここがいい?」
「ここに泊まれるの?」
「んーと、ここの共同住宅にも小っちゃい部屋があるだよ。ポタラ寺院の僧侶が来たときなんかに使うんだけんど......その......」
言葉に詰まり、赤面するシュエンウー。
「女の人には...ヂーリーさんとこの家の方が...もっと快適だと思うだわ。ここらの部屋はあんまり設備が揃っとらんし...それに狭いんだわ...」
「もうわかったわ。まあ、あたしは快適さにはこだわらないタイプよ。でなきゃ世界をバイク一本で旅なんてしないわ。ロンウェイはどうする?」
「僕はシュエンウーと一緒に泊まる!」
フェイフォンとヂーリーが退出した後...
「さーて、ロンウェイ。そろそろ寝るべ。旅の疲れは、やっぱ寝るのが一番いいんだわ」
「ああ、おじいさんもそう言ってた。でもシュエンウー、天上戦隊シェンレンジャーのことは?本当に参加しないの?五聖獣の宝玉に選ばれた者だけが、今の世界を救えるんだよ」
シュエンウーが返答するより早く、斗笠の男が共同住宅に現れ、二人の前に立ちはだかる。
「あっ、いた!このデブ野郎!」
男は斗笠を脱ぎ、額に紫色の円が描かれた剃髪頭を露わにする。不気味な笑みを浮かべたその顔は――ヂーハオだった。
「ヂーハオ!?お、お前...戻ってきたのか...?」
「誰だこいつ?」
「妖怪と仲良くするとは...ポタラ寺院の戦闘僧として恥ずかしい限りだ」
「ロンウェイ、下がっててくれんか。こやつはな、ポタラ寺院で一緒に修行した仲間なんだわ...ヂーハオ、おめぇ、どこほっつき歩いてたんだべ...みんな心配してただぞい...」
「心配?ハ!弱者の心配などいらん。俺が求めるのは...本来俺が持つべきものだけだ!」
瞬間、ヂーハオはシュエンウーに飛び掛り、腹部への一撃で「天の亀の宝珠」を奪い取ると、彼を壁めがけて投げ飛ばした。シュエンウーは共同住宅の壁を激しく揺らすほどの衝撃で叩きつけられる。
「シュエンウー!大丈夫か!?おい!なんでそんなひどいことするんだ!?」
「天の亀の宝珠...これを得れば大地の気を支配できる。五つの神宝中最強と言われる力を...ヂーフェイ師はお前のような泣き虫に与えたのか」
筋肉を膨張させると、衣服が裂け散る。その体には黒い血管のようなものが皮膚の下を這い、まるで血液そのものが黒く変質したかのようだ。
「まずはお前を倒し、辱める。次はあの老いぼれヂーフェイの番だ...俺を大地の守護者に選ばなかった後悔を味わわせてやる」
「ヂーハオ...それは違うべ...大師さまが...おいらを選んだっちゅうわけじゃ...ねぇんだわ...」
「黙れ!!」
ズボンのポケットから小さな壺を取り出すと、地面に置いた――
「知ってるか、シュエンウー。砂漠を彷徨ってて気づいたんだ。ポタラ寺院じゃ絶対に教わらねぇ真実に...この世は不公平だってな」
「いい奴でも病気で死んだり殺されたりすっから。悪党がのうのうと長生きすっこともある。業も法も、和尚どもが俺らを騙すための作り話さ。真実から目を背けさせるために...だがおいらは見た...この目で真実を見たんだ」
「ヂーハオ...まさか...その体の黒いのは...」
「お前がこの宝珠にも、ポタラ寺の僧侶にも相応しくねぇことを証明してやる」
壺を開けると、黒い煙が噴き出し、部屋中に広がる。
「こ、これは...!?」
「ああ、ブートゥの群れだ」
シュエンウーとロンウェイが驚愕する。
「ブートゥ!?さっき人に憑いたあの...!」
「あれは実験だ。邪気でブートゥを操れるか試してた。今日の見張りが誰か知りたくてな。運が良かった...まさかおいらが一番会いたかった相手だとは」
両手から紫の光を放ちながら、ブートゥを街中に解き放つ。
「街の半分を憑依させるのに十分な数だ。お前がおいらを倒さねぇ限り...村人たちは殺し合う。さあ証明してみろ...お前が本当に『天選』の大地の亀だってことをな」
天の亀の宝珠を首にかけると、悠然と共同住宅から出ていく。
「ま...待ってくれ!...ヂーハオ!」
ロンウェイがヂーハオを追いかけて外へ飛び出すと、釘のついた棍棒で頭を殴打され、地面に倒れる。
「いててて~!」
頭を押さえながら起き上がると、周囲には30人ほどのバイク乗りの盗賊団がヂーハオを取り囲んでいた。武器は銃、鎖、斧、釘棍...
シンドゥーで出会ったウーシュイのギャングとは違う。刺青にパンクヘアーだけでなく、肌は青灰色に変色し、赤い目を光らせ、不気味なオーラを放っている。
シュエンウーが腹を押さえながら戸口に現れ、その光景に愕然とする。
「な...何てことだ...ヂーハオ、お前何を...!」
「『ズイエー』だ。グアンロンチョン南西で有名な盗賊団さ。砂漠で倒して邪気で染め上げた。心に闇を持つ者は簡単に堕落する...覚えてるか?彼らは『ピシャーチャ』になった」
「『ピチャピチャ』?それって... あれ?新しい調味料?それとも水たまりを歩く時の音...?」
「...『ピシャーチャ』だよ。普通の妖怪と違って人間から変化した悪魔なんだ。邪気や負の感情が限界を超えると、肉体ごと魔物化する...」
「その通り。だが元々のズイエーは人間の時点で悪魔同然だったろう?俺はただ...彼らの本質を解放しただけさ」
「なぜそこまでする!?おいらたちの街の人々を危険に晒してまで...!」
「俺が正しいってことを証明してやる。この世は不公平なんだよ。それに...グアンロンチョンは盗賊や妖怪には慣れてるかもしれないが、『妖怪化した盗賊』にはどうかな?」
一方、フェイフォンとヂーリーはズイエーのバイクの騒音に気づく。
「あれ?この街にバイクいたっけ?」
「いや...これはおかしい」
突然、黒い煙(ブートゥ)が家々に流れ込むのを目撃する。
「まさか...ブートゥだ!しかも大量に!街の警報を鳴らさねば!」
ヂーリーが街の中心へ走り出すと、ピシャーチャ化した盗賊団がバイクで現れる。一人が銃を構えるが、フェイフォンが金属扇で素早く弾を防ぐ。盗賊たちは二人を包囲する。
「ヂーリーさん、これは普通じゃないわ。街の警備は?どうやって門を突破したの?それに...普通の盗賊ってより『妖怪のコスプレ』みたいに見えるんだけど」
「こ...これは大変だ。チーフェイ大師の予言にはこんなことは一言もなかった。ヨンチーは見張りのはずだし、こんな大勢の盗賊が近づいてたら、警報を鳴らしてたはずだ...」
「だったら早く確かめに行って、ジーリーさん。グアンロンチョンのリーダーとしての仕事をして。こっちは私が引き受けるから」
「一人で!?」
「ええ、こんな状況には慣れてるの。今すぐ行って!一人も通しませんわ」