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宇宙に果てがあったら?というSFです。結末まであるのでぜひ読んでください。
世界の外縁は膜に包まれていた。
探査機『チュウハチ』が地球軌道を離れて275年。78回のBHD。プロジェクトの想定より2pパーセントほど手前に宇宙の果ては存在した。
チュウハチが膜の存在に気がついたのは、それ自体を観測した結果ではない。光子も重力波もニニュートリノもBHWも他の極真空宇宙と変わらなかった。事実、まだ計算地点に到達していなかった探査機は、最後のBHDから抜けた亜光速で辺宇宙を空間を航行していた。
膜に到達したとわかったのは、航行しているはずの自分が空間的に全く移動していない、とチュウハチの偏差六分儀が1n秒間の計算結果を弾き出した瞬間で、プログラムを統括するAI『チュウハチ』はそれが六分儀のミスだろうと判断を下しさらに30秒間変移を見守った。
しかしそれから200分の時を経ても、六分儀の結果は変わらず、その他空間認識に役立ちそうな重力密度地図、量子波レーダー、UBHなどの計算を能力の5%ほどを割り当てて繰り返したが、いずれも船体が静止している、と示していた。
BHD、ブラックホールドライブの副次的効果で、自分の時間軸が縦か横にズレを残している可能性が3ミリ秒ほど離れた独立プログラムから導き出されたが、『チュウハチ』はそれを、自己の計算能力が実時間の想定範囲であることから退けた。
宇宙空間で等速直線運動が、ほとんどゼロ時間に突然消失するなどあり得ないことだったが、BHDの反動が未知の影響で失われたことも考慮し、光子スラスターによる加速を開始したが、計器上は完全に可動し推進力が発生しているはずなのに、チュウハチの船体が空間に静止し続けているのは変わらなかった。
緊急用に備えられた機構である、探査で収集した辺宇宙デブリの一部射出も行うことにした。これは船内のガスを利用し質量のある収集ポッドを後方に打ち出すのだから、反動で前進しないことはあり得ない。
だが、無音の宇宙空間に放たれたポッドの、チュウハチに対して後方への空間移動は確認できたのに対し、チュウハチ本体の静止状態は変わらない。
ここで初めて、『チュウハチ』は自分が目的である「宇宙の果て」に到着したことを認識した。
膜、と最初に呼んだのは、その後の調査で、地球からの距離に対して並行軸、マイナス軸には移動できるが、プラス軸に移動できない平面の場が、最初に到着した空間から相当な範囲にわたって広がっていることが確認できたためだ。
『チュウハチ』が『考える』のを始めたのはその時からだった。
AIにとって「目的に到着すること」が、当然最初からの「目的」であった。目的到達のために己の全ての能力を生かすことを学び、ミッション達成のためのシミュレーションをそれこそ寝る間もなく、ほとんど無限に近い回数繰り返し、人間には不可能な判断力、対応力を持ってこのプロジェクトを遂行した。
目的に到達した後、調査を終えた時初めて、未知なる状況に対してこれからどうすべきであるか、という自発的な『考え』が『チュウハチ』の中に生まれた。
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