外から見た、終わらない終わり
この作品は生成AIを使用して作成しています。
それは、地図から始まった。
「……おかしいな」
測量士が首を傾げたのは、国境線の再測量の最中だった。
消えたはずの王国。
すでに滅び、立ち入り禁止とされた土地。
そこに引いた境界線が――
「昨日と、合わない」
わずかに。
ほんのわずかにだが、内側へと“ずれている”。
誤差ではない。
何度測っても、同じ結果になる。
禁域が、広がっている。
やがて各国は、それを正式に認めた。
旧王国領は「災厄指定区域」とされ、完全封鎖された。
だが、それで終わりではなかった。
終わらなかった。
監視塔が建てられた。
境界線のすぐ外側。
常に観測を行うための施設。
最初に異変を報告したのは、若い観測員だった。
「中の……人影が、増えています」
報告書には、そう書かれていた。
もちろん、誰も信じなかった。
内部に生存者などいるはずがない。
あれからすでに、数年が経っている。
だが――
次の報告も、同じだった。
「数が、合いません」
崩壊時の人口と、観測される“影”の数。
一致しない。
明らかに、多い。
観測は禁止された。
“見るな”という命令が下る。
だが遅かった。
すでに見てしまった者たちは、戻れなかった。
ある観測員は、こう証言した。
「動いていないんです」
「でも……確かに、増えているんです」
「昨日いなかった“何か”が、今日はそこにいる」
別の者は、境界線ぎりぎりまで近づき、こう言った。
「音は聞こえません」
「でも……“叫び”だけが、頭に入ってくる」
その後、彼は自ら耳を潰した。
それでも“声”は止まらなかった。
禁域は、ゆっくりと拡大していく。
急激ではない。
逃げられる速度だ。
だからこそ、誰も本気で恐れなかった。
最初は。
辺境の村が、一つ消えた。
痕跡はない。
争った形跡も、焼け跡もない。
ただ、境界線がそこを“通過した”だけだった。
調査隊が派遣された。
帰ってきたのは、一人だけだった。
「……中は」
彼は、震える声で言った。
「まだ、続いています」
何が、と問われても、答えられなかった。
言葉にできない。
ただ一つだけ、繰り返した。
「終わっていません」
各国は結界を張った。
封印術を重ねた。
だが意味はなかった。
禁域は、それらを“無視して”進む。
壊すのではない。
存在しないかのように、通過する。
学者たちは結論を出した。
「あれは現象ではない」
「法則だ」
重力のように。
時間のように。
世界の一部として、すでに“成立している”。
ある日、遠方の都市で、子どもが一人言を呟いた。
誰も教えていない言葉だった。
「……おわらない」
親は叱った。
だが、その夜。
同じ言葉を、街のあちこちで子どもたちが口にした。
同時に。
夢を見る者が増えた。
黒い場所。
崩れ続ける人々。
立ち尽くす“誰か”。
目が合う。
そこで、目が覚める。
だが起きた後も、“続いている”。
感覚だけが残る。
禁域は、もはや場所ではなかった。
境界の内と外、その区別が曖昧になっていく。
侵食は、地理ではなく――認識に及び始める。
「これは……広がっているのではない」
ある老学者は、そう記した。
「我々の側に、“接続されている”のだ」
そして記録の最後に、こう残した。
「もしあの中心にいる存在が、こちらを“認識した”なら」
「その瞬間、境界は意味を失う」
報告書は、そこで終わっている。
理由は単純だ。
書いていた本人が、その直後に消えたからだ。
現在、禁域はなお拡大を続けている。
だが、その速度は誰にもわからない。
なぜなら――
どこからが“内側”なのか、
もはや、誰にも判別できないからだ。
そして今日も、どこかで誰かが、
理由もなく、同じ言葉を口にする。
「――終わらない」




