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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
力の代償と飼い猫の憂鬱編
42/289

暴走する理想に猫が鳴く 3

嫌な奴ほど長生きです

3


 俺はストレスで頭痛がすると始めて知った。

 俺の目の前には大勢のマスコミが駆けつけ、まくし立てる様に質問してくる。


「新隊長さん! 今回のオーダーが原因で起きた事故に対してですが、何かコメントはありますか!」

「装備が爆発したそうですが、装備の管理に問題があったのでしょうか!」


 俺は瞳を紅く光らせて一言。


「黙れ」


 とだけ呟くと、マスコミはサーっと俺の前から消えた。そこまで怖がらせた訳ではないのだが、退いてくれるなら好都合だ。

 俺はそのまま、事務所へと撤退していた隊員達の元へと美樹と一緒に向かう。

 そこには、顔に火傷の跡を残した古都ワスレの姿。他の男子隊員は数が半分くらい見当たらない、多分病院にいるのだろうな。それに比べて女子隊員達は傷一つない。


「大体は、聴いている。新型のパワードスーツを強奪して出撃したらしいな」

「そうだが、隊長」

「言い訳は聴きたくない!」


 俺は壁に拳で穴を開けて叫ぶ。

 隊員達は女子隊員達も含めて震え上がった。


「メカニック。百合と桜子は止めたと言っていた。話してくれたよ、医務室のベッドの上で! 彼女達に攻撃魔法を使って、パワードスーツを強奪し、挙げ句の果てに一般人を巻き込む事故だって!? お前達は、街を守りたいんじゃなかったのか!」


 俺は自分でも驚くぐらいに頭に血が登っている。そして、心臓が痛い程脈打つのが解る。ある程度のコントロールは出来てた自覚はあったが、やっぱり本気で怒ると暴走しそうになる。


「俺は、俺達は一緒に戦いたかったんだ! 隊長と、肩を並べて! だが、あんたは女子隊員だけに装備の強さを傾けた。俺達はただの壁役か! 弾除けぐらいにしか考えて無かっただろ!」


 古都ワスレはそう叫ぶと俺に掴みかかって来た。俺はその手を反対に返してそいつを床に投げ飛ばす。


「弾除けだって? ふざけるな、女子隊員達の方が良い装備だから活躍できないってハッキリ言え!」

「ふざけているのはアンタだ! ろくな防御性能もない、スピードはあるがヴァルキュリアに劣る、敵を拘束する為の魔法も魔具無しで完璧にこなすのは特殊部隊クラスだ! 確かに俺達は天才の領域にいるが、無限に強い訳じゃない!」


 こいつ、こいつらは、今まで一方的に劣等クラスを見下して来たくせに。一端に被害者面か!


「甘ったれた事、言ってんじゃねぇ!!!」

「優等クラスは、実力者の集まりだ! 結果が出せてない俺達はもう、オーダーから居場所を奪われつつあったんだ。女子隊員達は自分達の功績を盾にして、隊の金も使い放題だ」

「それだけの働きを彼女達はしているんだよ」

「アンタは、違うと思っていた。北条が、やっていた事の方が遥かにましだ。今、劣等クラスの気持ちがわかった! 今のオーダーこそ、この学園の制度の体現だ! 弱い者は淘汰され、強者の優越感の為に中途半端に生かされる!」

「黙れ!」


 俺はワスレを殴り飛ばす。


「話をすり替えるな! お前達は、オーダーのイメージを踏みにじった。この騒動に関わった、パワードスーツを強奪した男子隊員全員に、オーダーを辞めてもらう」


 俺は我を失いそうになりながらもワスレと他の隊員達に言い渡す。

 そして、男子隊員達は一斉に俺に殴りかかって来た。


「ふざけるな! 確かに俺達は許されない! だが、肝心な時にアンタもいなかったろ!」

「除隊させるなら総取締役を出せ! 彼女の意見も聴きたい!」

「この人数が消えてお前はオーダーが保てると思っているのか!」

「邪魔者は即追放だぁ? 何様のつもりだ!」


 俺は男子隊員達の拳をかわして蹴りを叩き込んで怯ませる。その隙に女子隊員達が魔法で男子隊員達を吹き飛ばした。


「勝手な事ばかり! 隊長だって辛いのよ!」

「何をしたか理解出来てるの? オーダー所か、優等クラスの面汚しよ!」


 男子隊員達は懐からパワードスーツの出現魔具を取り出す。俺は溢れだしそうな魔力を身体強化に回すと、高速で移動してそれらを全てかすめとると、手のひらの上で破壊した。


「大人しく受け入れろ、お前達はそれだけの事をした」

「くそ! 俺達は、アンタと街を守りたかっただけなのに」


 俺は目をそらした。

 これ以上コイツらの言葉に耳を貸したくなかった。裏切っておいて、なんだ。


「そんなこと、俺が知るか」


 それだけ返して、俺は気絶しているワスレが持っているパワードスーツ出現魔具を握り潰して隊長室に戻った。

 扉の向こうでは男子隊員達が出ていく音が聴こえてくる。


「くそ、なんであんな馬鹿なことを」

「許されることではないわ、貴方はよくやった」


 美樹が俺の肩に手を置いて優しくそう言ってくれる。

 彼女の手を俺も触れると、美樹は少しびっくりしたようだが、今度は手を握り返してくれた。

 オーダーも変わってしまうだろうな。

 俺はため息をついて椅子に深く腰かけた。



 オーダーが男子隊員の殆どを除いた。

 それは傷心の伊達正明にも知らせとして届いていた。噴水庭園に集まるWELT・SO・HEILENのメンバーはデバイスで華音からのメールを見て笑っていた。

 

「なんでみんなクビ? 確かにイメージダウンに一般人への怪我人と建物倒壊。条件はそろってるけど、倒壊した建物ってギルドが所有してたもので損害賠償は発動しないし、他の建物も壁に穴が空いた程度でしょ?」


 加々美が噴水に両足を突っ込みながらそう言うが、京子は苦い顔をしている。


「そもそも、魔法戦が起きて建物倒壊。この規模で済んでラッキーだよ」


 京子はベンチで、アイリスの膝に寝転んだ状態でデバイスを閉じる。

 パワードスーツの自爆、ラボからの強奪、それらの単語を見ながら正明の隣でパンを食べてた真紀は首を傾げた。


「私、友達に会いに行ったときそこにいたけど翔太郎君は後でも良いとか、なんとか」

「成る程、情報をその場で部下に飛ばさなかったな? なら治まりつくものか、連中はプライドの塊だ。女子隊員達が追い込んでいたら、なおさら止まらん」


 巧が真紀の言葉に反応するが、志雄はどうも納得がいっていないようであった。

 それも、いくら隊長でも総取締役の由希子の意見を無視して隊員を除隊にするのが可能だった事だ。昨日の出来事だが、除隊は決定されて今は学園に姿を見せない生徒も大勢いるらしい。

 大方、女子隊員達が嫌な噂を流して優等クラスにいられなくなった感じだ。

 正明が様子を見てきたが、オーダーの戦闘部隊だった男子生徒は見事な蔑まれ具合だった。


「なんか、おかしいですね」

「おかしいのはいつもだけど、これ、衝動的と言うか」


 志雄と八雲はデバイスを見ながら難しい顔をする。アイリスは興味なさげにデバイスでゲームをして遊んでいる。対戦相手は同じく興味ゼロの宗次郎だ。

 

「御堂さんも、怒ってたね。メールでふぁっきんだってさ」

「三割ぐらいしか怒ってなさそうだね」


 正明がデバイスを掲げて御堂のメールを読み上げるも、真紀の言葉通りにニッコリと顔文字が使われている。

 オーダーがこうなれば正明達は動きやすくなった。何故三神はこんなふざけた事をしたのか、何故即で首切りが成立したかなんて関係ない。

 仲間達も違和感を抱きつつも、まぁいいかと言ったその時だった。


「見つけた! お前ら!」


 メンバーはその声の方へと顔を向ける。

 そこには金髪にチャラい見た目の男子生徒、伊藤柚希の姿があった。


「華音が好きな奴を一番知ってそうなのはお前らだ! 教えろ!」

「「「「「拒否する」」」」」


 全員に即答され柚希はズルッとずっこける。

 だが、彼は直ぐに起き上がると正明の胸ぐらを掴む。体重の軽い彼はいとも簡単に持ち上げられてしまった。


「特にお前だ! 華音と一番仲が良いよな! 教えろ!」

「い、いた・・・・・・く、苦しい」

「お姉ちゃんを離して!」


 真紀がアクションを起こす前に宗次郎が柚希の手首を捻っていた。

 穏やかじゃない質問に仲間達も柚希を取り囲む。

 この状況はいくら女子が殆どとは言えタコ殴りにされそうな構図だ。

 開放された正明はへたりこむと、丸まってしまう。

 

「おい、お前ら何のつもりだ? 優等クラスにケンカ売るのか?」

「いくら優等クラスでも、友人を怯えさせた人間をヘラヘラと許してやるほど偉くはないはずですが?」


 志雄が重々しい声でそう言うと、巧も好戦的な顔をする。


「おらぁ! にぃちゃんジャンプせんかい!」

「帰れ!」

「ボケ! 失せぃ!」

「水に、落とす」


 柚希がこのメンバーの生活や正体を知れば腰を抜かすかも知れないが、今はメンバーも威嚇してからかっているだけだ。

 本来なら柚希は掴みあげた正明に股間でも蹴りあげられているだろう。

 怯える正明も、からかう為の演技だ。


「教えるから、どっか行ってよ」


 正明が弱々しい声で呟く。

 そして、答えを言う。


「僕だったら、いいなって」

「殺す!」


 正明は魔法を組み立て始めた柚希に懐から取り出した粉を彼の顔に投げつける。


「教えるか! 自分で探せ! バーカ!」


 そう叫ぶと正明は柚希の脛を蹴りつけ、アイリスが彼を噴水へと突き飛ばした。

 そこからメンバーは脱兎の如くその場から走って逃げ出した。正明は魔法で浮いて逃げていく。その顔はイタズラ好きな子供のそれであった。

詩擬きが思い付かない!


次回

ロケ地、横浜!(嘘)

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