1:目立った
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「うーん、目立つかなぁ……」
一人の男が路地裏に居た。冷静に上着を脱いでいる男だが、実は数秒前まで全く別の場所にいた。
国王のおわす城内から、瞬きひとつしていないのにいきなり路地裏へ。
常人でなくとも取り乱すことは間違い無いが、男はどこまでも冷静だった。
無感情ではなく、しっかりと困ってはいるがとてもそうとは思えない。それほど平常に見える。
彼――リゼル(本名はもっと長い)は、数秒前まで自らの執務室にいた。
地位は公爵、職は宰相、更には国王の元教育係。王制の中において心身共に一番国王に近い立場にあった。
因みに宰相の職は、歴代最年少の二十歳で王位を継いだ国王がリゼルを側に置いておきたいが為に究極の身内贔屓で勝手に作った立場だ。
リゼルはすぐさま辞退したが、ごり押しされた。彼が贔屓無しに見ても優秀じゃなければ、国王就任直後に株を急降下させることになっていただろう。
そんな怖いもの知らずな国王の下、今日も朝からせっせと働いていたはずだが、何故全く知らない街の中にいるのか。
とりあえず暗い路地裏から出ようと、こちらもある意味怖いもの知らずなリゼルは大通りへと歩を進める。
(言語が共通、貨幣は違う、取り敢えず貨幣価値は……やっぱり少し目立つな)
派手なものを好まないリゼルなので華美ではないが、十分に貴族然とした上着を脱いでもやはり目立つ。脱いだ上着を腕に掛け、思考を途切れさせる事無く周囲から情報を取り込んでいった。
怖いほどの冷静さ、と元教え子に言われるリゼルだが、この不条理な状況においてもそれは発揮されていた。困惑を感じないでもないが、現状把握するのにその感情は必要ないと自ら抑えることが出来る。
人の枠を外れていてもおかしくない程の自己コントロールは貴族社会では必要な能力だが、リゼルのそれは並外れていた。
視線をさりげなく周囲へと流す。子供が握りしめた銅貨で何を買おうとしているのか、市場で銀貨を差し出す主婦は何を買ったのか、その釣銭の枚数は。
次々と手当たり次第頭に入れていき、下位の貨幣が何枚で上位になるかを知り、物価を予測して自らの認識している価値と比較する。
リゼルはやはり貴族特有の感覚で金を扱うが、国王の城下へのお忍びに時折付いていった事もある為に物の相場というものを理解していた。
「(過去にも存在したことがない貨幣……まあ、貨幣価値はそれほど変わりないようだけど)」
硝貨、銅貨、銀貨。貨幣の形もデザインも見知っている物とは違うが、鉱石的価値に違いは無い。今いる場所が何処であれ、劇的な価値観の違いは無さそうだ。
この時点でリゼルは此処が先程まで自分が存在していた世界とは別の世界だろうと確信していた。リゼルは確かに現実的な物事の考え方をするが、非現実的なものを全て否定するほど頭が固い訳では無い。
今の自分の状況に一番当てはまるものが異世界だったというだけだし、その考えが間違っていたとしても困るのは自分だけだ。
ともあれ、すべき事は変わらない。ふむ、と考えこみ、すぐに迷いの無い足取りで目的地へと足を進める。
「(もっと上位の貨幣も見ておきたいな)」
露店や市場で動く程度の貨幣の価値はすでに把握していた。
予想と違わないのならば、恐らく金貨や晶貨なども存在しているはずだ。それらを扱う店へと目的地を定め、大通りと比べて若干人が少ない通りを歩く。
「(どこも国の造りは変わらないなぁ、楽で良いけど)」
今回リゼルが向かっているのはそれ程格式高い店では無い。上流階級御用達の店となると一般の店と共には並ばないからだ。まず一番攻めにくい場所に城、その周りに貴族の家が建ち並び、貴族の家からやや離れた場所かつ商売的に優れた場所に高級店が軒並み連なる。
今回リゼルがそれらの店を選ばないのは、格式高い店は大抵が小さい頃から貴族の子供が顔を見せている事が殆どで、リゼルの年になって初来店となると怪しまれるからだ。
「(このへんかな)」
大通りよりも少し良いものを扱っている店が並んでいる。
今回金の足しにしようとしているのは剣で、それはいかにも貴族が使う美しい装飾が施されたものだ。
実際使えない事も無いが、武器としての価値はそれ程無い。リゼル自身使う予定は全く無かったが、登城のマナーとして一応腰にぶらさげていた。
そのまま何やら熟練らしい雰囲気を醸し出す剣士が出てきた武器屋を素通りし、隣の道具屋の前で止まる。“鑑定に自信あります”と自信無さげに書かれた小さな看板が、道具屋の看板の下にぶら下がっていた。
書いたのは恐らく店主だろう。気が強い商人程やっかいなものは無いので、控え目なのに越したことはないとリゼルは迷わず扉を開けた。
「いらっしゃいま、せ」
「どうも、こんにちは」
中には若い店員が一人、せっせと売り物を磨いていた。
語尾が怪しかったのは貴族が一人で訪ねてきた事に対する動揺か。上着を一枚脱ごうと仕立ての良すぎる服を着ていることに変わりは無く、さらにリゼルの立ち振る舞いは隠す事なく品が良い。
貴族と思うなと言う方が難しいだろうと、平然と微笑んでみせる。
「売りたいものがあるんですが、良いですか?」
「は、はい」
他に人は見当たらないので、目の前の店員が店主なのか。鑑定を願うと自ら対応しようとする姿勢が確信を持たせる。
少し幼い顔立ちだが二十歳ほどだろうか、背はひょろりと長く少し猫背だ。栗色の癖毛をひとつに結んで背中へと流していて、伸びた髪は動く度にふわふわと揺れた。
片目のモノクルは鑑定用だろうか、中々堂に入っている。そんな事を思いながらリゼルが剣を差し出すと、店主はびしりと動きを止めた。
しかし目は忙しなく剣をなぞっているので、驚きながらも鑑定は行っているのだろう。それを満足げに見て、ふっと店内を見回した。
恐らく、街中で度々会話にあがった冒険者という者達の為の店なのだろう。武器屋の隣にあるのも辻褄があう。リゼルのいた世界では存在しなかった職業だが、周囲の会話を参照すれば何となく何をする人々なのかは想像がつく。
「……素晴らしい装飾ですね、見た事の無いデザインですし」
ひたすら止まっていた店主が、ぽつりと呟いた。
その直後はっとしたように此方を見たかと思えば、顔を青くしてばっと頭を下げる。
「も、申し訳ございません! 失礼な事を……!」
「いえ、褒めてもらったのに怒りませんよ」
恐怖というよりも畏れ多い気持ちが前面に出ている店主の態度を見る限り、今居る世界の貴族がどうあるのかが分かる。貴族であろうと何であろうと、上に立つものが舐められていたら終わりだ。
恐怖を感じる程評判が悪いのは考えものだが、親しみを感じられ過ぎて同列に見られるのも問題が多い。その点、この国の貴族はしっかりしているらしい。
「それで、いくらになりそうです?」
「あ、はい……金貨三百枚程に、なります」
リゼルは微笑んで、少し首をかしげて見せる。
不当に安く買い取ろうという者ならば焦って値段を上方修正するだろうし、少しでも鑑定に自信が無ければ再び剣へと視線を向けるだろう。
貴族を前に喧嘩を売ろうという商売人はいない。やましい事があれば何らかの動きを見せる。
「……?」
「いえ、買い取ってもらえますか」
「、はい!」
しかし店主は首を傾げたリゼルに、こちらも不思議な顔で小さく首を傾げただけだった。
再度の鑑定が必要がない程度に自らの鑑定に自信があり、安く買い叩こうなどとは微塵も思っていない証拠だ。リゼルはすぐにこの店に剣を売る事に決めた。
「(良いお店を見つけたな、看板に偽りなし。それに飛び入りの買い取りにも対応できる資金もあるし、さらに剣をより高く売れる店とのツテもある。ここらへんの店の中では一番しっかりしてるかも)」
実際に貴族ではあるのだが、この世界では地位も伝手も持ってはいない。しかし貴族に見えることを利用するリゼルだが、自ら貴族と名乗った訳ではないのだから良いだろうと頷く。
勘違いしているのなら別にそのままで良いか、と未だに緊張した様子の店主が布袋を持ってくるのを眺めた。
「どうぞ、金貨三百枚です」
「これ、もう少し纏まりませんか?」
「? あ、お財布をお持ちでは無かったですか」
リゼルの世界では金貨百枚で晶貨に繰り上がった。それとなく聞いてみるが、店主は大量の金貨の持ち運びの事だと思ったらしい。
反応を見る限り、こちらの世界には無いのだろう。それならばこの大量の金貨をどうするのだろう、財布があっても質量は変わらないのではと思っていると、店主は店の棚から何種類かの財布らしきものを持って来た。
どれもポケットに入る程度の大きさで、目の前の金貨の一割も入るか怪しいものたちだ。
「えっと、こちらが、今お売りできる財布です」
ちなみに何故店主がリゼルが財布を持っていない事すら怪しまないのかというと、単に貴族の御忍びだと思っているからだろう。
貴族の買い物は財布など使わない。後で店から家にまとめて請求が入り、その時に一括で支払いが完了する。
この店はそんな直接顔を合わせるような貴族の付き合いなど微塵も無いが、知識だけは持っている。リゼルも店主がそう考えているだろう事を察している為、財布への無知を隠そうとはしていない。
「色んな種類があるなぁ……どれが良いと思います?」
「え!? え、あの、どう……」
「私に似合いそうなもの、どれだと思いますか?」
うろたえる店主と遊ぶようにリゼルが問いかけると、彼は必死で財布とリゼルを見比べ始めた。値段について何も言わないのは金貨三百枚を手に入れたリゼルが普通に払える金額だからなのだろう。
それならばあえて聞く事も無い、そう思うリゼルの金銭感覚はやはり根っからの貴族のものだ。
「こ、これなんか、どうでしょう」
差し出されたのは、何かの革を使用した表面がつるりとした白色の財布だった。出し入れする口には銀の細工があり、中々に品の良いデザインをしている。
「じゃあそれで、代金はそこから引いて下さい。残りの金貨は財布の中へ……あ、金貨二枚分銀貨に換えて欲しいです」
特別趣味から外れなければ何でも良いが、思ったよりも好みの財布だ。
微笑んで頷いたリゼルに、店主はホッとしたように金貨の袋から二十二枚金貨を抜く。二十枚は財布の代金だろう。
抜いた金貨を分かるように銀のトレーの上に載せ、そして金貨二枚分の銀貨二百枚を新たに用意しながら伺うように此方を見た。
「あの……」
「大丈夫、疑っていたら最初から売りませんよ」
「は、はい!」
金貨と銀貨の枚数の確認が済んでいないからだろうと当たりをつけ、リゼルは促した。
外れてはいなかったようで、店主は嬉しいのを堪えようとして堪え切れなかった変な笑みを浮かべ袋から財布へと移し始める。
「(……いっぱいにならないなぁ、それとなく聞いてみようかな)あまり身近で見ないので、新鮮です」
「え? あ、財布ですか? 空間魔法がついたものは特に値段も高いし数も少ないので、あまり種類が無いのが残念なんです」
リゼルが知りたかったのは空間魔法の方だったのだが、財布が珍しいのだろうと思ったらしい。
財布から貨幣が溢れない原因は結果的に分かったから良いのだが。
「(魔法……大通りでも普通に会話に出てきていたし魔術と似たようなものだと思っていたけど、やっぱり少し違うのかな)」
リゼルの世界では“魔術”と呼ばれていたものと、此方で云う“魔法”と呼ばれるものに大きな違いは無い。こちらの世界についてすぐ魔力が使えるかどうかの確認は済んでいるし、問題無く使うことが出来た。
仕組みも同じなのだろうが、当然だが全く同じという訳にはいかないらしい。
やはり一人で情報収集するのは限界があるか、と思案していると、店主が全ての貨幣を移し終えたらしい。出来れば取り出し方も知りたいと、財布が渡される前に声をかける。
「空間魔法が使われてるカバンも欲しいんですが、ありますか?」
「あ、はい、えっと」
「かさばらないもので、適当に」
やはり財布の時と同様に暗に選んでくれと言われ、店主はびくびくとカバンの並ぶ棚と向き合った。
空間魔法がある為大きさに関係は無いだろうが、デザインを選ばせる為だろう。リュックやトランクなどの大きいものから、ハンドバッグやポーチなどの小さいものまで種類が揃っている。
先程空間魔法付きのものは珍しいと言っていたが、その割にこの店にはそこそこの量が揃っていた。ここが高級店ではなくちょっと良い道具屋であることを考えてみると揃い過ぎな程だ。
余程良いツテを持っているのだろう、良い店を知る事が出来たとリゼルはホクホク顔だ。
「こちらなんか、いかがでしょう……?」
「ありがとう、お財布の中から取っていって下さい」
シンプルながらもデザイン性のある黒いベルトに、そのベルトに通す事が出来るこちらも黒い革のウエストポーチ。
今の貴族然とした格好でも付ける事に問題は無さそうだ。
「金貨三十枚、頂きますね」
「はい、どうぞ」
店主が財布の口を開けるのを、さりげなくだがしっかりと見る。普通の財布と同じように手を入れて、普通に金貨を取り出した。コツが要るなどは無いらしい。
安心して金貨が抜かれた財布を受け取り、早速腰につけたポーチの中にしまう。財布がポーチの底についた感触が無いので、慣れない内は落としてしまったのかと錯覚しそうだ。
ついでに今まで手に持っていた上着も適当に畳んでポーチへと近付けると、すっと吸い込まれる感覚と共に上着が消えていた。ポーチの口の大きさは関係ないようだ。
とりあえず必要なものは揃ったか、とリゼルはベルトの付け心地を直しながら店主を見た。
「ありがとう、また来ますね」
「は、はい、ありがとうございまし……」
一瞬固まった店主に微笑み、扉を潜った。
扉を閉める瞬間、背後から聞こえた声に今度来たらどんな反応をするだろうと楽しみに思う。
「またって、え……また?」
「(やっぱりきちんと情報を知りたいな)」
道具屋でも思った事だが、一人で情報収集するのは限度がある。時間をかければ出来ない事は無いが、楽な道があるのなら当然楽な道を進みたい。
人に頼れば自らの事情がばれるリスクはあるが、バレた所で困る事もないだろう。
この異世界への転移が人為的なものであったら慎重になるだろうが、リゼルはそうでは無いと確信していた。転移した者にしか分からない感覚だが。
かと言って容易にバラしたい事では無いので、情報を聞き出す人物はきちんと選ばなければとリゼルは目に付いた路地へと足を進める。
「(出来ればどの国にも所属していない方が良い、考えは片寄らない方が良いし)」
すぐ隣に大通りがあるにも拘らず、路地は静かだった。
少し湿った空気と、石煉瓦に挟まれたせいで冷える空気の所為で少し肌寒い。
「(変な主張は持ってないけど自分の考えは持っていて、正義感なんて持っていなくても最低限の道徳は守れる人で、駆け引き上手な人)」
駆け引きが上手い人は不必要にこちらに突っ込んでは来ない。分かりやすく利益を与えたら与えた分だけ情報が返ってくる、その手の人物は自分の利益無くリゼルのことを触れまわることもないだろう。
もちろんそれは此方も駆け引きが出来る事が大前提だが、貴族社会で生きてきたリゼルが可能かなど言うまでも無い。
「(あ、それと出来れば)」
「おい」
声を掛けられ、振り向く。大通りを背にしたその人物は逆光の為に見にくいが、男であることに間違いは無い。
まじまじとその風貌を確認したリゼルは一瞬、自分は絡まれるのかと思った。
なにせ第一印象はとてもガラが悪い。良く見るとひどく端正な顔をしているのが分かるが、それを全て台無しにする程にガラが悪い。
リゼルよりも頭ひとつ高いすらりとした長身に、腰に下げられているのはその長い脚の長さ程もある細身の大剣だ。姿恰好から考えれば傭兵か、あるいはこれが冒険者なのだろうか。帯剣しているからと言って騎士にはとても見えない。
先程聞いた低く掠れて不機嫌そうな声を思いだしてみると、まさにこの男の声にぴったりだった。どちらかと言わずとも穏やかな相貌をしているリゼルとはまるで真反対の男。
路地にいるのはリゼルのみ。それならば声を掛けられたのは自分だろうと、視線を合わせて微笑む。
見下ろしてくる視線は鋭く、気の弱いものならば即座に気絶するだろうと思ってしまう程だった。
「どうしました?」
人当たり良く、それこそ近所の人に声を掛けられたかのように自然に問い返したリゼルに、男は微かに眉を上げた。おそらく強面だろう彼に平然と返事を返したのが意外だったのだろうと、リゼルは内心おかしく思いながらも促すように小さく首を傾げる。
男はしばらく何かを探るかのようにリゼルを見ていたが、ふっと小さく息を吐いてその鋭い視線をリゼルの背後へと送った。
「タチ悪ィのがいる、止めとけ」
リゼル自身そこまで奥に行くつもりは無く、少し静かな場所で考えたかったため路地に入っただけなのだが、運の悪い事に男曰く“タチ悪いの”が集まっていたようだ。
さて、わざわざ心配して声をかけてきたようには見えないのだがと思いながら、探る様子をまるで見せずに微笑んだ。
「ありがとうございます、親切ですね」
「…目についたからな」
面倒そうに口では肯定しているが、やはり純粋な親切心ではないだろう。だが全てが嘘では無い、恐らく彼は関わらず通り過ぎる選択肢も持っていたはずだ。
後は関係ないとばかりに大通りへと踵を返す男の背中を見て、リゼルはポーチへと手を入れた。財布を掴み金貨一枚を取り出すと、その背中に向かって投げる。
金貨がちょうど後頭部へと辿り着こうとした瞬間、男が振り向きざまにその金貨を掴んだ。眉を寄せて怪訝そうに此方を見る男に、リゼルは変わらない微笑みでもう一枚金貨を差し出して見せる。
「少しお話しませんか」
「厄介事なら他をあたれ」
「お話を聞かせて貰えるだけで充分ですよ、たぶん。無理強いはしませんけど」
男は胡散臭そうに眉を寄せたが、一つ舌打ちをしてリゼルが差し出す金貨を受け取った。最初の一枚は助けて貰った謝礼、次の一枚が話を聞かせて貰うことに対しての報酬。
その意図を汲み取った男が、ついて来いと金貨を手の平で遊ばせながら歩き出した。金に困っているようには見えないが、興味を引く事には成功したらしい。
金貨を払ってまで知りたい情報は何か。恐らくそんな考えからか。
その背中を見ながら、リゼルは思いかけた事を再び繰り返す。
これといった所属国の無い冒険者、リゼルの意図をくみ取れる頭を持っており、ガラの悪さに反して行動にはそれが見えない事からそれなりの立ち位置にいるだろう視野の広そうな人物だと望ましい。
そして出来れば。
「(少し世話焼きだと、やりやすい)」
好意からの行動で無くとも、結果的に此方に利があればそれで十分だ。
中々好条件の人物に出会えたと、リゼルは自分の運の良さに感謝しながら男の後を追った。