第3話 回収
「あーーー!」
「うーーー!」
「かゆうまぁーーー」
「まだオープン前だから、従業員かな?」
生活物資を確保すべく、私は自宅近くのショッピグモールへと走っていった。
その途中、通りかかったお店やコンビニの商品を回収し……厳密には窃盗だけど、今は緊急事態なのでごめんなさいって謝っておく……まだオープンしていないショッピングモールの正面入り口を青銅の剣で破壊して中に入ると、数十体のゾンビたちに襲われた。
私は剣を振るってゾンビたちのクビを刎ね、『ヒール』で体を焼いていく。
ただ首を刎ねただけではゾンビは倒せないし、経験値も入らないからレベルも上がらない。
魔石も手に入らないので、倒すのは面倒だけどそうするしかなかった。
「魔力の補充も忘れずに……」
倒したゾンビから魔石の回収を忘れず、それを魔力補充に用いることも忘れない。
ゾンビの場合、焼き払えば倒せはするけど、これは他の人たちは大変だな。
「レベル4になったぞ」
順調ではあるが、これから徐々にレベルが上がりにくくなる。
異世界ではアンデッドじゃない強敵が沢山いたけど、この世界には今のところゾンビしかいない。
今後は、倒しても倒してもレベルが上がりにくくなることが容易に想像できた。
強いボスに相当する特別個体が出てくるか、倒したゾンビの骨から復活するスケルトンを倒してレベルを上げるスピードを増すしかないだろう。
「ゾンビの骨からスケルトンが復活するには時間がかかるから、これはこのままにするしかない」
異世界では、スケルトンを復活させないために骨を粉にしてみたり、聖水に漬けてみたり、骨をバラバラに捨てたりなどしてみたが、結局スケルトンは復活してしまった。
そういう仕組なのだと思って諦めるしかない。
それよりも今は、確実にスケルトンを倒せるように強くなっておく必要があるだろう。
油断せずに頭を使って、アンデッドの群れに囲まれて多勢に無勢状態、という状態に陥らないようにしなければ。
ソンビなどの弱いアンデッドの強みは、数の多さを利用した集団戦法にあるのだから。
「このショッピングモールの商品はすべて回収だ!」
総合スーパー、ホームセンター、飲食店、その他様々な専門店が入っており、隈なく商品や使えそうな物をすべて回収していく。
裏のバックヤードにある商品の回収も忘れないようにしないと。
それが終わると私は、ショッピンモールに隣接したガソリンスタンドへと移動した。
「手に入れたガソリン携行缶に、ガソリン、軽油を入れてから仕舞う。ポリタンクには灯油を入れてと……」
ガソリンなどを液体のまま『アイテムボックス』に仕舞うと、取り出した際に『バシャ!』っと地面に落ちてしまうので、ホームセンターで集めたガソリン携行缶とポリタンクが役に立った。
今後、これらの燃料が手に入らなくなる可能性が高い。
海外からの原油の輸入も、ガソリン、軽油、灯油の精製もストップするだろうからだ。
「燃料は貴重になる。発電機も集めておいたから、それを使って家電製品も使えるだろう。いや、ソーラーパネルと蓄電池の方がいいかな。私一人が生活に使う電気くらいなら、ソーラーパネルで発電すればいいのだから」
同時にストーブも集めておいた。
今は真夏だが、じきに冬はやってくる。
電気も必要なヒーターではなく、ストーブの方が役に立つはずだ。
当然、薪や木炭、ガスボンベ、携帯ガスコンロなどの回収も忘れない。
「キャンプ用品のお店には便利な品が多かったな。すべて回収しておいたけど」
『アイテムボックス」の限界収容量がいまいち把握できないので、仕舞えるだけ仕舞っておいて、もしいっぱいになったら不要な物を捨てれば問題ない。
世界中でゾンビが大発生し、ゾンビに襲われた人たちも次々とゾンビになっていく世情になってしまったのだから、今は集められるだけの物資と食料を集めておく必要があるのだから。
「これからは、現代社会の当たり前が多くができなくなる。だからこそ、今のうちに物資を確保しておくべきだろう」
頑張れば、私が死ぬまでは現代的な生活を保てる分の物資や食料が手に入るだろう。
幸いして私は独身で、妻や子供に責任を持つ必要がない。
一人ならなんとか暮らせるはずだ。
魔王を倒すなんてハードなことをしたので、今の私の願いは死ぬまで穏やかに暮らすことなのだから。
「他も回るか……」
ちょっと前に、とある漫才師のフレーズが流行した。
『こんなん、なんぼあっても困りませんから』と。
物資や食料は、いくらあっても無駄にはならないだろう。
私はショッピングモールで働いている人たちの車を拝借した。
車は所持していないが一応免許は持っており……このところほぼペーパードライバーだったけど……なによりこの状況で無免許運転をしても、警察官に取り締まられる心配もないという。
私は久々に車を走らせ、町中の店舗や倉庫、家屋から使えそうなものを片っ端から回収していく。
「しかし、どうして生存者に会えないんだ?」
この世界に戻って来てからというもの、私が会うのはすでにゾンビと化した人ばかりだ。
まさかこの町の住民すべてがゾンビになったとは思えないが、もし生存者がいても、すでにこの町から逃げ出しているのだろう。
そして多数いるゾンビの中に、水死してふやけていたり、体の一部が魚などに食べられて欠けていたり、体が腐って見るに堪えない個体も多く混じっていた。
「ゾンビは、海から上陸した可能性が高いようだ」
私のアパートも、ショッピングモールも、倉庫も、これまでに回った店舗もすべて海沿いにある。
海から上陸したゾンビによって、海沿いにいた人たちから襲われてゾンビにされてしまったのだろう、
内陸部や山間部には、まだ生き残っている人がいるかもしれないが、そこに様子を見に行くためにも、今は物資の回収とレベルアップが最優先だ。
「久々の車の運転だけど、特に問題はないか」
異世界での鍛錬とレベルアップのおかげで、運動神経や動体視力が良くなっているからだろう。
そして私の推察どおり海沿いにはゾンビも多く、それらを倒しながら海沿いのお店や倉庫からも物資を回収していく。
「……急がないとな」
食料はいくらあってもいい。
なにより、ついに電気が止まってしまった。
なので、腐る前にできる限り生鮮食料品を回収しておきたかったのだ。




