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夢の国の裏側で  作者: 臥亜


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外章:観測者のいない場所

落ちている、という感覚すらなかった。


重力も、上下も、時間もない。ただ“認識できない何か”の中を、四人は進んでいた。


いや——


“進んでいる”と認識しているのは、太郎だけだった。


「……ここ、どこだよ」


声に、反響はない。


音が広がらない。


存在が、空間に触れていない。


ミックーが前を歩く。その姿ははっきり見えるのに、輪郭が曖昧だ。


「ここはね」


振り返らずに言う。


「観測されていない領域」


「誰にも見られていない場所」


リュエルナが周囲を見渡す。


「……だから、形がない」


早乙女が腕を組む。


「じゃあ、私たちはどうして存在できてるの?」


ミックーが、少しだけ笑う。


「簡単だよ」


「自分たちで、自分たちを“見てる”から」


太郎が眉をひそめる。


「……どういう意味だ」


ミックーが足を止める。


ゆっくりと振り返る。


その目は、これまでで一番“本気”だった。


「ここではね」


「“他人の視線”は存在しない」


「だから」


「自分で、自分を定義し続けないと——消える」


その言葉の直後。


早乙女の足元が、わずかに崩れる。


「っ……!」


輪郭が、揺れる。


太郎が手を伸ばす。


「早乙女!」


「大丈夫……!」


だが、その声もわずかに歪む。


ミックーが静かに言う。


「意識を切らすな」


「“私はここにいる”って、認識し続けろ」


リュエルナが、早乙女の手を握る。


「大丈夫」


「一人じゃない」


その言葉に、早乙女の輪郭が安定する。


「……ありがと」


太郎は拳を握る。


「めんどくせえ世界だな」


ミックーが肩をすくめる。


「外側って、だいたいそういうもんだよ」


そして、前を指さす。


「でも」


「目的地は、もうすぐ」


何もないはずの空間に、“歪み”が見える。


それは門のようでもあり、裂け目のようでもある。


近づくほどに、そこだけが“意味”を持ち始める。


太郎が呟く。


「……あれが」


ミックーが頷く。


「“観測の起点”」


リュエルナが息を呑む。


「ここから……全部が始まってる」


早乙女が低く言う。


「つまり」


「ここを変えれば——」


「全部変わる」


ミックーが静かに続ける。


「ただし」


「代償は大きい」


太郎が即座に返す。


「今さらだろ」


ミックーが、わずかに笑う。


「だね」


四人は、その“裂け目”の前に立つ。


中は、見えない。


だが、確実に“何か”がいる。


太郎が深く息を吸う。


「準備は?」


リュエルナが頷く。


「できてる」


早乙女が言う。


「逃げ場はないわよ」


ミックーが、最後に言う。


「ここから先は」


「“誰も保証してくれない世界”だ」


太郎が笑う。


「上等だ」


そして——


四人は、同時に踏み込む。


その瞬間。


“視線”が、突き刺さる。


初めて感じる、明確な“観測”。


声が響く。


どこからでもなく、


確実に、全員に届く。


「——侵入者確認」


「——物語干渉者」


「——排除対象」


空間が、一気に“形”を持つ。


床が生まれ、壁が生まれ、世界が“定義”される。


そして、その中心に——


“何か”がいる。


まだ輪郭は見えない。


だが、それは確実に。


これまでのすべてを管理してきた存在。


ミックーが、小さく呟く。


「……やっと会えたね」


太郎が前に出る。


「これが」


「本当のラスボスか」


リュエルナの声が重なる。


「終わらせる」


早乙女が静かに言う。


「全部」


その瞬間。


“それ”が、ゆっくりと形を持ち始める。


世界の根源。


観測の正体。


すべての始まり。


そして——


すべての終わり。

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