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夢の国の裏側で  作者: 臥亜


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第33話:呼び戻す代償

時間が止まったように感じた。

崩れかけた空間、閉じていく外側、そして“選択”を突きつける視線。

太郎の喉が、わずかに動く。

「……そんなの」

選べるわけがない。

エルナは“始まり”だ。消されたはずの存在、それでも戻ってきた声。ここまで来れた理由そのもの。

リュミエラは“現在”だ。壊れながらも抗い続け、太郎と並んで戦ってきた、確かな存在。

どちらも、失えない。

リュエルナが静かに言う。

「どちらか一つに戻るってこと」

「融合を解く。もう一度、分かれる」

「その瞬間、片方は“完全に消える”」

早乙女が息を呑む。

「そんな……」

太郎は拳を握る。

空間の崩壊が、音を立てて進む。

外側の影が、淡々と告げる。

「猶予、終了」

「閉鎖する」

その瞬間。

太郎の中で、何かが“繋がる”。

——選択じゃない。

——これは。

「……違う」

太郎が顔を上げる。

「選ばない」

影の動きが、わずかに止まる。

「不可能」

「仕様外」

太郎は一歩踏み出す。

「だったら、仕様を壊す」

リュエルナが目を見開く。

「太郎……?」

太郎は彼女の手を掴む。

「お前、言ってたよな」

「契約は“両方の同意”で成立するって」

リュエルナが、はっとする。

「……まさか」

太郎は頷く。

「新しい契約を作る」

外側の影が、初めて明確な拒絶を示す。

「禁止」

「未定義の契約は禁止されている」

「じゃあ今、定義する」

太郎の声は、静かに、しかし確実に響く。

「俺と、お前で」

「エルナも、リュミエラも、どっちも消さない契約だ」

空間に、異音が走る。

存在しないはずの“項目”が、無理やり書き込まれるような感覚。

早乙女が叫ぶ。

「無茶よ!そんなの——」

「無茶じゃない」

太郎は遮る。

「ここまで全部、無茶だった」

一瞬の静寂。

リュエルナが、ゆっくりと笑う。

「……そうだね」

その瞳に、エルナの光と、リュミエラの強さが同時に宿る。

「なら、やろう」

二人の手が、強く結ばれる。

「新規契約、開始」

その瞬間。

空間に“文字”が浮かび上がる。

存在しない言語。

だが、意味だけは理解できる。

——共有存在維持契約

——人格分離・消失の拒否

——観測干渉の許可

外側の影が、初めて明確に揺らぐ。

「……異常」

「契約、受理不可」

だが。

光が、それを無視して進む。

リュエルナの体が震える。

「くっ……!」

太郎が支える。

「いけるか」

「……いける」

だが、その代償は確実に現れていた。

彼女の輪郭が、薄くなる。

存在が“分散”していく。

「これ……」

早乙女が呟く。

「一人で二つを維持してる……?」

リュエルナが苦笑する。

「ちょっと、きついかも」

その瞬間。

空間の奥から、微かな音。

——カチ。

太郎の目が見開かれる。

「今の……」

もう一度。

——カチ。

それは。

あの音。

「……ミックー」

空間の裂け目から、小さな“ノイズ”が滲み出る。

最初はただの歪み。

だが、次第に形を持つ。

丸い影。

見慣れたシルエット。

「やれやれ」

軽い声が、響く。

「無茶しすぎでしょ、ほんと」

その瞬間。

世界の崩壊が、一瞬だけ止まる。

太郎が笑う。

「遅えよ」

ノイズの中から、はっきりとした姿が現れる。

ミックー。

ただし——

以前とは違う。

その体は、完全ではない。

一部が“欠けている”。

「完全復元、失敗」

ミックーが肩をすくめる。

「でもまあ、戻れただけマシか」

外側の影が、明確に警戒する。

「例外個体、再出現」

「排除対象」

ミックーが、にやりと笑う。

「まだ言う?」

そして、太郎を見る。

「契約、上書きしたね」

「いい判断」

リュエルナを見て、少しだけ優しい顔になる。

「……無茶しやがって」

リュエルナが笑う。

「お互い様」

ミックーは振り返り、外側の影を見る。

その目が、初めて“敵意”を持つ。

「じゃあさ」

「ここからは、“ルール無視”でいこうか」

空間が、軋む。

外側と内側の境界が、崩れ始める。

世界はもう、“守られていない”。

完全な、干渉領域。

太郎が拳を握る。

「やるぞ」

ミックーが頷く。

「今度こそ」

リュエルナが、二人の隣に立つ。

「終わらせる」

外側の影が、ゆっくりと手を上げる。

「全領域、強制終了」

光と闇が、ぶつかる。

世界そのものを賭けた、

最終干渉が始まる。

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