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第三話『ローフル代表の歓迎式典』

ローフル代表の歓迎式典は、謁見の間で開かれた。

四人の宮廷楽団員が歓迎式典序曲を演奏してローフル代表を迎え入れ、歓迎式典は厳かに始まった。

スパルタ軍との戦争中のため式典に参加したのは、ディアキバルニシ王、ギリムシュー将軍、宮廷歴史家のイストリア、クロマ将軍、そしてクロマ将軍の側近の名も無き部下の五名と四名の楽団員だけだった。

リカルダスたちは、部屋の中央で二列に並んで王に拝謁した。

先頭にリカルダスとエルピーダ、その後ろにアスタルとベルダッドが並んだ。エルデムは姿を隠していた。

「(これが、絶対王のディアキバルニシ王に、ほぼ無敗のギリムシュー将軍か。二人とも凄い威厳だ。それにしても、リカルダス様はこの短期間で立派に成長なされた。伝説の二人を前にして、少しも見劣りしていない。エルピーダは満足で御座います!)」エルピーダが感慨深かった。

「(かつてナポレオン公にお仕えしていた頃の宮廷に似ているな~。懐かしいな~)」アスタルも感慨深かった。

「(ふ~ん、これがアテネの頭脳集団なの? 錚々(そうそう)たるメンバーね)」ベルダッドが感心した。


まず話を始めたのは、宮廷歴史家のイストリアだった。

「まずは、『地下迷宮探検競技』における優勝を褒め称えたい。おめでとう!」

「ありがとうございます」リカルダスたちは、元気よくお礼を言った。

「諸君らは、これから壮大な大陸探しの旅に出て頂きたい。レムリア大陸、アトランティス大陸、ムー大陸はいずれも、かつて存在していたという幻の大地である。レムリア大陸は、高度な精神文明が栄え魔術の研究も盛んであったという。アトランティス大陸は、高度な物質文明が栄え武器や兵器の研究も進んでいたという。ムー大陸は、精神や物質の次元を超えたあらゆる生命体が共存し、あらゆる望みが叶う奇跡の石のお陰で繁栄していたという。いずれの地でも、ここギリシャでの常識が通用するものではない。諸君らの中には、『神々の試練』を受けた者もいるだろう。神々のご加護は、大陸でこそ大いなる恩恵をもたらすものでもある。諸君らを多いに助けてくれるであろう」

「(そう言うことだったのか・・・)」リカルダスは理解した。

「(ご加護があると言っても、今のところ具体的に何の恩恵もありませんからね・・・)」エルピーダが思った。

「(神のご加護がなければ戦えない強敵が現れるかも知れませんね・・・)」アスタルは覚悟を決めた。

「(そ~いうこと。ギリシャで、人間相手に戦うのとは比べものにならないわよ・・・)」ベルダッドが思った。

不思議なことに四人が考えていることが、それぞれの頭の中に伝わってきた。

姿を消したエルデムが、四人の意思疎通をはかっていた。

四人はすぐにそれに気づいたが、口には出さなかった。


「ひと月後、エンペラドール暦615年1月5日に太陽の姿が全て月に隠される時がおとずれる。世にも奇怪な現象だ。もちろんギリシャの地では限られた場所でしか、この現象を確認することは出来ない。ここから少しばかり移動してスニオン岬の地で、出立の儀式に参加して頂く。儀式が終わった時こそが、異界への門が開かれる時である。その瞬間に、あなた達が連れている大陸の者たちに異変が訪れる。充分に覚悟して頂きたい。異世界である大陸への扉が開くのだ・・・」余韻を残して、一同の顔を見回した。

「儀式の日は、その日でなければなりませんか?」リカルダスは、挙手をして質問をした。

「この日を逃がせば、18年ほど待つことになる。それは出来ない!」一同は声を失った。イストリアの言葉の意味が分からなかった。

「イストリアどの。質問があります」リカルダスは、挙手をして質問をした。

「なんだね・・・」イストリアは落ち着いて質問を待った。

「大陸への門が開くとは、具体的にどのような意味でしょうか?」

「うむ。ローフル代表チーム、ニュートラル代表チーム、カオティック代表チームのそれぞれに、失われた大陸の出身者が参加しておる。太陽が月に隠れるときに、それぞれの代表チームの誰かに異変が訪れれば、その者出身の大陸へ行くことが出来るのだ。ローフル代表チームには、ムー大陸出身者が参加しているはずだ」イストリアはベルダッドを見て言った。

「・・・」ベルダッドは押し黙ったままだった。

「(ラクシャスとエルデムのことには、気付いていないのかな・・・)」リカルダスは、思った。

「(ミスティックから正式に紹介されたのは、ベルダッドさんだけです)」エルピーダが思った。

「(ラクシャスさんの存在は、知られていないのでしょう)」アスタルは思った。

「(ついでに、エルデムちゃんのことも黙っておいたら?)」ベルダッドが思った。

「(うむ。そうしよう・・・。ラクシャスとエルデムちゃんがいる限り、ウチのチームの確率が一番高いはずだ。ベルダッド以外のことはすっとぼけよう)」リカルダスは決断した。

「(承知しました。分かりました。分かったわ)」意見がまとまった。


「もう一つ質問があります」リカルダスは、イストリアにたずねた。

「なんだね?」

「これは、『仕事の依頼』と受け取って良いのでしょうか? 我々に対する『報酬』と『仕事の内容』を確認したいです」

「それでは、それぞれと個別に契約を結ぼうか? 代表者のリカルダスくんと結ぼうか? どちらが望みかな?」

「リカルダスさまに、一任します」エルピーダが言った。

「私もそれに依存はありません」アスタルも承諾した。

「面倒だから、お願いね。あなたから頂くわ」ベルダッドが言った。三人に意見を聞いてリカルダスが答えた。

「私が代表して、契約を結びます」

イストリアは、ギリムシュー将軍とディアキバルニシ王を見た。二人とも軽く頷いた。

「宜しいでしょう。正式な契約を式典後に結ぶことにします」

「分かりました」リカルダス一同は頭を下げた。


「キミたちへの仕事に依頼は、『ギリシャと失われた大陸との文化交流の懸け橋』になることだ。定期的に行き来出来る方法を見つけ出してきてほしい」

「それで宜しいのでしょうか?」

「失われた大陸は、失われた文化や知識の宝庫だ。我々は、闇雲に領土拡大を望んでいるわけではない」ずっと黙っていたディアキバルニシ王が口を開いた。

「・・・(ならば何故、スパルタ軍との戦争を続けているのだ・・・)」リカルダスは黙っていた。

「(おかしいですね。いつまでも戦い続ける意味がありません)」エルピーダが思った。

「(誰かの陰謀か、策略でしょうか?)」アスタルが訝しがった。

「(話は早いわよ。戦争をさっさと止めさせましょう)」ベルダッドが思った。

「(うむ、そうしよう。それを契約内容にしよう)」リカルダスは考えをまとめた。


「もう一つ確認したいことがあります」リカルダスは、イストリアに質問した。

「なんだね?」イストリアは静かに質問を待った。

「我々がパーティーを組んで大陸探しをすることになったのは、偶然ではない気がします。むしろ、ローフル代表、ニュートラル代表、カオティック代表を選抜し、地下迷宮探検競技で優勝するように仕組まれた気さえします。イストリア殿は、なにかご存知でしょうか?」

「・・・」イストリアは押し黙ったまま、ディアキバルニシ王とギリムシュー将軍を見た。王のオーラは緑色に変化した。

「うむ・・・」王は、小さく頷いた。

「?(今、王のオーラが緑色に変化しました!)」異変に気付いたのはエルピーダだけだった。

「?(変わったか? 何も変化したようには見えなかったぞ・・・)」リカルダスには違いが分からなかった。

「(私にも、変化したようには見えませんでした)」アスタルも気付かなかった。

「(だとしたら、アタシたちと同じ状態よね。一つの身体に複数の魂が宿っているの・・・)」ベルダッドが思った。

「(王も、ムー大陸を探しているってことか?)」リカルダスは不思議に思った。

「(たぶん、その可能性は高いです)」エルピーダが思った。


「それでは、王の許可が出たので私がお話ししよう」ギリムシュー将軍が口を開くと、リカルダス一同は固唾を飲んで話に耳を傾けた。

「今から30年ほども昔のことになる。北方のスラブ民族の襲撃を受け、王と私は征伐に向かった。戦はそれほど難しいものではなかった。撃退すればいいだけの話だからだ。だが、敵の目的は領土の侵略では無かった。王に近づくことそのものが目的だった」

―ギリムシュー将軍の回想―

広大な平原で布陣していた。広大だから、敵の接近は許さぬはずだった。しかし、どういう手を使ったのか、王のいる陣営に単独で乗り込んできた敵がいた。

「ほぉ、やるのう。わしの目の前に単独で現れるとは」王は感心した。

「簡単だよ、だって俺主人公だもの。感心しろ。褒めろ。ひれ伏せ。謝れ。降参しろ」

「いっぺんに喋るものではない」ギリムシュー将軍は窘めた。

「殺すことが目的ではないよ。ギリシャを混乱させればいいよ。揉めてよ。破壊しろ。戦争しろ。憎み合え。イザコザれ。罵れ」

「おぬしの話を聞いていると、頭がおかしくなりそうじゃ」ギリムシュー将軍は剣を構えた。

「用事はすぐ済むよ。一瞬だ。即座だ。瞬くまだ。人格破壊(バラダージ)。さらばーじ。トンズラージ」

ただの、それだけだった。以後、王の人格は二またになり、戦争を好む王と、平和を愛する王が混在した。

王が寝ている時は、赤色の人格が目を覚まし、部下を戦争に駆り立てた。

王が起きている時は、調停に紛争した。

そのどっちつかずの政策がギリシャ中を混乱に巻き込んだ。

「余の望みは失われしムー大陸を見つけ出し、余の魂の安寧をはかることである。褒美は望むままに与えよう」王は堂々と約束した。

「承知しました」リカルダス一行は、恭しく頭を下げた。

「それでは、正式な契約にはいる」

リカルダスは、王と対面で席に着いた。他の者たちは、リカルダスの背後で控えていた。


その式典の様子を、物陰から見ていた三人組がいた。

「ふふっ、戦争中だからね。警備が手薄だよ。ここには、たった9人しかいないじゃないか。げほげほっ。警備の雑魚どもは、排除するのに、たいした手間がかからなかったよ」

ゾフォスの後ろには、プーパと無理矢理連れてこられたヴィズがいた。

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