第八話 鉄壁の裂傷と衝突
擦り傷に砂が入って飛び火になりそうで怖い。
今回も楽しんでいってください。
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盾もいずれは剣となり、
剣もいずれは盾となる。
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国暦600年 1月1日
ボクは国を守るために産まれた。
名を「エンド」
姓を「ウォル」
ミドルネームを「/」
と呼ぶ。
ボクはエンド家に産まれた次女で、一家は五体満足。遺伝者だった。曾祖父が栄光の超越者だったためだ。異能力の内容はまだ分かっていない。
国暦615年 6月
ボクは軍兵学科のある高等部にて才能を開花させた。一年生にして推薦入学してきた貴族のクラスメイトを全員、ボコボコにしてしまった。貴族の息子であった彼らは幼少期から剣を握らされていた。そんな彼らを剣を握って一ヶ月も経たない素人が勝ってしまったのだった。遺伝者であったのもあいまって、ボクはこの頃から高等部の人気者になった。
そして、人から始めて殴られて、傷を負って気付いた。ボクの異能力は「痛覚鈍化」だった。骨がおれない限り、ボクは倒れない。これが原因でクラスメイトに勝てたのかもしれない。そう、今になって思った。
国暦618年 4月20日
ボクほ城壁防衛隊に入隊して、中央都周辺を防衛していた。600年に起きた第二次支配戦争により、いや、まだ第一次支配戦争が終了していないから別名、全線崩壊戦争とでも呼ぼうか。まあ、その全線崩壊戦争のより、今城壁と言うものは意味をなくしている。なんでも、地面を掘って、生ける屍がでてくるとか。
国暦618年 6月30日
そこは地獄絵図と化した。人々は叫び、金属は擦れ音を鳴らす。断末魔が地を響かせ、救いの声が空に消える。第二次支配戦争、もとい、全線崩壊戦争の火の手がまさに今、中央都までに進んでいた。ここ最近の全線崩壊戦争により、壁の強化(主に地中)を行ってきたはずなのに難なくその壁は意味をなさない状態になっていた。彼らは地を這わず、壁を壊さなかった。
空を飛んだのだ。
弓兵は慣れない空への射撃を行ったが、地とは違う風の影響で、矢は何もない空を切って彼方へ消えた。空を飛ぶ魔物は中央都へ、激突しにいく。途中で大量の生ける屍をばらまいて、中央都の大きめの建物にぶつかって破裂。その建物は音と土煙をたてて崩れた。勿論ボクだって戦った。数時間前まで人であった生ける屍を数えきれないほど殺した。斬った。断った。でも、人には、体力に限りがある。ボクの場合、骨に、限界がある。無理をしすぎて骨が耐えきれなくなり折れてしまう。もう、利き腕である右手が折れたせいで、僕一人としての戦力は半分以下だった。しかし、生ける屍には数に限りがなかった。ボクはそこで生ける屍に肩を噛まれ、息絶えた。
はずだった。
目が覚めた先はある病院の一室。ボクはあのとき息絶えたと思っていたが、それは思い違いだった。生きていた。だが、それも違った。ボクは死んだのだった。そして甦った。生ける屍として。ボクは王の犠牲と栄光の超越者を持つ、異質な戦士となった。
国暦625年 8月3日
不規則に発生する全線崩壊戦争の回数をもう誰も覚えていない。しかしボクは中央都周辺にて崩壊妨害兵の兵長として、壁を防衛していた。生ける屍の栄光の超越者となった今、ボクは超再生を持つ。腕を切り落とされても数を数えて十の内にはもとに戻っている。それを活かし、ボクは中央都を囲む壁の内側にて重盾戦士となって皆の身代わりになっている。今日の全線崩壊戦争も勝利することができた。
国暦627年 9月9日
遺伝者の持つ、栄光の超越者の異能力はいつか消滅すると言う研究結果がでた。また、遺伝者の異能力の発現が遅かった人は暴走の可能性も高くなるらしい。ということでボクは三度目の栄光重盾戦士の称号をもらったとき、兵を引退した。
国暦633年
ボクは家庭を持った。と言ってもある種の戦略的婚約と言ってもいい。よい異能力を持つ男性の遺伝者か、栄光の超越者との子を産み、異能力を二つ以上持つ、遺伝者を作り出そうという試みだった。ちなみに最近は痛覚と言うものが戻ってきていて引退していて良かったと思っている。
国暦636年 12月13日
娘が産まれて3年が経った。娘の「フォウ」は兵になることを夢見て毎日外で走り回っている。別に反対はしない。娘がしたいことができるように生きていきたいから。でも、別に嫌じゃないわけではない。
国暦637年 7月29日
全線崩壊戦争により、ボクは死んだ。悲惨な方法で死んだ。死因は痛みによるショック死。
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
身体中の骨を砕かれては再生し、皮膚を剥がされては再生した。死なないボクは体より前に心が力尽きたのだった。
エンド/ウォル
国暦600年~637年 37歳だった。
そして、
これが俺の八順目だった。
続
予約投稿ができているか確認しに来たらあらビックリ。投稿されていないではないですか。不明です。ようやく、ようやく、一段落。え?文化祭?そうですか。さいですか。
続きがあるなら続きを、無いなら別シリーズを読むか出るまでお待ちください。ありがとうございました。また、お会いしましょう。