41.枯れた花には種子が宿る
「なあ、俺も行く必要ある?」
「ある。何言ってんの?」
「言葉遣いは優しくなる?」
「ならない。累が全部悪い。」
「質問しただけだろ。」
「面倒くささが透けて見えました〜。」
「ギクリ。」
「それ声に出す人いるんだ。」
「揺衣は声に出さないのか?」
「出すよ。」
「出すのかよ。」
「お前、用事だ用事だってしょっちゅう俺を連れ回すけど、本当は俺と一緒にいたいだけだろ。」
「ギクリ……とはならない。殺意が勝った。グサリ。」
「ナイフ刺して殺すな。」
「累の分まで私生きるから……!だから、さよなら。」
「人の天寿を盗むな。最悪なマッチポンプ。」
「で、俺ら生徒会室に何しに行くわけ?」
「白石会長に挨拶。」
「挨拶?」
「そう。応援演説誰がやるか決まったって伝えるの忘れてたから。」
「それで俺に挨拶させようってこと?連絡はしてあるのか?」
「まかせて。今するから。」
「は?」
「だから今するって。」
「いやいやいや!!遅い遅い遅い!!今から向かうんだろ!?手遅れだろ!!お前一応生徒会書記だろ!!ちゃんとしろ!!」
「大丈夫大丈夫!」
「なんて連絡するんだよ!!」
「応援演説の件ですが、クラスメイトの重くんがしてくれる事になりました。それで重くんが自分も白石会長に挨拶をしたいと言っていて。」
「俺そんなこと言ってなくね!?というか連絡無しで来てたら俺やる気ありすぎて空回りしてるやつみたいになってたんじゃねえの!?いきなり押しかけてきて『生徒会長に挨拶させてください!!』だろ!?」
「うん。」
「お前ガチか!!!」
「それぐらいやる気のあるやつが演説するなら会長も安心でしょ?」
「無理無理無理無理!!」
「大丈夫大丈夫!!」
「というかそれならせめてL〇NEで連絡させてくれ!!その方がまだマシだから!!」
「わかったわかった。じゃあ軽く挨拶書いて送っておくから。」
「ほんと頼むから……。」
「はい、送ったよ。」
「なんて書いた?」
「こんな感じ。」
『うぇ〜い、白石会長見てる〜?風鈴の音が心地よく響く季節となりましたが、お元気にお過ごしでしょうか。大井さんの応援演説を引き受けることになりました重累です。彼女とは幼なじみとして長い付き合いがあり、だからこそ誰よりも彼女の魅力を理解していると自負しています。なので大井さんの事は安心して僕にお任せ下さい。ジメジメとした梅雨もまだ序盤ですが、気持ちだけはカラっと元気にいきましょう。うぇ〜い。重累』
「お前なんで俺の事丁寧チャラ男にしてくれてるわけ?」
「累っていつもこんな感じでしょ?」
「俺うぇーいって言うキャラじゃなくね!?言わないから。」
「えー、言わないの?」
「すっごく言わない。しかもお前うぇ〜いって書く位置完全に"拝啓"と"敬具"の位置じゃねえか!!挟むなよ!!」
「印象づけられるかと思って。」
「しかも内容も少しキモイ気がする!!というかお前よく自分で書けたなこんなの!!お前に照れるという概念は無いのか?」
「累に対しては全く無い。」
「だろうな。」
揺衣に若干怒っていたらなんか教室の外がざわざわしてきた。
「なんだ?」
「何かあったのかな。」
「そこ!廊下を走らない!」
廊下の方から声が響いてきた。
「もしかしてあの声って。」
「そのまさかだと思うよ。」
「だよな。」
「だね。」
ガラガラと教室の扉が開かれた。
「なんだい!?みんな廊下を走ってる!!どんな学校だ!!」
「会長が走るから周りが相対的に早く見えているだけで〜す。走ってたのは俺たちだけですわ。」
「白石会長!と谷副会長。」
「終わった。生徒会長来ちゃった……。」
「書記ちゃ〜ん?俺のことはオマケ扱い?」
「あ、大井書記!!見たよ見たよさっきの連絡!重くんってなかなか、うん、特徴的な人なんだね。まあ、幼なじみとは、きっと切っても切れない縁なんだろうと思うし、私から君の人付き合いについてがやがや言うつもりは無いのだが、さすがの私も初めて見るタイプだと言うか、チャラチャラしてる感じの人なのかい?でも文章はちゃんとしている感じもあってさ、本当に読み取れないというか、うん。率直に、重くんがどういう人なのか見に来たんだが。」
俺はとりあえずこっそりこの教室から出ようと熊から逃げる登山家のように、生徒会長から目を離さずに少しずつ後退する。
「この逃げようとしてるのが重くんです。」
「おい揺衣。」
「へえ、君が件の重くんか。大井書記の応援演説をしてくれるということでね。うん、色々聞かせてもらいたいんだが。」
「会長〜、絶対書記ちゃんの悪ふざけですって。ねえ、そうでしょ?重く〜ん?」
「それは重くんに聞いてみないと分からないだろ!」
「だから今聞きましたよねえ〜。」
「いや!聞くまでもない!大井書記はそんなイタズラしないよな!」
「なんなんですか……。」
「白石会長。もちろん、私がそんなことするわけないわけないじゃないですか。」
「そう!大井くんがするわけないん……え、やったのかい?」
「はい。」
「騙された!!」
「だからいったじゃないですか〜。」
「ええい!というかじゃあなんで重くん!逃げようとしているんだい!!」
「面倒くさそうだったので!!」
「その大胆に言い切るところ!私は嫌いじゃないよ!!君に大井書記、いや、大井次期生徒会長のことを託そう!!」
「甘口評価!!」
「良かったね、累。」
「良かったのかなあ!?」




