19.テスト勉強は続くよ
まーた遅刻してるよ。
「とりあえず揺衣は飴と鞭のことは忘れた方がいい。一旦簡単な問題解かせて自信つけさせた方がやる気出るから。」
「……うん。」
「橘はもう途中式だけ教えろ。どうせお前途中式省略しまくってるだろ。」
「そうだけど。」
「お前が飛ばしても分かるなって思う範囲が周りは分かんなかったりするんだよ。」
問題の解説読んでもよく分からない時ってだいたいそれが原因。みんなこれくらいわかってるでしょ?という勉強できるやつの傲慢さが分からないを招いているのだ。マジで俺はそれを許さない。
「言ってて悲しくなるけど、もう生徒に期待すんな。ただ話すんじゃだめだ。相手に分かるようにすんのが伝えるってことだろ。」
「……わかった。」
「飛跳、その問題はこの式の応用だから先にその問題の勉強をしてみようか。」
「う〜ん。あ、これ知ってるやつ!」
「お、覚えてた?じゃあそれ思い出しながらやってみようか。」
「進〇ゼミでやったやつ!!」
「やってない。」
「重くんは論理的な思考能力はそれなりにあると思うんだけど、情報が増えた時に混乱しがちだね。」
「たしかに、問1とか問2とかはだいたい何とかなるけど問3で訳わかんなくなるんだよな。」
「だから一旦情報を整理する時間を作った方がいいかもね。理系科目って少し遠回りすることが最短のルートになることって結構あるからさ。」
「時間厳しくね?」
「情報整理しないで問題見る度にこれはここでこれはこっちで……みたいに探し直したり、情報が混ざって変なミスしたりとかするよりは結果的に効率良かったりするよ。」
「そうなのか、ちょっと意識してみるわ。」
「物理とか特にそうだよ。ちょっと物理やってみようか。」
「俺物理めっちゃ苦手なんだけど。」
「まあまあ。僕がいるから。」
「だからちょっと不安なんだけど。」
「この問題とかどう?」
「あー、剛体?マジでわけわからんのよな。」
「ノートある?」
「ほい。」
「これはとにかく矢印を書きまくる。」
「おん?」
「情報全部矢印にしてみて。」
「おう、ほいほいほい。」
「あ、この違うよ。これはここだね。」
「日本語ってむじ〜!こういう事ね?」
「そうそう。あとはこれはここで……」
言われた通りに矢印を引きまくる。
「で、サインコサインで矢印の向きを揃える。」
「ほうほうほう。こんな感じ?」
「そうそうそう。それでこの問題もっかい見てみて。」
「……めっちゃ簡単じゃねえか!」
「そうなんだよ!!」
「天才か?」
なんかさすが優等生だな。勉強の内容というより勉強そのものが分かってるって感じ。
「累めっちゃいい感じじゃん!正答率だいぶ上がってるよ。」
「ん?橘、呼び捨てか?」
「え、あ、つい勢いで。でもすごいね重くん。」
「いや、累でいいって。というか累って呼べ。重くんって長いだろ。」
「……うん、じゃあ累。やっぱり図とか書いた方がいい感じ?」
「おう、マジで分かりやすいわ。物理とか世界変わった。橘のおかげだわ。」
「良かった。……ねえ、累も僕のこと勇気って呼んでよ。」
「え、やだ。橘の方が語呂良くて好きだし。」
「……。」
「俺の中で橘は橘だから。」
「……まあ累はそういう奴だね。」
「お、分かってきたか。俺ってそういう奴。」
「あはははは!なにそれ!!」
「へへへへへ!!そのまんまだよ!!」
「ちょっと、勉強してるんだから静かにしてくれないかな。」
変なノリで橘と笑いあっていたら揺衣に怒られた。
「揺衣。飛跳の勉強どんな感じ?」
「んー、まあ赤点回避は出来ると思うよ。」
「お、じゃあまあ目的は達成できそうだな。」
「まあ赤点回避目標じゃ低すぎるし、目標は6割だね。」
「結構詰め込むな。」
「いやあ、目標って下回るものだからさ。目標だけは高く高くだよ。」
「まあそうだな。まあ飛跳のことはお前に任せれば何とかなるか?」
「もち。任せてよ。」
「ああ、任せた。」
「飛跳、どうだ?」
「よU!」
「だいじょうVの上位互換?」
「これは累は抜いたな〜!!」
「お前舐めんなよ?理系科目を掴んだ俺は最強だから。」
「え〜?累が掴んだのは蜘蛛の糸でしょ?」
「俺陀多じゃねえよ!!芥川さんはいいんだよ。」
「じゃあ揖保乃糸?」
「そうめんじゃねえか!!!!お前糸には詳しいねえ。」
「ふっふっふ。累なんてよよいのよいだから!」
「言うとしたら『ちょちょいのちょい』だろ。『ち』が足りねえよ。」
「血!?怖……!」
「いや俺『血が足りねえ』って言ってねえ。」
「でも本当に飛跳いい感じに伸びてるからね。累も抜かしちゃうかもよ?」
「おいおいおい、何?お前『もうお前に教えることは何も無い……』ってなるまで教えるの?」
「ふっふっふ。」
「そうなった師匠って基本弟子に抜かれるからな?」
「いやいや、言ったでしょ?目標って下回るものだから。累を抜いて私に1歩及ばないくらいに仕上がるよ。」
「お前自分だけ安全地帯かよ!!」
「大丈夫だよ、累も伸びてるからさ。逆に累が大井さんの成績抜いちゃうかもよ?」
「橘……!!」
俺の味方はお前だけだよ。
「つまり累は大井さんの成績を抜いて僕に1歩及ばないくらいに仕上がるよ。」
「橘?」
「……言ったね?試してみる?」
「おいおいおい、やめてくれ。俺たぶん橘ぐらい勉強したらアレルギーになるから。な?やめようぜ?」
「面白そうだね、やってみようか。」
「……橘?なあ?聞いてる?」
「累。私とテストで勝負だよ!」
「正気?俺の成績知ってるよな?」
「これは私と橘くんの戦いだから。」
「なあ、ポ〇モンバトルって実際に戦うのはポケ〇ンの方なんだぜ?」
「なんか累大変だね〜。」
飛跳はまったりコーヒー飲んでブレイクタイムだった。ふざけんなよ。
「もちろん飛跳にも戦ってもらうからね。」
「!?!?」
飛跳の口からコーヒーが溢れた。
俺たちは地獄の2週間を過ごした。




