第二話 後片付けは大事だよね。
大変遅くなりました。
楽しみにしてくださっている読者の皆様、申し訳ありません。
なんとかペースを取り戻したいと思いますので、どうぞ見放さないでくださいm(*._.)m
良ければ、感想、評価、ブクマをお願いいたします。
〜 ユーフェミア王国 とある山中の廃砦 〜
うーむ。
どうしてこうなった?
いや、アザミさんにシュラさんよ。
そんなジトッとした目で睨まれましても……
「「「「ご主人様、何をいたしましょうか?」」」」
いや、なんにもしなくて良いんですけど?!
っていうか、俺がご主人様なの!?
君らのご主人様、まだ生きてますよ!?
「主様よ……些か、節操が無さ過ぎるのではないかのう?」
「マナカ様。これは流石に抗議したく思います。」
いや、だから2人共さ!?
ちょっと落ち着いてくれないかな……?!
「待ってくれ2人共。これには海よりも深く、山よりも尚高い理由が在る筈なんだ。取り敢えず落ち着こう。落ち着いて、先ずは話し合おうよ!」
頑張って説得を試みるものの、俺の周りにはベッタリと元首領の奴隷だった女性達が……
「うぅむ。どうやら話し合いの余地は無さそうじゃのう。」
「そのようですね。シュ……ウズメ、家に連絡をお願いできますか?」
ちょっと待って!?
そんな、一面だけで判断しないで、せめて事情を鑑みてくれないかな!?
俺自身も良く解ってないけどね!!
俺達は、冒険者パーティー【揺籃の守り人】として、この廃砦の制圧と、虜囚の解放に乗り出した。
そして雑魚の構成員の無力化、幹部達の捕縛、首領の生け捕りに、囚われた女性達の救出と、3人で、そりゃあ頑張ったんだ。
因みに、首領以下盗賊団の生き残り達は、全員縄を打ち拘束してから、結界に捕らえてあります。
で、現在救出した女性達と、捕らえた盗賊達を外に連れ出しているんだけど……
何故か首領の奴隷にされていた女性達が、俺のことを主と言い出したんだ。
俺はただ、首輪が隷属させていることに気付いて、首輪に魔力を通して術式を破壊して、外してやっただけなんだけど……
「でもまあ、これじゃ埒が明かないし、アネモネに訊いてみるか。」
ダミーコアを取り出して魔力を注ぐ。
繋ぐ先は、勿論我が家のダンジョンコアだ。
『お兄ちゃん?なんかあったのー?』
我が愛しの妹の声が聴こえてくる。
今日も可愛い声だな、マナエ。
「んー、問題っちゃあ問題発生だな。アネモネって手空きかな?」
『呼んでくるよー。待っててね〜♪』
待つこと数秒……
『お待たせしました、マスター。』
うん、全然待ってないからね。
「忙しいとこごめんよ。実は……奴隷にされてた女性達を解放しようとして、術具だろう首輪を術式ごと破壊したんだけど、そしたら何故か女性達が俺を主と呼び始めたんだよ。なんでか知らない?」
事情を話して知恵を乞う。
アネモネの固有スキル【叡智】ならば、この不可思議な現象の原因も分かるだろう。
『……マスター、彼女達の様子はどのようなものか、映像を見せていただけますか?』
「ああ、分かった。」
ダミーコアを操作して、ダンジョンコアとの通信を、音声だけでなく映像もやり取りするよう操作する。
アネモネには、彼女達が生気のない瞳で並んでいるのが見えているだろう。
『……なるほど。マスター、恐らく彼女達は、自我が薄れてしまう程の調教を受けています。そしてその薄れても辛うじて残っていた自我を、その首輪の術具で抑え込み、強制的に従わせていたのでしょう。しかし、マスターによってその自我を抑えていた術式が破壊され、急速に自我が目覚めさせられた、という状態ですね。』
うんうん。
抑制されていた自我が目覚めたなら、良いことだよね。
『ところが、その薄弱な自我では生きてはいけないと、生存本能のようなものが働いたのでしょう。彼女達はマスターに、本能で庇護を求めているのです。』
お、おおう?
あれかな、腹を見せて群れに加えてもらって守ってもらう的な感じなのかな?
しかも薄い自我で。
「ええ……そんな状態じゃあ、下手に人里に返しても受け入れてもらえない……よね……?」
『そうですね。一旦収容施設で預かり、自我が充分に回復し、保てるようになるまで、療養させるしか無いと思います。盗賊の討伐報告の際に、その旨を提案なさると良いでしょう。』
本来であれば、盗賊に囚われた者達は、家が在るのなら帰してやるのが妥当な処置だ。
一度、彼女達の気持ちを訊いてみた方が良いかな。
「分かったよ。彼女達に確認して、それでもついて来ると言う人は住民として受け入れよう。また報告が済み次第、連絡するよ。」
『かしこまりました。マスター、お気を付けて。』
そしてアネモネとマナエに礼を言い、通信を終える。
どっちみち、一度はギルドに届出ないといけないな。
そしてこの大所帯……まともに連れて歩いても時間が掛かり過ぎるよな……
「よし。先ずは移動手段の確保だな。シュ……ウズメ、周囲の樹を10本くらい倒して集めて置いてくれ。タマモは、その樹を魔法で乾燥させといてくれるか?俺はその間に、捕まっていた女性達が今後どうしたいか、訊いてみるよ。」
仲間2人に指示を出し、俺は女性達に向き直る。
先ずは、新たに捕らえられた女性達だな。
彼女達は商隊の商人と、その護衛に雇われた冒険者だったかな。
「改めて自己紹介しよう。俺はマ……クレイ。Cランク冒険者で、【揺籃の守り人】っていうパーティーを率いている。貴女達のお仲間は、残念だったね。お悔やみ申し上げるよ。辛いところを申し訳ないけど、今後どうしたいか、身寄りは有るのか、教えてくれないか?勿論、俺で力になれることが有れば、出来る限り助力するよ。」
先ずは商隊の一員であろう女性に話を振る。
彼女は今も、一緒に救けられた少女と、もう1人の少し歳上っぽい女性を抱き、宥めている。
「救けていただき、ありがとうございます。わたくしは、行商人一家の主として家族で商隊に参加していました、【ルージュ】と申します。この子は亡き夫の連れ子であった【エヴァ】。この女性は、使用人として雇っていた【カリナ】といいます。」
立ち上がり、腰を折って丁寧に挨拶してくれる。
ルージュさんは、れっきとした商人らしい。
行商人として旅をしていたが、逗留先で亡くなった同じく行商人をしていた旦那さんと知り合い、交流を深めた後に結婚した。
それからは、行商人一家として、旦那さんとその連れ子であるエヴァ、元々雇っていた使用人のカリナさんと、旅から旅の行商生活を送っていた。
当然、定まった住まいは持たず、残されたのは、盗賊に奪われた商いの商品と資金のみとのことだ。
「これからどうしようかは、正直決めかねています。このまま行商を続けるにしても、義娘にはもう怖い思いをしてほしくありません。しかしわたくし達のような根無し草には……」
悩みどころだね。
娘さんのためには危険な行商からは足を洗いたいが、一所に腰を据えるにしても、商いを続けて資金を稼がねばならない。
「なるほど。それなら、良い所を紹介しようか?そこは住民を絶賛募集中だし、商売のノウハウが有るなら、すぐに店も持てるだろうから。当面の資金も、多分街から助成される筈だよ。」
貴重な人材だもんね。
しっかり勧誘しておこう。
「それは……願ってもないことです。ですが、本当にそのような都合の良い事が……?」
流石商人だね。
美味い話の裏を探ってくる。
「ちょっと特殊な事情の有る街でね。聞いた事無いかな?王国と友好条約を交わした迷宮の話を。」
ハッとするルージュさん。
情報はしっかりと手に入れていたようだ。
「俺はその街の偉い人に伝手が有るから、力になれると思う。どうかな?エヴァちゃんやカリナさんと一緒に、心機一転、新たな生活を始めてみない?」
顎に手を当て、黙考する彼女だったが、やがて手を下ろし、決意を秘めた瞳で俺をしっかりと見た。
「お言葉に甘えさせていただきたいと思います。どうか、お力をお貸しください。」
そう言って、再び腰を折って頭を下げたのだった。
続いて、残り3人の女性達へと向き直る。
彼女達はそれぞれ違うパーティーに所属していた冒険者らしい。
「Dランク冒険者の【ベレッタ】だよ。熊の獣人で、パーティーでは前衛で戦士をやってた。」
「同じくDランクの【ミーシャ】です。わたしは斥候をやってました。剣と罠の扱いは得意です。虎の獣人です。」
「Dランクの【ミラ】。見ての通りエルフよ。武器は弓と短剣で、精霊術を使えるわ。元のパーティーでは中衛と後衛を担っていたわ。」
それぞれ自己紹介をしてくれる。
全員Dランクか。
みんな違うパーティーだと言うから、3パーティー合同での護衛任務だったんだね。
「それで、君達はどうする?行く宛が無いのなら、勿論君達も街へ案内するよ?ギルドの誘致も進んでる筈だし、街に根差した冒険者になってくれれば、俺も嬉しいし。」
未だに俺の街には、冒険者が居ないからな。
ダージル達【火竜の逆鱗】は、出来れば残ってもらいたいけど、無理強いする訳にもいかないし。
そんな打算もあって、俺は3人を勧誘する。
これで上手いこと街に来てくれれば、仮に冒険者を辞める決定をしても、街の治安維持にも協力してもらえるかもしれないしね。
「私は……もうパーティーの仲間も居ないし、正直行く宛は無いわ。それに、アナタにも興味があるし。」
え、俺に興味ってどういうこと?
思わせぶりな視線で流し見られ、思わずドキッとしてしまう。
「わたしも、身寄りも無いし、ついて行きたいかなぁ。」
「オレもだな。アンタさえ良ければ、世話になりたい。」
エルフのミラがそう言うと、虎獣人のミーシャと熊獣人のベレッタもそれに追随した。
「ていうか、アナタ達本当にCランクなの?たった3人で【黒縄蛇】を壊滅させたのもそうだし……」
意味深な微笑みを浮かべて、ミラが俺に近付いて来る。
そして、俺の耳元に顔を近付け、俺にしか聴こえないような小声で。
「(アークデーモンが冒険者をやってるなんて、どんな事情が有るのかしらね?マナカさん?)」
一瞬、何を言われているのか理解が遅れたが……
正体を看破された!?
「私は、出来ればアナタ達のパーティーに加えてもらいたいわ。強くなれそうだし、色々と楽しめそうだもの。」
そう笑みを浮かべながら、ミラは俺から離れる。
「あ!それならわたしも一緒に入りたいです!」
「おい、ズリィぞ!?オレも仲間に入れてくれよ!」
あらら。
あとの2人もその気になっちゃったよ。
ミラがどのようにして俺の隠蔽を突破し、正体を暴いたのかは不明だが……
手元に居てくれるってんならまだマシか?
「あー、パーティー加盟云々は一旦保留させてほしい。取り敢えず、俺達について来てくれるってことで良いんだよな?」
俺の提案に、3人は頷きを返してくれた。
そうであるなら、俺の正体や目的を打ち明けた方が良いだろう。
でもそれより先に、先ずは他の女性達の処遇と、盗賊達の引渡しだな。
「それじゃあ、君達は悪いけど、保護した女性達の面倒を見てやっててくれないかな?出来れば、身寄りのある娘は家族の元に帰してやりたいけど、それとなく訊いてみてくれないか?」
冒険者の3人と、商人一家のルージュさん達に頼み、俺はウズメ達が用意してくれた木材へと近付く。
「2人ともありがとう。これだけ有れば充分だな。」
最寄りのギルドが在る街まで、一般人の足で徒歩3日ほど。
加えて此処は山の中で、女性達に歩かせるのは偲びないことこの上ないからなぁ。
俺は木材に魔力を浸透させ、念動で宙に浮かべる。
続けて頭の中でイメージを固めて……
「造形魔法【想造工房】発動。」
ただの丸太に、形と役割を与える。
丸太は寸断され板材やホゾへと加工され、俺の想像した通りに組み合わされ、組み立てられ……
一艘の巨大な屋形船へと姿を変えた。
まあ、障子も畳も無い、船に小屋が乗っかってるだけの代物だけどね。
ダンジョンなら、イメージしてDP払うだけでポンと出来るんだけどなぁ。
結構な魔力を消費して、俺は女性達を運搬するための乗り物を造り上げた。
「こんな……!魔法だけで舟を造ったというの!?」
それを見たミラが、驚愕の声を上げて呆然としている。
「ふわあー!!クレイさんって、やっぱり凄い人だったんですね!!」
「っていうか、何で陸で舟?」
ミーシャとベレッタも驚いている。
ルージュさん一家は声も出ず、ただただ固まっていらっしゃいます。
「盗賊の貯め込んだ品物や、みんなを乗せるには荷車じゃあ負担がデカいからね。これならみんな乗っても余裕も有るし。」
タマモとウズメに頼んで、廃砦の中からシーツ類なども持ち出してもらってある。
それらを水の球体に放り込み、火魔法でぬるま湯程度にしてから、激流を上下左右に発生させてお洗濯。
取り出した布に火魔法と風魔法を併用した温風を吹き付け、一気に乾燥させてから、船の小屋の中に敷き詰める。
これで板の床面でも多少はマシだろう。
「さてと。ルージュさん達は、女性達をこの船に乗せてあげてください。冒険者組は、盗賊共の略奪品を運び込んでくれ。」
結局、砦に元々捕らえられていた女性達は、皆ついて来ることになったようだ。
それならば、彼女達が己を取り戻し、人並みの生活が送れるようになるまで、しっかりと街で保護してやらないとな。
全員が船に乗り込み、ウズメを船首に立たせて見張り番にする。
どっちみち後で正体を明かすんだし、出し惜しみは無しだな。
「それじゃあ、最初は怖いかもしれないけど、じきに慣れるから我慢しててね。」
そう言って俺は船を包み込む巨大な結界を張る。
捕らえて一纏めにしていた盗賊達も、もうひとつの結界で包み込む。
そして結界をさらに魔力で包み込み、念動を掛ける。
「相変わらず無茶苦茶するのう、クレイよ。」
「流石です、クレイ様!」
「うそ……これだけ巨大な舟が……浮いてる……?」
「いやー!?高い!怖いー!?」
「オレ、夢でも見てんのかな……?」
屋形船は、それを包む結界ごと宙に浮き上がり、みるみるその高度を上げていく。
盗賊達も結界に閉じ込められたまま、空へと浮かんでいる。
「こうやって、街の近くまで運んでくからね。着くまでは、船の中で休んでて良いよ。それから……タマモ。」
俺自身も飛行魔法で空へと上がり、同じく飛んでいるタマモへと指示を出す。
「はい、クレイ様。全力でよろしいのですね?」
「うん。残しといてもまた魔物か盗賊の根城になっちゃうだろうからね。全部壊しちゃってくれ。」
そう。
最後にこの打ち捨てられた廃砦を、二度と悪用されないように破壊するのだ。
「それでは、参ります!」
タマモ――アザミの魔力が急速に膨れ上がる。
彼女の周囲の空気が帯電し、頭上には分厚い黒雲が生まれる。
黒雲はどんどん密度を増し、溢れ出る魔力が紫電となって空気中を荒れ狂う。
「【万雷散華】。」
静かに発せられた言霊により、黒雲の魔力は臨海を迎えて、地上へと降り注ぐ。
一瞬の、目も眩むような閃光が疾走ったかと思えば、次いで耳朶に叩き付けるような轟音が響く。
光の去った跡に残るのは、先程まで建っていた砦の、黒焦げとなった残骸だけだ。
って、ちょ!?
周りの樹に火が点いちゃってるよ!?
「……やり過ぎました。す、すぐに消火します!」
慌てて水魔法で消火して回るタマモを、呆れ半分、頼もしさ半分に見届けて、俺は船の面々を確認する。
「「「「…………………………」」」」
うん。
驚き過ぎて声も出ないみたいだね。
「さて、これでここにもう用は無いね。それじゃ、街へ向かおうか。」
消火活動を終えたタマモを迎えて、俺は念動で結界を操作して、街へと向かい飛び始めたのだった。
ミラ「信じられない……こんな大規模な魔法を維持するだけでなく、移動まで……」
ミー「わたし達、とんでもない人について行こうとしてるのかな……?」
ベレ「オレはあの人がどんな事情持ちでも、絶対ついてくぞ!」
エヴ「ママ、あのお兄ちゃん凄いねぇ!」
ルー「そ、そうね。ああ!?危ないから走り回らないの!!」
シュ「平気じゃぞ?この船は結界に覆われておるからの。落ちても結界が受け止めてくれるのじゃ。」
エヴ「ほんと!?アタシ、真下も見たい!」
シュ「おお。元気な幼子じゃのう。どれ、儂が抱いて下に連れて行ってやろうかの?」
ルー「いえ、そんなお戯れを……!こらエヴァ!街に着くまで大人しくしていなさい!」
エヴ「えー!!ぶぅ。ママのいじわるぅ!」
シュ「これは……また主様が、妹が増えたと言い出しそうじゃのう……はぁ……」




