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閑話 オヤジ達は眠れない。

閑話その③です。


パパーズのお悩み第2弾ですね。


どうぞ、お楽しみください。


良ければ、評価、感想、ブクマをお待ちしております。


よろしくお願いします。


m(__)m



〜 ユーフェミア王国 ブリンクス辺境伯領 領城 執務室 〜


《マクレーン辺境伯視点》



『で、あるからして……っておい?聴いているのか?!』


喧しいのぉ。

聴いておるわ。


「聴いとる聴いとる。フリィが連絡をくれなくて、寂しいんじゃろ?」


我が親友であり、奉じる王であるフューズ――フューレンス国王に生返事を返す。


フューズめ。

愚痴より先にやることがあろうに。


『そうなのだ!フリィと最後に話したのはいつだと思う?!4日も前だぞ!それも移民団の進捗状況を訊いて、街の事を報告したらさっさと切られてしまったのだ!映像も無く、声しか聴けなかったし……』


「ああ、それなんだがな、どうやらマナカの方でも、独自に移民を集め始めるらしいぞ。そのためにウチの街の冒険者ギルドで登録したらしい。」


『んなっ!?ま、マークよ、それは誰から聞いたのだ!?まさか……』


「無論、フリィじゃな。なんでもギルド支部長の【破壊神】を味方に引き込んだらしくてな。登録したその日にCランクまで上げてもらったようだ。」


冒険者ギルド【ユーフェミア王国ブリンクス支部】の支部長と云えば、かなり有名である。


元Sランク冒険者で【破壊神】と呼ばれ、その強烈な個性と強固な信念を以て、立ち塞がる魔物も人も、全てを粉砕してきた男(?)なのだ。


あ奴に殴り飛ばされた悪徳貴族や商人は、両手の指でも足りないほど居るのだ。


『【破壊神】だと!?あのオカマ冒険者が味方に……って待て!?何故それをフリィは余ではなくお主に伝えたのだ!?余にはそのようなこと欠片も――――』


「王国貴族達に気取られたくなかったのであろうよ。なんせマナカの次の狙いは、各地の迷宮らしいからな。ワシはすぐ隣の領じゃしギルドも抱えておったから、口裏合わせをしろということじゃろ。」


まったく、いちいち噛み付くな、友よ。

ワシだって最近は仕事の話でしか、フリィと会話しとらんのだからな。


『うぐっ……いや待てよ?各地の迷宮?マナカが……まさか、迷宮の支配か!?あれは眉唾ではなかったのか?!』


「どうもそうらしいのぉ。迷宮を踏破し、主から支配権を奪うつもりのようじゃ。そうすることで、彼本来の迷宮と繋がり、転移が可能になるんだとか。」


あ奴にとっては、迷宮も便利な転移の道具扱いか。

まあ、あ奴らしいと言えば、らしいがの。


『であるなら、余に言えば許可証くらい用意してやったものを……』


「だから、それをすると貴族共がまた騒ぐじゃろうに。各地の迷宮を支配するということは、あ奴の手が各地に伸びるということじゃぞ?此処ぞとばかりに啄いてくるじゃろう?」


下手をすれば、盟約を反故にしたと言い出されかねん。

だから、偽名まで使って登録したのじゃろう。


『む、むぅ……そうか、それで冒険者か。……待て。各地のと言ったな?それはもしや、他国もということなのか?』


まあ当然、そこに思い至るよなぁ。


「そのようだ。だが仕方あるまいよ。移民を募り民から希望が出ても、支配する貴族共が首を縦に振らんのだ。フリィの街には人手が必要な以上、貴族を説き伏せるよりも余程効率的じゃ。」


あの子やマナカなら、他国の民だろうが関係無いじゃろうしのう。

分け隔て無く招き、元の住民と同等の権利を与えるのじゃろう。


「それと、それに並行して孤児も保護すると言っておったぞ。最初は農村部の口減らしで放逐される子らを。次いで、都市部の裏組織を潰してから一斉に保護するつもりのようじゃ。」


『んなっ!?いや、確かに余らで保護するのは難しいと言った以上、独自に動くのは解るが、それが何故裏組織を潰すということになるのだ?!』


そんなもん、決まっておろうに。


「孤児が囲われておるからじゃ。徒に手を出せば、取りこぼした子らに報復の手が伸びる。それを、防ぐためじゃろう。」


裏組織の者共から見れば、孤児など便利な駒じゃろうからな。

メシをやると言えば、孤児らは荷運びでも何でもやるじゃろう。


そして、要らなくなれば切り捨てられる。


「そんなことはお主でも分かっておろう?ああ、そうじゃ。フリィから言伝が有ったのを忘れておったわ。」


本当はマナカからの言伝じゃが、フリィからにしておけばフューズはきっと全力で動くに違いないからのう。


「これから各都市で少なくない小火騒ぎが起こると思われるので、火消しは任せる、とのことじゃ。何の事かは、分かるであろう?」


まったく、マナカには呆れるばかりじゃ。

一国の王を扱き使おうというのじゃからな。


裏組織を潰して回れば、それと繋がっている商人や貴族共が煽りを喰らうだろう。


それら不正を行っている者共を、しかと裁けと、言っているのだ。


『…………承知した。まったく、マナカには敵わんな。』


フューズも真意に気付いたようだ。


裏で犯罪に手を染めている輩を寄越してやるから、良いように裁いて国を浄化しろ、と。


これで、先の動乱での粛清から逃れた貴族共も、それ以外の者達も、不正を行った者達は尽く法の下で等しく裁かれることになる。


王は自らは痛みも無く(多少の人手不足には陥るだろうが)、国に巣食う病巣を取り除き、信有る者を取り立てられるだろう。


「また、更に忙しくなりそうじゃのう、陛下?」


ワシなど所領はたかだか辺境の一領のみじゃ。

だが、フューズは、王国全土を見据えねばならんからの。


『まったくだ。どうだマークよ。余は体調を崩して、マナカの所で療養することにする故、代王として城で働かんか?』


「馬鹿を言うな!誰が王などという、七面倒臭い損な役を引き受けるか!王家に生まれた己を恨むが良いわ!」


戯けた事を抜かすでないわ!

まったく……


『なあマークよ。余らは、無力であるな……』


なんじゃ、藪から棒に。


「ワシらの無力さなど、散々に思い知らされてきたであろう?マナカが現れる前から、そんなことは分かっていただろうに。」


貴族共の横行は、ずっと以前より悪化していた。


子の矯正に失敗し、継承しあぐねていたフューズにも一因は有ろうが、予想よりも遥かに、王家を蔑ろにする貴族が増えていた。


それが、王の真意も慮ることなく、王子達を担ぎ上げての先の継承争いに発展させたのだ。


ワシも王都から辺境(ここ)に飛ばされ、手助けしたくとも出来なかったしな。


『分かっておる。先日な、ユリウスが土産を持って帰って来たのだ。学友と立ち寄った店で、持ち帰りで沢山のケーキを買って来おった。夕餉の際にそれを出され、余は酷く驚いたぞ。』


ユリウスか。

聞けば素行が悪く、学園のみならず都の街でも幅を効かせておったそうだが……


『マナカに檄を飛ばされてから、取り巻きと自ら距離を置いているようだ。その学友というのも、どうも平民らしいしな。』


……信じられんな。

フリィも幾度と無く諌めたらしいが、まったく聞く耳を持たずに、余計に反発したらしいが。


『その変わりように興味を引かれてな、訊いてみたのよ。何ぞ有ったのか、と。』


それはワシも気になるのう。

一体何を思えば、そのように変わるというんじゃ?


『そしたらな。いやあ、笑ってしまったぞ。ユリウスめ、マナカに師事し【軍神】を超えると抜かしよったわ!それも真っ直ぐに、余の目を見据えてだぞ?』


なんじゃと!?

知らん間にワシ、狙われとる!?


「お主……それで、ユリウスに何と言ったのじゃ?」


『知れたことよ!大いに励んで、あのジジイを黙らせてやれと、言ってやったわ!』


こんのっ……!!

楽しそうに喋りおって……


『フリィからユリウスと話したとは聞いてはいたが、幼い頃のあ奴を見ている気分だったぞ。あんなにも瞳を輝かせて、真っ直ぐに余の顔を見てなぁ……不覚にも、涙が溢れそうになったわ。』


「そうか……持ち直したのだな。本当に、マナカには敵わん。」


『まったくよ。王としても父としても、立つ瀬が無いな。なればこそ、せめて彼の期待を裏切らぬよう立ち回ってみせよう。』


あ奴はどれだけのモノをワシらに与えれば気が済むのじゃ。


民の救済に、孤児の保護。

元王太子を処刑の運命から救い、第3王子を更生させ。


それでも飽き足らず、国に巣食う裏組織やそれに連なる悪人共を一掃すると言う。


ワシらはそれらの結果を貰うだけ。


多少の事後処理など、些事でしかない。


「益々退位が遠のいたな。どうじゃ、ここは諦めて、マナカが寄越した霊薬(エリクサー)を飲んで若返ってしまえばよかろうに。」


『馬鹿を申せ!そんなことをしては、死ぬまで扱き使われてしまうわ!余は、退位後は妻と共に緩やかに老いていきたいのだ。そのためならば、徹夜の1日や2日、どうということはない!』


いや、その歳でそんな無茶すれば、身体壊すぞ?

というか、徹夜は決定なのかよ。


「お主こそ馬鹿を言うな。その身は国のため、民のために在るのだ。努々、大事無いようにせよ。心を配る家族やワシらが居ること、忘れるなよ?」


『ああ、分かっているさ、友よ。お主にも度々苦労を掛けるな。済まん。』


分かっているのならば良いのだ。

ワシに出来ることなどたかが知れているだろうが、些細なことなどは任せておくが良い。


武威でも権威でも何でも使って、お主の障害を取り除いてみせよう。


『時にマークよ。』


あん?

まだ何か有るのか……?


『仕事が全然終わらんのだが……やはりお主、代王やらんか?』


「断固拒否するわ!というか、だったらこんな無駄話しとらんと、さっさとやれい!もう切るぞ!?」


『ああっ!?ちょっ――――』


これ以上話しても碌なことを言わんじゃろ。

無理矢理切ってやったわ。


しっかし、このダミーコアは便利だのう。

通信用の術具と違って魔力も最初に込めるだけだし、それも大した量ではない。


どんな距離でも制限無く繋がるというのも、素晴らしい点だ。

しかもその時々の現地の光景を、浮かび上がらせることも可能なのだから、誰でも欲する物だろう。


そのダミーコアを贈与されたのは、未だ僅かに3人のみ。


王であるフューズと、王女のフリィ、そしてワシじゃ。


それぞれ専用のダミーコアを貰い、魔力を登録してあるため、他人が手にしても効果を発揮することはない。


何より、遠く離れた友と、このように顔を観ながら馬鹿な話ができるのだ。

商人や下級貴族の、機嫌伺いのどんな献上品よりも、嬉しい贈り物だ。


たとえ話すだけでも、愚痴を聞いてやるだけでも、フューズにとっては力になるであろうからな。


マナカよ。

フューズと同じく、ワシも力の及ぶ限り手を貸そうぞ。


ただ、なんと言うか……


事を起こすのは少しずつにしてもらいたいものだ。


うん、フューズじゃないが、仕事が終わらん。


しかも今日はあ奴の愚痴に付き合ったせいで、大分時間も浪費してしまっているし。


これ、朝までに終わるかのう?

というか、寝る時間が残ると良いのだが……


まったくマナカめ。

この歳になると、徹夜は本当にキツイんじゃからな!?




~ 王都ユーフェミア ブレスガイア城 執務室 ~


《フューレンス国王視点》



「あ、こら!?もしもーし!?……マークめ、本当に切りよったな!?」


あ奴め。

如何に親友であろうと、余は国王だぞ?

もうちょっとくらい、愚痴を聞いてくれても良いではないか。


マナカから譲り受けたダミーコアを、執務机の上の台座に安置する。


折角映像のやり取りが出来るというのに、フリィはギルドの使者の一件以降、音声しか伝えて来ぬし。


娘よ。

父は寂しいぞ。


マナカの邸宅に移り住んでから早ひと月程経つのだし……


もしや何らかの進展が有ったのではあるまいな!?


いや、余としてもマナカならと思う気持ちも無きにしも非ずなのだが、それとこれとは話が違うのだ!


うむむむむ……

本格的に、シュバルツの手を借りねばならんやもしれんな。


まあ、何はともあれだ。


執務机に堆く積もった報告書の山を見やる。


「はぁ……」


今日も睡眠は満足に取ることは、出来そうにないな。


マナカと知り合ってから、明らかに王家の権威は盛り返してきておる。

大臣達が良いように差配していた案件にも、梃入れすることが出来るようにもなったしな。


それは良い。

良いのだが……


毎日毎日、何をすればこんなにも報告書が積み上がるのやら。


現在王国では、第2弾の移民計画を進行中だ。

すでに公布も済み、護衛隊の選任や物資の確保も済んでいるが、肝心の移民が揃わない。


各領の移民を希望する民達を、領主の貴族達が手放さないからだ。


挙げ句自領内での新たな開拓案なんぞも上申してくる始末だ。


お主らの統治に問題が無ければ、民は出て行こうとはせぬだろうに、そんなことも分からずに目先の税収の加減に囚われる。


まったく嘆かわしい。


建国の父王や、高き志でそれと共に立った祖霊に申し訳ないと思わぬのか。


いや……

余が言えた事でも無いか。


子の教育に失敗し、正しき後継者を育てられなかった余に、彼等を非難する権利は無いかもしれん。


だが、余はあの男――マナカに救われたのだ。


処刑を待つばかりであった愚息(ウィリアム)の命を救い。

嘆きながら、血に塗れながら民を救おうと奔走していた愛娘(フリオール)に道と、羽を休めることを教え。

常に兄姉らと比較され歪んでしまった三男(ユリウス)に目標を持たせ正し。

独り違う見た目で苦しみ塞ぎ込んでいた末子(ミケーネ)に、誇りという光を与えた。


余の宝を、家族を救ってくれたのだ。


この恩には、何を置いても報いなければなるまい。


それはそうとして、だ。


「はぁ……」


やはり、積み上げられた書類を見ると溜息が漏れる。


いっそ本当に、床に臥せったことにして、療養の名目でマナカの街に行ってしまおうか。


王都より余程住み心地良さそうだったしなぁ……


だがそこまで甘えてしまっては、いよいよフリィの将来が固まってしまうやもしれんな!?


それはいかん!

まだ早い!

まだ早いぞフリィよ!?


そんな風に懊悩としながら、書類の山と格闘するいつもの夜は更けていったのだ。






最近後書きで遊び過ぎているせいか、何を書いていいやら状態です(笑)


乱文にもかかわらず、いつも読んで下さり、ありがとうございます。


増えるアクセスや評価、ブクマには本当に励まされています。


できれば、感想で読者様の声を聞かせていただけると、有難いです。


これからも、拙い文ではありますが、今作品とお付き合いください。


テケリ・リ


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