閑話 竜殺しの優しい一日。
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これだけの数の読者様に読んでいただけて、光栄ですし、とても嬉しいです。
まだまだ頑張って書こう、とやる気が上がりますね!
これからも応援よろしくお願いします。
評価、感想もいつでもお待ちしております。
もちろん、ブクマしていただけたら凄く嬉しいです!
それでは、閑話その④です。
お楽しみください。
m(*._.)m
〜 ダンジョン都市【幸福の揺籃】 〜
《Aランク冒険者 ダージル視点》
今日は、待ちに待った退院の日だ。
あの男の迷宮に挑み、重傷を負って救出されてから9日。
最初は迷宮で捕らえた者達を収監する施設で治療されていたが、パーティーメンバー達の身体が癒えてからは、この都市の医療院へと俺は移されて、安静にさせられていた。
いや、傷自体は俺もあの収容施設で癒えてはいたんだが、目覚めた様子を見に来たシェリーと何やかや有って……その、無理が祟ってまた倒れちまったんだ。
はい。
シェリーと付き合うことになりました。
まさかシェリーが俺に想いを寄せていたなんて、まったく気付かなかったぜ。
確かに今思い返せば、何か言いたそうにしていたり、俺のことを観ていることが多かったりしていたように思うけどな。
同じメンバーの女性のミュゼからは、しっかり守れ、大切にしろと怖い顔で迫られ、男のメンバー達(特にロイド)からは、祝福されてるんだか揶揄われてるんだか分からない扱いを受けた(まあ、ブライアンは相変わらず喋ってなかったが)。
まあ何にしろ、都市の医療院に留まって、退屈な療養生活を送って居たんだが、今日ようやく解放されるのだ。
付き合い始めたシェリーはとても甲斐甲斐しく、毎日俺に付き添ってくれていた。
まあ、退屈で身体を動かしたかった俺の監視役って感じだったけどな。
入院中の運動は、日に決まった時間だけ、専用の術具を使って行われているだけだった。
なんでも、【リハビリテーション】と云うらしい。
マナカの配下の、人型で喋れる魔物達(人狼や人猫、夢魔など)に、その場で歩き続ける術具や、脚や腕に負荷を掛けて動かす術具などの説明を受けながら、鈍った身体を回復させるように動かすのみだ。
外に出て剣を振りたいと言ってみたら、すぐさまシェリーを呼ばれて説教されたな。
だが、そんな窮屈な日々も今日までだ。
まだ本調子には程遠いだろうが、すぐに勘を取り戻して、迷宮の続きを攻略してやる。
「はぁ!?アンタ、何言ってるのよ!?」
怒られた……
退院を目の前にして、俺の荷物を運ぶのを手伝うために来たシェリーに詰め寄られる。
「いや、もう身体は大丈夫なんだし、鈍りを解したら攻略を――――」
「あのね、アンタ最初の滞在申請で期間を1週間にしてたでしょ?【滞在カード】の有効期限はもう切れちゃってるのよ?私達は既にもうひと月延長の手続きを終えてるけど、アンタのはまだ仮なの。退院したら正式に申請しろって言われてるんだから、迷宮のことより、そっちが優先よ!」
なんか、付き合い出してから遠慮が無くなったよな。
まあ、変に構えられるよりはよっぽど良いけど。
そういうことならしょうがないか。
期限を過ぎての不法な滞在は、処罰の対象になるってマナカも注意してたもんな。
仲間達が泊まっている宿に荷物を移したら、早速役所に申請に行かなきゃな。
そんなこんなで宿に着いた俺は、仲間達に揉みくちゃにされた。
それをなんとか治め、宿の1階の食堂で昼食を摂ってから、役所に申請をするために再びシェリーと共に街へと繰り出した。
久々に食べた外の飯は、美味かったな。
いや、医療院で出される食事も美味かったんだが、基本濃い味付けの物は無くて、量も控えめだったからな。
身体には善いんだろうが、正直物足りなかったんだよ。
さて役所に着いたが、どうすれば良いんだ?
「外部から来た人は、基本的にはあっちの観光課で対応してくれるわよ」
すでに手続きを経験しているシェリーが案内してくれる。
観光課と天井から吊るされた看板の一角へと向かう。
「冒険者パーティー【火竜の逆鱗】だけど、リーダーが退院したから、滞在期限の延長を申請に来たわ。」
シェリーが窓口で、受付の役員にそう伝える。
「はい。【火竜の逆鱗】リーダーの、ダージルさんですね。退院おめでとうございます。ご無事で何よりです。」
この役所――政庁舎で働くのは、殆どが王都からの生え抜きで、中には王宮で内政に携わっていた者も居るらしい。
「あ、ああ。ありがとう。仲間が仮の申請をしてくれたらしいが、今日は正式に申請しに来た。よろしく頼む。」
思わぬ好意的な出迎えに戸惑いながらも、やり取りをシェリーから引き継ぐ。
「それでは、早速手続きをしましょうか。滞在カードと、冒険者証をお預かりしますね。」
指示に従って2枚のカードを差し出す。
1枚は、俺の冒険者としての身分を証明するギルドカード。
もう1枚は、この街に入る際に配られるこの都市での身分証兼通行証の、滞在カードだ。
「ありがとうございます。…………はい、確認出来ました。まずは冒険者証をお返ししますね。」
戻されたギルドカードを懐に仕舞い、手続きを進める。
受付の役人は、手元の資料をパラパラ捲りながら。
「お仲間の皆さんは、ひと月の延長を申請なさっていますが、ダージルさんも同じでよろしいですか?」
「ああ、それでいい。」
「かしこまりました。それでは此方の申請用紙に必要事項を記入してください。お名前と、年齢、ご職業、滞在目的と、希望の期間ですね。…………はい、結構です。」
説明に従って、用紙にペンを走らせる。
羊皮紙ではない恐らくは植物紙だろうが、恐ろしく滑らかな書き心地の紙だ。
ペンもインクに浸す必要も無く、次々と文字が書けるな。
「ああ、皆さん驚かれますね。その紙もペンも、街の創造主殿が齎した物です。なんでも【コート紙】と【ボールペン】と云うらしいですよ。あのお方の故郷では、ありふれた物らしいです。」
入場の時は口頭での申請と、カードの登録だけだったからな。
商人とか欲しがりそうだな、こんなの。
「そうですね。実際訪れた商人などは、この街独自の物を仕入れて売りたいと仰ってます。ですがこれらは飽くまで創造主殿が創った物で、この街の生産品ではありませんから。いずれ作れるようになるまでは、何方様にもお待ちいただいております。」
なるほどな。
いつになるかは見当も付かないが、これらの品を街で作れるようになれば、特産品として売りに出すってことか。
素行の悪い悪徳商人なんかは入場審査で弾かれているからな。
この街に来れるのは善良な、言い方は悪いが聞き分けの良い商人ばかりだから、大人しく待ってくれてるって訳か。
「はい、これで書類は大丈夫ですね。それでは延長手数料を……と言いたいところですが、既にお仲間の皆さんに一括でお支払い頂いておりますので、あとはカードの更新となります。」
そう話し、受付のカウンターに術具が置かれる。
カードの登録時にも使用した術具だ。
その術具に、期限の切れた俺の滞在カードがセットされ、魔力を注ぐように指示される。
カードの更新中に、滞在カードについて詳しく話を聞かせてもらった。
「滞在期限の一度で申請出来る上限は、3ヶ月までです。また連続で長期の申請をされる場合は、別途審査がございます。
今回のダージルさんのように、入院されて申請が出来なくても、身元を保証できるお仲間が仮申請さえしてくだされば、罰則の対象にはなりません。
但し、例えば迷宮から出て来られずに、お仲間全員で期限を超過してしまいますと、その限りではありませんので、ご注意ください。
罰則に関しては、超過した1日毎に罰則金が累積されます。
職業毎に罰則金が定められていて、冒険者の方ですと、1日当たり銀貨3枚ですね。
1週間を超えると5枚になり、1ヶ月では小金貨5枚になります。
また悪質な不法滞在や、罰則金が払えない場合は、捕縛の対象になってしまいます。
滞在中の行動を精査されて、軽いもので労役、重いものだと奴隷落ちにもなりますので、ご注意くださいね。
滞在期限の延長手数料は、その期間に応じて変わります。
今回のひと月ですと、銀貨5枚を手数料として頂いております。」
ふむ。
要は期限を守って、悪い事をするなってことだな。
「だがそれだと、最初から最長の3ヶ月とか申請する奴が増えるんじゃないか?滞在経験者が外で言い触らすのは、止められないだろ?」
まあ素人の浅知恵だが、最長の3ヶ月の申請を繰り返せば、実質居座り続けることが出来るんじゃないか?
「それを踏まえて、入場の際に申請できる最長の期限は、1ヶ月までと規定しています。
審査時には性向もチェックされますから、数値の悪い人物はそもそもお断りしますし、怪しい人物には極秘裏に監視も付きますので。
どうしてもと長期滞在を望まれる方には、事情をお聞きして、滞在ではなく住民となることをお勧めしますね。
その際は、専門の担当官が面接を行うことになりますが。」
なるほどなぁ。
良く考えていやがる。
まあ、【軍神】の砦の転移施設からしか入れないからこそ可能な体制って感じだな。
そうこう話しているうちに、術具が停まった。
「お待たせしました。こちらが更新された滞在カードです。紛失には、くれぐれもお気を付けください。」
「ああ。世話になったな。」
そう言ってカウンターから離れる。
シェリーは待っている間、待合ロビーと書かれた看板の区画で、テーブルでお茶を飲んでいた。
「悪い、待たせたな。」
「良いのよ。ダージルもお茶飲む?」
「いや、俺はいいかな。茶よりも、久し振りに酒を飲みたい気分だ。」
入院中は一切酒は飲めなかったからな。
「そう言うと思ったわ。それじゃ、みんなの所に戻りましょ。」
そう言ってカップを返却して、俺に並んで歩き出すシェリー。
う、ううむ……
いや、付き合ってるんだから、腕を組むのは吝かではないんだが……
今まで戦う仲間と思ってきた女とこうするのは、違和感があるな……
「なによ、イヤなの?」
シェリーが、腕を組んだまま不機嫌そうな顔で見上げてくる。
「そういう訳じゃないが、気恥ずかしくてな。まあ、慣れるまでぎこちないかもしれんが、嫌ではないぞ。」
絞り出すように口にするが、これは本心だ。
それはどうやら伝わってくれたみたいで、シェリーの顔から険が取れる。
人付き合いが苦手な俺のことを、ちゃんと理解してくれている。
そう思うと、彼女のことをとても得難い人物と感じるな。
大事にするからな。
何をどうしたら良いかは、よく分かってないが。
まあ、困ったらミュゼに相談に乗ってもらうか。
彼女はシェリーを姉のように慕っているからな。
ロイドは駄目だ。
揶揄うだけ揶揄って終わりになるのが目に見えてる。
僧侶のコリーなんかは、適任だと思って一度相談してみたんだが……
何やら遠い目をして落ち込んでいたからなぁ。
それ以上はとても相談出来なかった。
ひとつだけ、『貴方の良いと思うことが、彼女にとっても良いことだとは限らない』と助言をくれたが……感謝だけして、余計なことは言わないでおこう。
あちこちの露店や商店を冷やかして回りながら宿へと戻り、仲間達と合流する。
「それじゃあ、リーダーの退院祝いに、今日はパーッと飲もうか!」
「宿の主人に、昼間でも飲める店を聞いておいたぜ。その中でもオススメの店を、すでに取ってあるからよ!」
シェリーの妹分のミュゼと、悪友のロイドがそう宣言する。
準備が良いなお前ら!?
さては俺が行くって言わなくても連れ出す気だったな!?
「皆、心配していましたからね。さあ、行きましょう。」
「(コクコク!)」
「いや、喋れよ!?退院の祝いも頷くだけだったじゃねえか!?」
「ほらほら、行きましょう!」
和気藹々と、連れ立って街を歩く。
まだ住民が少ないせいもあって、賑わいと言うには少し寂しい宿場通りや飲食店街だが、菓子屋や軽食屋、飲み屋など、主人が定まった店は競うように客を呼び込んでいる。
そんな中で一際賑わいを見せている店に辿り着く。
店の名前は【狐の尻尾亭】。
1階は飛び入り用のオープンなテーブル席が並び、2階に要予約の個室の部屋が並ぶ。
個室も少人数用から団体用と幅広く揃えられており、俺達は人猫の店員の案内で、2階の大部屋へと通された。
「それでは、ご注文が決まりましたら、お手元のボタンでお呼びくださいニャ♪」
人化しているんだろうが、猫の獣人と何ら変わらない感じだな。
そんなワーキャットの店員は、笑顔を振り撒いてから部屋を出て行った。
「おうダージル!この店のエールは絶品らしいぜ?キンキンに冷えてて美味いんだってよ!」
「『最初の乾杯にオススメ!』と書いてありますね。」
「それじゃあ、その生ビール?ってヤツにしてみるか。それと、ツマミを適当に頼めば良いよな?」
「アタイはそれでいいよ!」
「私も、そんなに美味しいなら飲んでみたいわ。」
「(コクコク!)」
それじゃあ早速、とボタンと云われた丸い突起のある術具らしき物に手を伸ばした、その時である。
部屋の扉がノックされ、先程のワーキャットの店員の声が聴こえた。
「失礼しますニャ。当店のオーナーが、是非【火竜の逆鱗】の皆様にご挨拶を、と申しておりますニャ。お通ししてもよろしいですかニャ?」
その言葉に俺は仲間達を見回すが、誰も嫌そうな顔をしていなかったので、了承した。
ついでに、人数分の生ビールと、ツマミをオススメの物を適当に作って貰えるよう注文した。
「はい、かしこまりましたニャ♪では、オーナーを呼んで参りますので、少々お待ちくださいニャ♪」
尻尾をフリフリしながらペコリとおじぎをして、ワーキャット――【ブチ】と胸のプレートに書いてあったが、名前なのだろうか?――は退室した。
暫し待っていると、再びノックされる。
しかし、俺達の返事も待たずに勢いよく引き戸が開かれ――――
「おっす、ダージル!退院おめでとさん!」
…………なんでお前が此処に居やがる?
扉を開けて姿を現したのは、俺達をこの都市に招いた男。
この迷宮の主である、マナカだった。
「おうおう、いい顔で驚いてらぁ。サプライズ成功だな!みんなも演技ご苦労さん!」
なんだと?
慌てて仲間達を見回すと、みんな一様にニヤニヤしてやがる。
は、嵌めやがったな!?
「どう、リーダー?吃驚したでしょ?!」
「退院祝いに何かしようって話し合ってたら、マナカさんが企画してくれたのよ。」
「おい見たかよあのダージルの呆けた顔!やべえウケるっ!」
「(ぷぷぷ……っ)」
「これでも控え目にしたんですよ?最初は襲って拉致しようって計画でしたから。」
なんだよ……
嬉しいじゃねえかよ……
思わず目頭が熱くなっちまう。
ってか、ブライアンは笑う時くらい声を出しやがれ!
あと拉致ってなんだよ!?
一体何をされるところだったんだ、俺は!?
「はいはい、ドッキリ大成功ってことで、みんな入っておいでー!」
マナカはマナカで勝手に進めやがるし!
マナカに呼ばれた仲間達が、ゾロゾロと部屋に入ってくる。
皆、それぞれの手に飲み物のグラスやジョッキ(と云うらしい。後で聞いた)を持っているな。
あ?
ふ、フリオール殿下まで!?
さっきのワーキャットの店員が、これは俺達の分か?
同じく黄金色のエールが注がれたジョッキを配る。
「よーし。みんな座ったな?今日はもうあと2人、誘ってるヤツが居るから紹介するぞ?おーい!」
「はぁ〜い♡」
マナカの呼び掛けに、部屋の外から野太い声が聴こえた。
あれ、なんだろう?
何故か身体が勝手に臨戦態勢をとってるんだが……
「紹介しよう!冒険者ギルド、ユーフェミア王国ブリンクス支部、支部長!コルソンこと、コリーちゃんだぁー!!」
「はあい、コルソンよん♪親しみを込めて、コリーちゃん♡って呼んでねん♡」
「続きまして、同支部の受付嬢で、コリーちゃんの制御役!フィーアさんだあああ!!」
「はは、初めまちて!ふふフィーアと申しましゅ!?」
は?
え?
ブリンクス支部のコルソンって……
「げぇーっ!?【破壊神】っ!!??」
「なんで元Sランク冒険者が!!??」
色んな意味で絶叫が上がる。
これは仲間達も知らなかったらしく、全員立ち上がって驚愕している。
「コリーちゃんとは、ついこの間知り合って友達になったんだよ。今は俺の次の目標に向けて協力してくれてるんだ。それで、ダージルの快気祝いだって言ったら、是非参加したいって言ってくれてな?サプライズゲストとしてお招きしたってわけ。」
マナカが事情を説明してくれるが、正直信じられねぇ。
あの【生ける伝説】とも、【悪人殺し】とも言われた怪物が……
「な、なあコルソン……さん?」
「コリーちゃん♡」
「は?」
「コリーちゃんって呼んでくれないと、イ・ヤ♡」
「ゴフッ!?」
よ、呼び方ひとつで大ダメージだとぉ!?
こ、これが、Sランクって奴か……!
「いえあの……私もコリーなので、出来ればコルソンさんと……」
「コリーちゃんって呼んでくれないと、プンプンだぞぉ?」
「がふっ……!!??」
こ、コリイイイイイイイっ!!??
大丈夫か!?
気をしっかり持つんだ!!
ってマナカこらテメェ!?
腹抱えて笑ってるんじゃねえよ!?
助けろよっ!?
「いやあ〜!!みんな最高のリアクションだわ!超面白い!」
「こら、マナカきゅん?あんまり人で遊んでると、メッ☆だぞ♡」
「げぶぉはあっ!!??」
ざまあみやがれ!
自分で呼んだ刺客に殺られるなんざ、マヌケなヤロウだ!
「あーもう!話が進まんではないか!?マナカ!仕切るならちゃんと仕切れ!コリーちゃんも席に着いてくれ!それから、フィーア殿もそんな誰からも注目されなかったからってイジけないでくれ!?」
地獄絵図になり掛かっていたが、なんとかフリオール殿下が場を正してくれたぜ。
っていうか殿下もコリーちゃんって呼ぶんだな。
コリーは……ダメだな。
置いておこう。
「あー、ごめんごめん。久し振りに元気なダージルを弄れると思うと、嬉しくてさ。」
やめろコノヤロウ。
俺はテメェのオモチャじゃねぇ!!
「さておき!料理も冷めちゃうし、酒も温くなっちまうからな。乾杯しよう!みんな、飲み物は持ったかー?!」
思い思いにグラスやジョッキを掲げる。
俺も生ビールと云う、黄金色のエールが泡を湛えたジョッキを手に持った。
「それじゃあ、始めるぞ?死に損ない鈍感リーダーと、奥手弓士の交際開始を祝して!!!」
な!?
ちょっと待て!?
何言ってやがるテメェ!?
シェリーも真っ赤になってないで反論しろよ!?
「あとついでに退院おめでとうございます。かんぱーい!!!」
「「「「かんぱーいっ!!!」」」」
快気祝いついでじゃねえかああああああっ!!??
って、美味えなこの生ビールってやつ!?
キンキンに冷えたキレのある喉越しが最高だ!
「ぷはあっ!!こうなりゃヤケだ!お代わり寄越しやがれ!!」
「いいぞぉダージル!!ブチー!生一丁ぉ!!」
「喜んで〜ニャン♪」
「ブチよ、儂にも生追加じゃ!」
「はいですニャン♪」
……あのワーキャット、良く働くなぁ。
既に俺らの部屋の専属給仕みたいになっちまってるけど。
「おい、マナカ。あのブチって娘、此処に拘束しちまってて良いのか?」
心配になってつい聞いてみたが、マナカは相変わらず悪戯が成功したような顔で。
「うん、まったく問題無しだよ。だって、此処俺の店だもん。」
はあっ!?
ちょ、自分の店を、態々俺のために?!
「ついでに言うと、今日は俺らの貸切な。下の階も客が帰り次第飾り付けするし。お前の快気祝いと交際祝いだから盛大にやらなきゃな。お?どーしたダージルぅー?感動した?感動して泣いちゃうぅ??」
「ううううっせえバカヤロー!か、感動なんか、し、してねえし!?」
「こら!バカダージル!祝ってくれてるんだから、素直にお礼言いなさいよ!?」
「やーだー♡2人ともアツアツじゃなぁい♡」
「おわっ!?急に出てくんなよコリーちゃん!?」
このヤロウは……
魔族のくせに、ほんっとに人間臭くて。
大変な立場のくせに、いっつも楽しそうで。
気付くと、いつも周りが巻き込まれて、大騒ぎになってる。
いつも騒いで、怒られて、でもまた騒いで。
いつの間にかみんな笑顔になっている。
すでに違和感も無いんだが、ワーキャットのブチもいつの間にか一緒に飲まされてるし。
ていうか医療院でも思ったけど、人猫も人狼も夢魔も、みんな魔物だよな!?
あ、人手不足の解消に?
人型魔物を産み出したの?
知能も高いから普通に仕事覚えて便利と……
へー、そうなんだー。
もう、いいかな。
俺、ツッコむの、疲れちまったよ……
ってヤバい!?
こ、コリーちゃんとシュラが飲み比べを始めやがった!?
って、マナカよせ、やめろ!
こっち見んな、来んなあああああっ!!
いやああああああっ!?
つ、つぶされるううううううううう!!??
ダージルさんがようやく退院しました。
そして相変わらず真日さんに絡まれます。
さらにコリーちゃんまで……
強く生きてください。
さて、次回の閑話で、この間章もお終いになります。
次回は……お馴染みの、アレですね。
みんな大好きな、あの幼女がやって来ますよ〜!
お楽しみに!




