ぱーふぇくと★りーむ
トールがドーガンの侵略船にレールガンを向けた時、船から機動兵器が一機発進するのが見えた。
その一機は亜空間ジャンプを繰り返しながら、真っすぐこちらに向かって来る。
「気付かれましたね」
「勘のいい奴がいたみてぇだな」
やがてその機体はトールの前に現れた。
赤い装甲で一本角のそれはトールを指差し声を上げた。
『貴様が俺の夢を邪魔する地球人だな!?』
『夢?夢ってなんだよ?』
『貴様が知る必要は無い!』
そう言うと機体は一瞬で掻き消え、次の瞬間にはギガンティックに光る剣を振るった。
トールは咄嗟にレールガンを突き出すが、光る剣はレールガンを断ち切り、勢いのままギガンティックに迫る。
「チッ」
舌打ちをしつつ、トールはギガンティックを操作しレールガンを投げ捨てると右腕を振った。
上腕の内側に装備されたフォトンブレードを握らせ相手の剣を受け止る。
投げ捨てたレールガンも切られた破片も、リームが作り出した亜空間の中に消える。
『貴様の目的はなんだ!?』
『さっきから質問ばかりしやがって、それこそお前ぇが知る必要はねぇよ!!』
打ち合わされた光の刃が放電現象に似た光を発生させる。
「リーム侵略船は!?」
「現在、機体が発進した船は止まっています。もう一隻は逃走を続けています」
「逃げてる奴はディガーラに追わせろ!」
「分かりました」
「あと、アクセレーター起動だ!」
「了解」
トールは勝負を決めるべく、自身のアクセレーターを起動した。
それに合わせリームがギガンティックのモードを超高速戦闘モードに切り替える。
「モード変更、限界活動時間、モニターに表示します」
「おう!」
赤い機体の動きが、急速に遅くなり最終的には、ほぼ動かなくなる。
トールはその動かなくなった機体の前で剣を振り上げた。
「あばよ」
一言呟き、剣を振り下ろす。
しかし、赤い機体は振り下ろされた剣をシッカリと受け止めた。
「何!?」
『アクセレーターか……』
『まさか、お前も?』
『フンッ、思考の高速化はそれ程珍しい技術では無い』
ドーガンはプレイヤーとして上に上がる為、自分の肉体を作り変えていた。
この行為は勿論フェアではないが、彼は目的の為なら手段は選ばないタイプ、所謂チーターだった。
さらに、今彼が操っている機体、機動兵器型のアバターは制限を設けずギリギリまで性能を上げてある。
『……なるほど、んじゃ後はパイロットの腕次第って訳だ』
『舐めるなよ。俺はリムダ戦線のエースだ!』
赤い機体、クラウフールは剣を振るい弾き飛ばしたギガンティックに、左腕を突き出す。
上腕部に装備された回転式の砲身から、粒子弾がばら撒かれる。
ギガンティックの周囲に張られたシールドが、粒子弾により激しく発光する。
「クッ、リーム銃だ!」
「ありませんよ」
「何!?何でだ!?俺ギガンティック用に一杯造ったじゃん!!」
「あれらは超高速戦闘用には作られていませんので、トリガーを引いてもタマが出るまでに体感時間で数十秒かかります」
「あ……」
ギガンティックの超高速戦闘限界まで、のこり体感時間で三分。
「くそぉ……」
「トールはいつもツメが甘いですね」
「気付いていたんなら言えよ!!」
「……私のいう事を聞いて、少しは倉庫の中身を整理するなら考えてあげます」
二人が話している間も、クラウフールは高笑いを上げながらギガンティックに粒子弾を撃ち込んでいる。
「……整理ってどの程度だ?」
「そうですね。最低でも三分の一位まで減らして欲しいですね」
「何だと!?そんな殺生な……せめて半分で許してくれよ……」
「四分の一……」
「てめぇ人の弱みに付け込んで!!」
リームは涼しい顔で口笛を吹いている。
残り二分。
「……分かった。三分の一でお願いします!!」
「フフッ、約束ですよ。……ではリームちゃん特製スペシャルハンドガンをどうぞ」
リームがコンソールを操作するとギガンティックの左手にシンプルなハンドガンが出現した。
「えー、ハンドガンって護身用じゃん。もっと大きくてゴテゴテした奴じゃないと映えないだけどぉ」
「トール、兵器に必要なのは敵を打ち倒し身を守る力です。要は性能、ゴテゴテした見た目など飾りです。偉い人にはそれが分からんのですよ!」
「……分かったよ。ちぇ、クライマックスっぽいのにハンドガンかよ。……えぐいねコレ」
トールはギガンティックのモニターに映し出されたリーム謹製のハンドガン“ぱーふぇくと★りーむ”の説明文を読んで少し引いた。
気を取り直して銃口を赤い機体に向ける。
残り一分。
『フハハッ!なんだその豆鉄砲は!?』
ドーガンはギガンティックが向けたハンドガンを見て、嘲笑を浮かべた。
ブランや重役連中は地球人を恐れていたようだが、宇宙戦争の時はこちらが本気を出す前に仕掛けられただけ、最初から手加減無しならグードが負ける筈が無い。
ドートンの操るクラウフールは、攻撃をしつつギガンティックから距離を取った。
背中に搭載された対艦用の巨大な高出力ランチャーを構える。
『跡形も無く消え去るがいい!!』
そう言って砲身をこちらに向けたクラウフールを見て、トールはリームに苦情を申し立てた。
「見ろよ!!やっぱあっちの方が絶対カッコいいじゃん!!」
「早く引き金を引いたらどうです?あと十五秒ぐらいですよ?」
「もう!!次は絶対俺が造った奴を使うからな!!」
「はいはい、倉庫を整理する約束、忘れないで下さいよ」
トールが引き金を引いたのと、ドーガンのクラウフールがランチャーを発射したのは同時だった。
ランチャーからは光の奔流が、ハンドガンからはパシュという音と共に黒い弾が射出される。
対角線上で結ばれた二つは、丁度機体同士の中間地点でぶつかり合った。
光の奔流に飲まれるかと思われた黒い弾だったが、弾は逆に光を飲み込みそのまま直進を続けた。
『何!?』
ドーガンの驚きをよそにランチャーに命中した弾は、そのまま機体の周囲を飛び回り徐々に機体を削っていく。
『なんだこの武器は!?』
ドーガンは未知の攻撃に困惑した。
「兵器とは突き詰めれば、誰が扱っても脅威を倒せればいいのです。それを実現したのが“ぱーふぇくと★りーむ”!!亜空間ゲートを発生させる弾丸がロックした相手を高速で追い続ける。つまり引き金さえ引けば誰でもどんな相手でも倒せる究極の銃なのです!!」
リームは拳を握り、自信をもって断言した。
彼女は言わなかったが、弾丸が削り取り飲み込んだ物はモーリアンの亜空間倉庫に送られる。
言わなかった理由は、彼女が急いで資材を減らしたかった理由に起因している。
そうやっている間に、クラウフールは弾丸に食われ、最終的に跡形も無くこの星から消えた。
「……映えないわぁ……俺、パイロットの腕次第とか言っちゃったのに……」
「バカですねぇトール、勝てばいいんですよ。何を使おうと」
「はぁ、それ完全に悪役のセリフじゃん」
ギガンティックのコックピットにトールのため息の音が静かに流れた。




