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闇の暗殺者と幼き少女。  作者: 博多っ子
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第40話《たった一つだけの国》

 キル・キラーの手刀よる連続攻撃がミル・サターナの頬をかすめる。勿論、最狂である彼に当たるわけはなく、全て見切られている。


「キル・キラーよ。お主に一つ質問するぞ。あと最愛の少女にも問いたい」

「戦闘中にお喋りとは……バカにしすぎだな」

「ならその攻撃をとめてから話そう」


 ミル・サターナは残像を残し迫ってくる手刀を掴み、いとも簡単に攻撃をとめる。そして言葉を続けた。


「では質問じゃ」

「ふん、むかつく爺さんだ」


 ミル・サターナは島の外の海に顔を向ける。


「あの海の向こうには何があると思う」

「ち!それを俺らに聞くのか」

「………………」


 その質問にキル・キラーは舌打ちし、最愛の少女はただ黙り込む。


「キル・キラーよ、お主はこの日本から出たことあるか?」

「……………ある」

「そこで何を見た。ぜひ、話をしてほしいもんじゃ」


 キル・キラーの手を離し海を見つめる。


「言わぬならワシから答えてやろう。よく聞け、この世は偽物の創りかけなのじゃ。海の向こうには何もない。どこまで行こうと地平線しかない。この場所以外に国も、島も、人類も、何もないんじゃ」


 その言葉に内田麻衣、中原侑也は理解出来なかった。最愛の少女とキル・キラーだけ険しい顔をし、戦闘モードを解除する。


「ジジイ!一体の何の話をしている!」


 声をあげる南の殺人凶。横では麻衣が彼の服をギュッと掴んでいる。


「何を困惑しているのじゃ、中原侑也」

「当たり前だ!いきなり何を言うかと思えばデタラメばかり言いやがって。僕は海外にも行ったがあるし、人も普通に生活していた!」

「ほー、どこに行ったんじゃ。人はどんな生活をしていた?」

「僕は………??………」

「なぜ言葉に詰まる?」

「なんだ……なぜ思い出せない」

「それは偽物の記憶だからじゃよ。東の殺人凶一族は随分前から皆を操作していた。影響を受けてないのはキル・キラー、リリーブラッド、シャドー、そしてワシのみ。あ、そうじゃった!政府の一部の人間も知っているのー」

「偽物の記憶だと?」

「そう『全ては』偽物なんじゃよ。女々とはそれを造り出す兵器。代々東の殺人凶が守ってきたこの世の偽りの産物。それを発動し続けるには最強、最愛、最幸の人物の力がいる。そのカギを握る人物こそ………」


 ミル・サターナは少し話の間をあけ、最愛の少女のもとへ歩み寄ってくる。


「最強であった古川千夏、最幸である内田麻衣、最愛である過去の亡霊、お前達じゃ。この3人の死んだ血から女々の涙は生まれる。ああ、最愛はもう死んでおったな。お前だけはあと血をいただくだけじゃ」


 最愛の少女とキル・キラーが構える。最狂の威圧を全身で受けながらお互いが睨み合う。


「さて、言いたいことは言い終えた。ワシの目の前にはすでに最愛と最幸がいる。まずは邪魔な最愛からいこうかのー」

「私の血は……高いわよ」

「俺の補助を頼むぞ、最愛」


 キル・キラーは一回時計を見て時間を確認する。


「時間がない。行くぞ最愛!」

「行きましょうキル・キラー!」

 


 ―――――


 ―――


 ――



 女々の涙、それは擬似的な記憶を生む心の抜け穴。

 女々の涙、これは三人の少女による血の形。

 女々の涙、あれは人間を弄ぶ世界の偽り。



 最愛は過去の少女。その善が亡霊となり再びこの世から目覚めた姿。

 最強は古川千夏。善とは逆である悪に侵された悲しい姿。

 最幸は内田麻衣。盲目になっても決して幸せを捨てなかった少女。



 三人の少女が死に血が繋がった時、女々は動きだし世界が揺れる。


 揺れる揺れるこの世界、全てが真実とは限りません。

 消える消えるこの世界、全てが現実とは限りません。

 変わる変わるこの世界、全ては何もないのかもしれません。


 この世は本当に………………実在しているのだろうか。



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