前編最終話《消える記憶》
一応ここで第一段階という事で終了します。まだまだキル・キラーや、千夏、ほかの殺人凶の事を書きたいんですがね。それとダークの妹の事も。
最終話で書いていた通りこれは完結といっても前編としての終了なのでいつかは分かりませんが後編の方も書いていきたいと思います。
では、中途半端な終わり方でしたが後編も見てやってくださいね(`∇´ゞ
「まさか…こんなことって」
古田の目の前には真っ二つになって死んでいるショウの姿、そしてシンによって殺された二人の男の絶命した姿。
「もう一人の奴はなかなか強かったな」
シンは改めて二人の死体に近づき静かに目をつぶる。
「ありえない!護衛達がこうも簡単に負けるなんて」
古田は懐から一丁の拳銃を抜き美沙やシンに向かい銃口を向けた。
「これ以上近付くな!誰に雇われたか知らないがここで手を引け!金ならいくらでもお前達にくれてやる!」
拳銃を持っている手が震え古田は初めて恐怖を覚えた。
「俺らの前で拳銃は脅しにもならないが…それにボスはボスなりに諦めも肝心だと思うが」
シンはそう言うと胸ポケットからタバコを取り出しマッチで火をつける。
「ぷはー、おい美沙、後はお前に任せる。俺は少し疲れた」
タバコを吸いながらシンは美沙に向かって言う。
そう言いタバコの煙をもう一回肺に注入しようとした瞬間、美沙はツカツカと歩きとシンの前に立ちはだかった。
「煙草は禁止って言ったでしょ!」
美沙はシンがくわえている煙草をすばやく奪いとり足で地面に擦りつける。
「お前はお母さんか!」
バラバラになった煙草を見つめながらシンはサングラスをはめなおす。
「あんた!今度煙草に手をだしたら私は知りませんよ」
「色んな意味で突っ込んでいいか俺」
美沙とシンの意味不明な会話を無視しながら古田はゆっくりと非常階段の方へ足を運ぶ。
「あんな馬鹿メンバーに殺されてたまるか」
古田が非常階段の扉に手をかざした瞬間、何やら赤い液体が目に飛び込んできた。
ぼとりと落ちたその肉の物体は古田の右腕だった。
肘から下が綺麗に切断され痛みを感じないほど、あまりにも一瞬な出来事であった。
古田は自分の床に落ちた腕を左手で慌てて拾う。
腕を見ながら唖然としている古田の目の前には長身の男が葉巻を加えながら立っている。
白い白銀の服がかすかにともる天井の明かりに反射している。
「ダーク・ミラーはここにいるのか?」
「はぁはぁ…貴様…何者だ!よくも私の腕を」
「…」
黙る白銀の男は古田の言葉を無視し目の前をそのまま通り過ぎる。
「消えろ」
ぼそりとそう呟いたと同時に古田の首がズルリと横にズレる。
「え?あ!……ぶ!」
口から血が流れ出し古田の首は徐々に傾いていった。
男はパチンと指を鳴らしそれと同時に古田の視界は消え首が地面にぼとりと落ちた。
「おい小娘。ダーク・ミラーはどこだ?」
「あなた…もしかして」
さきほどの古田の出来事はなかったかのようにそのまま美沙に歩み寄る。
「キル・キラー。なぜ貴様がここにいる」
美沙の目の前にシンが立ちはだかる。
「やっぱり、ねぇシン。キル・キラーって元西の殺人凶だった凶悪犯よね」
「あーそうだ。歴代殺人凶の中でもっとも腕が立つと言われている。今の西の殺人凶よりもいかれた野郎だ」
シンは両腕の指の骨をパキパキと鳴らし戦闘体制に入る。
「暗殺者…シンか。弱小な暗殺者と組んでいるとは聞いていたがまさか本当とはな」
シンの威嚇の殺気にキル・キラーはピタリと足を止めた。
「だーれーが弱小ですって」
「挑発に乗るな美沙」
頭から怒りの煙を出している美沙にシンは静かに頭に手を置く。
「まぁ、貴様らの事などどうでも良い。もう一度聞く。ダーク・ミラーはどこだ」
「知らないわよ。ダー君と私は別行動なの」
その言葉を聞きキル・キラーは《そうか…》と静かに呟き、この場を後にしようとする。
「ちょっと、待ちなさいよ!まだ話が……」
「五月蝿い《うるさい》」
闇は家来。
死は配下。
恐れは自分。
昔から頭に叩き込んできた言葉。
周りの空間が歪むような殺気を放つ。
美沙の体から汗が噴き出した。
《五月蝿い》
その一言で美沙に屈辱的な恐怖を与えた。
シンは黙って美沙を上から見つめている。
キル・キラーは再び後ろを振り向きそのまま去っていった。
恐怖の塊がいなくなったと同時に美沙はペタンとお尻を床につける。
「な…なんなのよ…あいつ…体の震えが…止まらない」
ガクガクと体を震わす美沙。まるで自分は小さなホコリのような存在に陥ってしまった。
「それが恐怖だ美沙。体に叩きこんどけ。ターゲットは死んだ。俺らの仕事は終わったんだよ」
「…うん。でもダー君が危ないよ」
「ほっとけ。ダーク・ミラーはお前より断然強い」
「そうだね…富凶レベルの私が口を挟む事じゃないね」
顔から垂れる汗がポツリと床に落ちる。まるで体が恐怖で泣いてるかのように。
……とある密室の部屋。
「いゃぁぁぁぁ!痛いよ!助けてよー」
椅子に縛り付けられ悲鳴をあげる少女。
隣には白衣の男が手に何かの液体が入った注射器を少女の腕に突き刺した。
その光景をモニターを通して一人の男が見ている。
ニコリと笑いながら男は囁いた。
「早く今までの記憶を無くし、本物の自分を取り戻してくれ。そうだろ……千夏」
今まで残っている記憶を薬で全て削除し、新たな知識をあたえる。
それが第一段階。
まずこれを成功させる。
実の娘を殺人の道具にするために。いや、全てに尽くすマシーンになってもらわなければ。
それがDの……いや、殺人凶としての願いであった。
腕から液体が注入されていく。
それと同時に激しい痛みが全体を駆け巡った。
少しではあったがダークとの思い出が徐々に頭から消えていく。
嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌!!
消えないで消えないで消えないで消えないで!!
お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん、忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたく………
「おにい…ちゃん。ごめん…ね」
思考はそこで止まった。
そのまま千夏は深い眠りについてしまった。
生きるって何だろう。
私ね、それがよく分からないの?
だって地球上の生物ってみーんないつかは死んじゃうじゃん。
植物も動物も…勿論人間だって。
私はなんのために産まれてきたのかな。
すごく疑問。
とても疑問。
そんな疑問だらけな私に誰か教えてよ!
生きるって……何?
死ぬって……何?
意識を失った千夏の頭の中は何を問いているのか?
必死に何かと闘っているのだろう。
まだ12歳と言う幼い少女はこの暗闇で一体何を思っているのであろうか。
その問いには誰も答える事がなく辺りに闇が包みこんでいった。
全ての記憶が消えた瞬間であった。
闇の暗殺者と幼き少女の思い出が綺麗に白紙になってしまった。
『前編《終》』
千夏
「変な前編の終わり方ね」
ダーク
「そういうな、作者も辛いだろうよ」
千夏
「せっかく私が悪になりかける場面だったのに」
ダーク
「お前が悪……弱そうだな」
千夏
「むきーー!!そんな事ないもん」