第二十八話《対決》
空挺レンジャー。
空からの攻撃を専門とした日本の自衛隊の中ではかなりキツい部類に値する。
古田の部下二人はその空挺レンジャーの中でもかなりの実績を誇っている。空を専門とする彼らだが地上の戦いもきっちり頭にたたきこまれているため彼らにぬかりはない。自衛隊の武器は何も銃、戦車、戦闘機のような火器だけではない。徒手格闘という殺しの技も全員基礎は頭に叩きこまれているのだ。
そして彼らは空挺レンジャーであって空挺レンジャーではない。元空挺レンジャーの隊員である。
「古田様」
一人の男が古田に向かい言う。
「今日はなぜか嫌な予感がします」
「俺も同じ事を考えてました」
二人は殺気をドアの外ににむける。
「さっきからこちらに視線を感じるんですよ」
「あれはプロだな」
その言葉と同時にドアのロックが解除されゆっくりと開いた。
「な!」
古田は立ち上がり棚に置いてあった拳銃を握りしめる。
完璧にロックされてあったドアがいとも簡単に開いたのだ!
びっくりするのも当然であろう。
「ライ!ショウ!私を守れ!」
二人の空挺レンジャーの名前を呼び古田はカバンを持ち服を急いで着る。
「大将が逃げ腰とは……よく映画であるパターンだな」
姿は見えていない。だがこの部屋のどこかで潜んでいるのは確かだった。
大柄な体格のライが口を開く。
「暗殺者よ、名前くらい名乗ったらどうだ」
「……」
返答がない言葉にライがさらに言葉を続ける。
「俺の名はライ。元第〇〇普通科連隊空挺レンジャー所属。階級三等陸慰」
ライより少し小柄なショウも口を開いた。
「俺の名も言おう。ショウというものだ。同じく元第〇〇普通科連隊空挺レンジャー所属、階級陸曹長」
ダークはショウの背後に周りナイフを突きつけた。
ショウは突然の出来事に硬直していた。額から汗が滲み出てくる。
「これが暗殺者の死歩という技か……」
ショウは肘をダークの額にくらわせようとするがギリギリのところでダークはそれをかわしナイフで腕を斬りつけた。
「ち!」
腕から血を垂らしながらショウは距離をはなす。
「大丈夫か!」
「少し深いな」
二人は徒手格闘の構えをとりダークを睨みつける。
「俺の名前はダーク・ミラー。まぁ、覚えなくていいさ。しかし、あくまで素手での戦闘か。相当自信があるようだが俺は暗殺者だ。それに答える事は出来ん」
そう言うとダークは背中にかけてあったサイレンサー付きの64式小銃を手に持ち古田に向かい狙いを定める。
「俺のターゲットはあくまでこいつだ」
指が引き金に触れる。
しかし弾が発射されようとした瞬間ショウが古田の手を握りドアに向かって飛び出した。
弾はガラスを破り外に銃弾が流れる。
ダークがその後を追おうとするが目の前にライが立ちふさがる。
「そこをどけ」
「無理な話だ」
「死ぬ事になるぞ」
「お前がな」
「……」
「……」
一瞬間があいた。
その時すでにダークはライの後ろにまわっていた。
「死歩……何回見ても目が追いつかないな」
ダークは腰にさしてあった日本刀を抜きライの腰めがけて斬りつけようとする。
刃が腰に到達しようとする時ライは腰から上の体を後ろにのけぞり攻撃をギリギリでかわす。
「たいした反射神経だ」
「どうも」
体勢を整えライはダークの顔面に蹴りをくらわす。
鈍い音とともにダークは壁にむかい激突する。
「貴様!今わざと攻撃をうけたな」
口から血を垂らしながらダークはゆっくりと立ち上がった。
その口元は微笑んでいる。
「ははは……自信ありげだったから一発受けてみただけだ。しかしこれじゃ人は殺せない」
ダークは日本刀を握りしめライに向かい言う。
「ならば今度はその頭蓋骨を粉砕し二度とその口を聞けない状態にしてやろう」
「試してみるか?」
「無論だ」
ショウは古田の手を引きながらホテルの廊下を走っていた。
このホテルに一般客はいない。なぜならこのホテル全部が古田の所有物だからである。
しかし警護隊が二人だけでほかの仲間がいないのは疑問が残る。
「古田様、非常階段で逃げましょう」
「はぁはぁ……少し休ませろ」
「そのケースを持っているからです。お金はまた手に入ります」
「はぁはぁ、バカか貴様は!これは私の命だ」
黒いケースを握りしめ古田は非常階段に向かう。
しかし階段の入り口に入る古田をショウはギリギリのところで止めた。
「どうしたんだ!?」
「入り口に鋭利なワイヤーが張り巡らされています。ダーク・ミラーの仕業か?」
そう呟くと後ろから女の笑い声が聞こえてきた。
「ふふふ、あとちょっとでミンチになっていたのに」
黒いスカートに黒い服。両手にワイヤーを巻き付けた女はショウに向かい罵声を浴びせる。
「そこのナルシスト、あんた邪魔なのよ」
その言葉に横にいたサングラスをかけた大柄な男が口を挟む。
「なんでこいつがナルシストなんだよ」
「見た目で」
そのやりとりを見ていた古田はショウにむかい命令する。
「殺せ!早く殺せ」
「了解」
指をポキポキと鳴らしながら美砂とシンに歩み寄る。
「貴様……ダーク・ミラーの仲間か?」
「ダーク?え!ダー君も来てるの」
目をキラキラさせながら美砂は答える。
「目が輝いてるぞ美砂」
「うるさいわよシン」
「なるほど、貴様らの名は美砂とシンと言うのか。死んだら名前が聞けんからな。今のうちに聞けてよかった」
その言葉に美砂の表情が変わる。
「あんた……勝つ気でいるようだけど」
その言葉にショウは立ち止まり美砂に向かい最悪な言葉を言い放つ。
「貧乳のくせに生意気な性格だな」
《ブチ!》
美砂の何かが頭の中で弾けた。
「あんた……今なんて言った」
その殺気にあのシンがビビっている。
「貧乳と言ったんだ。日本語も通じないようだな」
《バチン!》
美砂の頭の中で色々な全てが弾いた。
シンはソッと目をそらしていた。
汗を垂らしながら。
「良いわ!私が相手してあげる。暗殺者部類《富凶》名は中原美砂よ」
「自己紹介をどうも。こちらも名だけ教えといてやろう。ショウだ。宜しく」
二人の睨み合いが続く中シンが口を開く。
「俺はどうすれば良いんだ」
「ターゲットをお願い」
「分かった」
シンは古田の方へ足を運ぶ。
「おい!ショウ、あのデカいのがこっちに来る。助けろ!」
「大丈夫ですよ古田様。我らの仲間がもう二人来てます」
シンの後ろに二人の影が突如出てきた。
「シン!後ろ」
美砂の掛け声を聞きシンは後ろを振り返る。
迷彩柄の服を着ている二人組の男がそこに立っていた。
「陸上自衛隊か」
シンがそう言うと二人の男は銃剣を取り出し戦闘体勢に入る。
その構えを見たシンはサングラスを胸ポケットにいれ首を左右に揺らし骨を鳴らす。
「名はシン。暗殺者部類《凶殺》。久しぶりに軽い運動が出来そうだ」
顔の傷を手で触りながらシンは歩み寄る。
仕事が忙しくなかなか執筆が困難な状況です!(>_<)
千夏
「私の出番が少ないよー」
美砂
「ざまーみなさい」
千夏
「あんたが出過ぎなの!」