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神々の泉  作者: tamap
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 バシャーーーーン!

ゴボゴボゴボ・・・・。

え????

ゴボゴボってなんでこんなに深いのーーーーー?


 目を開くと水の中。

底も見えない。

でも、上から明かりが差している。

水の色は濁って・・・、濁って・・・。

鉛のような色の混じる水がピカピカというよりはテラテラと光っている。


 ぞっと総毛立ち私は死に物狂いで水をかく。

これはヤバイ!

キケン、キケン、キケン、キケン!!!!!

毒?違う!!!

もっとヤバい物!

ここに居れば確実に死ぬ。

溺れる以前に!


 右手には力が入らない。

でも、水をかく。

痛みなんて今は感じない。

ここから出なくちゃ!


 やっと、顔が水の上に出る。案外と狭い池の淵にすぐ手がかかった。

火事場の馬鹿力で体を押し上げ折れて無い方の手を喉の奥に突っ込んで水を吐く。

やむを得ず飲んでしまった水が吐き出されて来る。

でも、足りない!


 周りを見回す。

今上がって来た池の周囲には無いけれど、背丈より高い草に覆われた周囲に焦る。

なんで、草ぼうぼうなのよ!

管理者は居ないの???


 あれは何処に?

方向が分からない。

このままだと死ぬ!確実に!!!


 丈高い草の上に何かの建造物がチラリと見える。

あれがそうならあちらの方角に・・・。

走り出そうとして穿いていたズボンに足を取られ転がった。

折れている手を思い切り突いて、苦痛に悲鳴を上げる。


 靴もとっくに脱げてしまった。

こんな事をやっている場合じゃ無い。

痛みに生理的な涙が滲む目で手を見れば淡い光に縁どられゆっくりと縮んで行く。


 まだ、大丈夫。

私には時がある。

あちらで貯めこんだ 60年という時が!


 慌てず、ズボンを脱ぎ棄て、草をかき分けて行くと目の前に真っ黒な水を湛えた池があった。

そこも鉛色の池と同じように周囲に草は無い。


 池に両手を突っ込み水を掬う。

鉛色の水がどれだけ体の中に入ったか分からない。

だから慎重に。


 墨汁のような色をしているのに水は手肌を染める事は無かった。

一口。また一口。

飲みすぎてはいけない。

手を翳してみる。

光がゆるやかに消えて行く。

掌に残った水を見て考えたがそのまま池の中に零して戻す。


 とりあえずは助かった。

安堵のあまり涙が零れ落ちる。

途端に折れている手がズキズキ痛みはじめた。

手首は黒ずみ腫れてブラブラになっている。


 ゆっくり立ち上がり周囲を見回す。

今は草ぼうぼうだけど、私はここを知っている。

ゆっくりと記憶が戻って来る。

私はかつてここに居た。

ずっとずっと長い間、ここで池、いえ泉の番人をしていた。


 草が深くて見えないけれど、かつてここは美しい泉が点在する森に囲まれた神々の地だった。

私が死んで何があったんだろう。

私以外にも何人もの巫女が居たはずなのに。

巫女の役目は泉の管理と水を求めてやって来る人々への対応。

一つの泉に一柱の神が宿る聖なる地がなぜこんなに荒れ果てているの?


 ともかく、傷を癒さなくては。

私は草をかき分け進む。

丈高い草に覆い尽くされていたとて、通いなれた道。

必要な泉はすぐに見つかった。

淵まで草に覆い尽くされた泉はちょっとした湖の広さがあった。


 ここはこんなに大きいのに何でよりによってあの小さな泉に突っ込んじゃったのかなぁ。

それも全身ドップリと。

全身・・・、あっヤバ。

慌てて私は服を脱ぎ捨てる。

濡れた服が投げられた殆ど灌木と言った感じの蔓延った一角がシュッといった感じで服の形に消え失せる。

振り返れば私がかき分けて来た場所が道のようになっている。


 私は一糸も纏わぬ姿で目の前の泉に身を沈めた。


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