宿命の対決
そんな時、不意に屋上の階段の戸が開いて、複数の生徒達が屋上に傾れ込んできた。
「ニグレス、ここにいたのね。」
先頭に立っていたのは、ほかでもないヴィオレッタだった。
彼女は、ニグレスの隣に立つフローレンスの姿を見つけるやいなや、あからさまに眉をひそめた。
「まったく……あなたってば、ほんとうに往生際が悪いのね。皆さん、ご覧なさいな」
ヴィオレッタは、わざとらしく大声で周囲の生徒たちに呼びかけた。
「この子ったら、寮対抗試合で私に負けたのがよっぽど悔しかったのかしら。ニグレスをそそのかして、私のものを奪おうとしているのよ!」
なんという言いがかりだろうか。
だって、寮対抗試合で優勝したのは、ヴィオレッタではあるものの、ほかでもないフローレンスなのだから。
しかし、ヴィオレッタが声高らかに避難すれば、周りにいたヴィオレッタの取り巻き達が、途端にフローレンスを避難した。
しかし、ヴィオレッタの言葉に合わせるように、取り巻きたちはすぐさま声を上げた。
「本当に下劣な真似をして……ヴィオレッタ様のものに手を出すなんて」
「試合に負けた腹いせに、男に媚びるなんて最低だわ」
フローレンスは思わず反論しそうになったが、ややこしくなりそうだったのでそれを飲み込んだ。
「ニグレス、その子にわからせてあげないといけないわ。
可哀想だけど、痛い目を見れば諦めるはずよ。」
「ヴィオレッタ、いい加減にするんだ。」
二グレスは不快感をあらわにしてそう憤った。
「"我が僕、黒竜ニグレスに命じる。黒煙の炎を持って卑しいその後娘を打ちのめしてやりなさい。"」
ヴィオレッタはニグレスへ向けて高らかに命令を発した。
「…。」
しかし何も起こらない。
「ニグレス、何してるの?!」
ニグレスはそっぽを向いて言うことをきかなかった。
「その命令は聞き入れられない。彼女は傷つけない約束だろ。」ややあって、ニグレスはそう反論した。
「はあ? そんなの関係ないわ。
彼女は、約束を無視してあなたに接近したじゃない。
さっさと言うことを聞きなさい。」
「嫌だね。そもそも君は僕が使えるに値しない。」
「何言っているの?
この私が、そこの小娘よりも劣るとでも言いたいわけ。」
怒りで顔を真っ赤に染め、今にも火を噴きそうな勢いのヴィオレッタに、ニグレスは言い放った。
「当たり前だ、君はフローレンスの足元にも及ばない。」
周囲の生徒達もまた、彼らのやりとりを聞いていて訝しんだ。
「ヴィオレッタ様とニグレス様は何かあったの?」
「なんだか険悪そうな雰囲気だわ。」
「前はあんなに仲睦まじかったのに…?」
二人のやり取りを聞いていて、フローレンスはニグレスをたしなめるように制すると、ヴィオレッタの前に立ちはだかった。
「ヴィオレッタ、あなたの悪事もここまでよ。
洞窟で、カエルの魔女に話を聞いたわ。あなた、そもそもヴィオレッタですらないじゃない。」
フローレンスが事実を突きつけると、ヴィオレッタは驚愕に目を見開いた。
「な、なんでそれを……?」
「いま、ラファエル大魔道士が向かっているわ。
事実が明るみに出れば、あなたの企みもこれで終わりよ。」
その言葉を聞いたヴィオレッタは、怒りで顔をゆがめた。
「――忌々しい小娘……お前を使ったのが間違いだったわ。
今ここで、始末してやる!」
ヴィオレッタは、突然、魔法石を掲げてフローレンスへ攻撃を繰り出した。




