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魔法学校で魔女と姿を入れ替えられて無実の罪で追放された私ですが、突然現れたドラゴンを下僕に従えて無双できました  作者: 秋名はる
最終章

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闇属性の魔獣

ヴィオレッタとニグレスが学園を去る――その噂は、瞬く間に学園中を駆け巡った。

翌朝、フローレンスが寮の食堂に降りて行くと、すでに生徒たちは昨晩の話題で盛り上がっていた。


「フィフィ、聞いた? ヴィオレッタと彼のドラゴンが、今日の夕方に学園を去るんですって!」


いつもの調子で声をかけてきたのは、隣の席にやってきたニーナだった。


「……今日の夕方?」


すでに去ってしまったと思っていたフローレンスは、意外そうに首をかしげる。


「そうなの。辺境に凶悪な魔物が出たらしくて、討伐に向かうんだって。せっかく寮対抗試合で優勝したばかりなのに、急な話よね」


ニーナは、フローレンスが元の姿に戻っていることなど微塵も気づかず、無邪気に言葉を続ける。


「それでね、今日の午後から闇属性寮で盛大なお別れ会があるみたいよ」


「……そうなの。じゃあ、そこにニグレスもいるのね」


「もちろん。フィフィ、あなたもヴィオレッタにお別れ言いに行く? 学園ではいろいろあったけど、今思えば二人は良きライバルだったじゃない」


「ええ、行くわ」


フローレンスは、ニーナの言葉を半ば聞き流しながら、これからどうすべきか頭を巡らせていた。



* * *


午後、フローレンスとニーナは闇属性寮を訪れた。


お別れ会は、いかにもヴィオレッタらしい豪華な演出で執り行われていた。天井から吊るされた布飾りに、煌びやかな魔法灯。室内は押し寄せた生徒たちでごった返し、熱気と喧騒に満ちていた。


「この人混みじゃ、ヴィオレッタに近づくのも一苦労ね。フィフィ、迷子になるから私から離れちゃダメよ?」


ニーナがそう言ったとき、すでにフローレンスの姿はその場になかった。


ニグレスは、最初はヴィオレッタに付き添って大人しく振る舞っていた。しかし、次第にヴィオレッタが自身をひけらかすような振る舞いが目についたため、密かに会場を抜け出していた。しかし、今度はヴィオレッタではなく二グレス目当ての女生徒の相手をする羽目になり、次第に機嫌が悪くなっていた。


ようやく人波が引いたところで、ニグレスは、ふと廊下の先に歩いていく見覚えのある人物を見つけた。



「フィフィ、どうしてここにいるんだ。」


フローレンスが、聞き覚えのある声に振り返ると、そこには二グレスが立っていた。

フローレンスはすかさず彼に詰め寄ろうとするが、違和感に気がついてその場に留まった。


「二グレス、私あなたを取り戻そうと思って。」


そう口に出してみたものの、口調に覇気がない。二グレスはフローレンスのその様子を察してこういった。


「とにかく、ここでは人が多すぎるから、どこか静かなところへ行こう。」



* * *


屋上に上がった二人を照らすのは、午後の柔らかな光だった。

そうして二人は、寮の屋上へとやってきた。ヴィオレッタは来賓の相手をしているから、しばらくは誰にも邪魔されないはずだ。


「フィフィ、わかってくれ。僕だってこんなことはしたくなかったんだ。

 でも仕方がない。」


二グレスの表情には悲痛が滲んでいた。


「君だって気がついているだろう。君から見た僕の印象は変わっているはずだ。

 違うと言えるか?」


フローレンスは答えることができないでいた。

確かに、彼の印象はフローレンスがヴィオレッタとして過ごしていたときとはだいぶ異なっていた。

今までは、彼に対してなんの恐怖やおそれと言ったものは感じなかったのに、今はぜんぜん違う。切れ長の瞳は恐ろしげで、憂いを帯びた表情で見下ろすさまも、今のフローレンスには近寄りがたい印象を覚えた。


「そうね、あなたの言う通り、これまでとはだいぶ違うみたい。」

フローレンスは白状した。


「君の感じていることがわかるよ。前とずいぶん変わってしまっただろう。それも無理はないさ。君は光魔法使い、僕とは本来、相容れない存在なんだ。」


ニグレスは、自分でそう言いながら絶望したように目を伏せた。


「でも、何か方法があるはずよ……」


今までも、どうにかやってこれた。今回だって、そう信じていた。

光と闇の相反する魔法。その事実が、フローレンスとニグレスを隔てていた。


「ない。こればかりは僕にも、どうしようもない。」


フローレンスは、自分の無力さに打ちひしがれた。


目の前のニグレスの目にも、今の彼女はあまりに頼りなく映っていた。気丈に振る舞っていても、その体は小刻みに震え、魔法使いとしての本能が彼を恐れていることを隠せないでいた。


「もういいんだ。少しの間でも、君と過ごせてよかった。」


「ダメよ。まだ終わってないわ。私はいいとしても、洞窟にいる本物のヴィオレッタはどうするの? 彼女は、まだ本当の姿を取り戻せていないのよ。」


「最初から、僕には関係のないことだ。君が助かれば、それでいい。」


「そんな……諦めるの? このままでは、彼女の思う壺だわ……」


「……わかった。君がそこまで言うなら、僕も考えよう。僕自身、ヴィオレッタには……もううんざりしているんだ」


ニグレスは小さくため息をついた。まだすべてが終わったわけではない。その目に、わずかながらの決意が宿り始めていた。

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