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魔法学校で魔女と姿を入れ替えられて無実の罪で追放された私ですが、突然現れたドラゴンを下僕に従えて無双できました  作者: 秋名はる
第二章

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呪文学

事件は、その日の呪文学の授業で起きた。

 魔法使いにとって、魔法の基本は自身の魔法石と、それに対応する呪文を用いることで発動する仕組みにある。ゆえに、各呪文とその効果を正確に覚えることは、すべての魔法使いにとって必須の心得だった。


「では、ヴィオレッタ。前に出て次の問題に答えてください。  魔人イフリートの討伐に効果的な装備と呪文は何か分かりますか?」


 突然の指名に、フローレンスは息を呑んだ。


「え、えっと……」

 動揺が隠せず、答えに詰まってしまう。


「ヴィオレッタ、こんな初歩的な問題をお忘れではないですよね?」

 教壇からの厳しい声に、教室内がざわついた。


「あら、普段優秀なあなたが答えられないなんて。珍しい。」

 教師はため息をつき、代わりに答えた。


「イフリートは炎属性の竜魔です。水属性の呪文や装備が有効となります」


 その一言で、教室に気まずい空気が流れ、続いてあちこちから嘲笑と噂が聞こえてきた。


「ヴィオレッタ様、いつもの冴えがありませんわね」


「逃亡生活で授業内容を忘れてしまったのかしら」


「付き添いの青年と遊んでいただけじゃない?」


 嫌味混じりの声が、耳に届くほどの距離で囁かれた。



「僕のフィフィを馬鹿にするなんて……なんて無礼な連中だ」

 ニグレスが立ち上がりかけ、周囲の生徒たちを睨みつける。


「だめよ、騒ぎを起こしてはいけないわ」

 フローレンスは彼の腕を掴んで引き止めた。


「これは私の失態よ。彼らを責めることはできないわ」


 闇魔法にまだ不慣れな自分が、こうした問題に答えられなかったのは仕方のないことだった。しかし、クラスメイトたちは事情を知らず、ただの『失態』として受け止める。


 それでも、フローレンスは避難の声を甘んじて受け入れた。


「今は無理でも、なんとかして授業の遅れを取り戻さなければ……」


 ため息まじりに呟くと、ニグレスは彼女の肩にそっと手を置いた。

 再び座り直したニグレスの横で、先生は授業を再開した。


「では、実際に呪文を唱えてみましょう。  呪文は『水鉄砲ステラ・ラプトラ』です」

 

先生は説明をしながら、実際に魔法を発動させて見せてくれた。

先生が呪文を唱えると、彼の指先から衝撃音が走り、教室の端に置かれていた花瓶が一瞬で粉砕された。


「これは水属性の呪文ですが、攻撃魔法として闇属性の生徒も使用可能です。ただし、トロルやゴーレムのような木属性には効果が薄いので注意してください」


「火・水・木の三属性はそれぞれに有利不利があります。火は木に強く、木は水に、水は火に強い。そして、闇と光は互いに対立する属性であり、唯一闇が不利とするのが光です。それぞれの属性の関係をよく理解して、正しい呪文を駆使するように。」

 先生の説明に、生徒たちは真剣な表情で頷いた。


「では実践に移りましょう。教室の壁に的を並べてあります。  一人ずつ呪文を唱えて、花瓶を破壊してみてください」


 いわれて、生徒たちは列に並びだした。フローレンスも釣られて教室の端のほうに陣取る。


「呪文を唱えるときはよく注意してください。間違っても周りの生徒に当たらないように。

 とはいっても、この呪文はとても高度で難しいものですから、今回は破裂音がしただけでも上出来でしょう。」


生徒たちは互いに顔を見合わせながら、見様見真似で呪文を唱えだした。しかし誰も呪文を発動させることができない。


「フィフィ、君にはそんな呪文は簡単すぎるんじゃない。」

 ニグレスがからかうように笑いかける。


「やめてよ。さっき失敗したばかりなんだから……」

 それでも、フローレンスは覚悟を決め、指先に力を込めて呪文を唱えた。


水鉄砲(ステラ ラプトラ)!」

 次の瞬間、彼女の指先から鋭い振動が走り、向かいの花瓶が粉々に砕けた。


 教室が一瞬静まり返り、すぐにどよめきに変わる。


「ヴィオレッタ様、どうやって……?」


「一年生には無理だって言われていたのに!」


 驚きと賞賛が入り混じる声が教室を包み、生徒たちは一斉にフローレンスを囲んだ。

 その輪の中で、フローレンスはようやく小さな逆転に胸をなでおろしていた。


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