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第四章 バカ・デストロイ・ホーム -1-
水晶がひび割れる。
暗黒神官の魔術によって世界の全てを映し出す媒介となるそれが最後に映した光景は、たった一人の少女が無数の魔族を焼き払うと言うものだった。
「何があった、暗黒神官。報告せよ」
「……どうやら、賢者が覚醒してしまったようです」
はは、と乾いた笑みと共に暗黒神官が言う。
「敗因は?」
「下級魔族だけで対処に当たらせたのがまずかったようで」
「……転生前の勇者に、下級魔族が有効だった試しでもあったか?」
「ありませんね」
「はっはーん? 貴様、さては何も学んでいないな?」
「反省房行きですか!?」
「何故喜んでおる!?」
まさかのリアクションに魔王の方が驚いていた。
「あぁ、いえ、失敬」
「今さら取り繕っても遅い気はするが……」
深く突っ込んでも自分の頭痛のタネになるだけの予感があったので、魔王もそれ以上追求はしなかった。
「ですが、ご安心を。既に次の手は打ってあります」
「……本当だろうな……?」
懐疑的な目を向ける魔王に対し、暗黒神官は勝ち誇ったような笑顔で答えるのだった。