第28話 首領の足掻き
突入から1時間経過したが、首領を見つけ出せない。サメロたちが(首領を取逃がしたか)と焦っている時、部下が凝った作りの服を持ってきた。
「首領が着ている上着だと思われます。何かの手がかりになりませんか?」
「そんな服を見つけたって、首領の行方が分かるか。倉庫にでも置いとけ!」とアリが怒りを隠さず言う。
「いや、ちょっと待て。その服を貸して見ろ。」
ウリューは服を受け取り、チョロの前に置く。
「チョロ、この服の持ち主が分かるか。」
盗賊の頭が着ていた服の匂いで、チョロに持ち主を見つけられるか半信半疑だったが、試してみても損はないと考えた。
その意図を見抜いたのか、チョロは服に付いた匂いを嗅いで、それから付近をうろうろ歩き出していく。
丁度、その頃には村人たちも表に出てきている。
ほとんど無抵抗で短時間に盗賊たちを捕られた。とは言え、流石に大勢を捕縛し、表に連れ出したのだ。村人たちに気付かれないはずもなかった。
「何が、遭ったんだ?」
「あの人たちは防護団らしいよ。」
「防護団て、何だ?」
「し!大きな声で言わないで。防護団が盗人を捕らえたのよ。私らの隣に盗人がいた。あんまり、暢気なことを言っていたら馬鹿にされるよ。」そんな、ひそひそ話が聞こえた。
チョロはその村人たちの傍をうろつき回る、だが、目立った素振りはしない。
何も知らない男たちの周りを歩いても、吠え声一つしないでいる。
(やはり、簡単にはいかないのかな)
そんな風に残念に思っていた時、少し離れた民家の家から男が一人出てきた。
長屋から離れたいたので、騒ぎを聞きつけたのが遅かったようだ。ただ、居並ぶ兵士の数を見て驚いている。
その男が顔を見せると、チョロの態度が俄かに変わる。
顔を地面に近づけ、低く唸りながら男に近づいていく。
その動作で、ウリューも男に注目した。浅黒く、髭面の顔は一見どこにもいそうな農民の顔立ちそのもの。
しかし、チョロが見定めた者ならほぼ間違いない。(奴が首領だ)
一方の首領は、百姓家の戸を踏み出た時から、すでに異変を感じていた。
大きな犬がこっち向かっているのを見て、隠し通せないと観念する。
やにわに持っていた小刀を引き抜く。隣に何も知らずに立っていた百姓の女の首に腕を回すと、刀を女の顔に向けた。
「きゃー!」女の叫び声が村中に響く。
それを打ち消すように男が叫んだ。
「動くな、俺に近寄ればこの女を殺す。」
その声に誰もが怯んでしまう。男の眼は追い詰められた獣のように、焦り血走っている。
破滅的になり、女の首に今にも刀を突き刺してもおかしくない。
防護団々員、村人、誰もが固まって動けなかった。
その時、「バン」という鋭い音がして、小刀を持った男の腕から血が散る。
刀が落ちて、一斉に団員が男を取り押さえた。
盗賊の首領に何一つ抵抗すらできない。
アリはウリューを見る。その顔は何事もなかったかのようにしている。
「お前、よく撃てたな。女に当たるとかんがえなかったのか。」
「この距離なら、1センチとは外さない」ウリューは平然と言い放つ。
「1センチ!」アリはまさかと言うようにまじまじと見る。
その顔に偽りを見いだせなかった。




