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第三話 ダンジョンに向けて


「と、いう訳でレベルVのダンジョン初見攻略パーティーを作ってみました」

「ふむ」


 翌日、お昼休憩を狙ってに進捗を伺いに来たアルムさんにリストを渡す。


「まずダンジョン攻略には盗賊系統の技術は必須。という訳でシュラさん。続いてパーティーの前衛双剣士のクライムさん。パーティーのまとめ役として剣士のガルボーさん、そして後衛に弓使いのラーゼンさん。最後は魔法使いカースさんです」

「五人中三人が問題児じゃないか!? あと誰だこのカースとやらは? 六級に務まる訳ないだろ」

「カースさんは訳あって二級から六級への降格と半年の謹慎処分となっておりましたがタイミングよく今月から復帰なんですよ!」

「問題児が増えてるじゃないか!」

「誰が問題児だってぇ?」


 私の選出に物申すアルムさんの後ろから問いかけてくる声がする。

 アルムさんが飛び退くように振り返るとそこにいたのは黒いフードを被り、ローブを纏った小柄な人物だった。


 それだけならどこにでもいる不審者だがその首から魔獣やモンスターの頭蓋骨を繋げて作ったネックレスをぶら下げたより珍しい不審者だ。


カースさんのように触媒を多用する魔法使いは固有名詞で呼ばれる事が多く、魔獣やモンスターの骨などを使う魔法使いは死霊術師なんて呼ばれたりする。


「何者だ貴様?」

「今アンタに問題児呼ばわりされたカースちゃんだよ」

「カースさん、いらしてたんですね」


 アルムさんに絡みそうなカースさんに話しかけて注意をこちらに向ける。せっかく謹慎を終えたのにまた謹慎になったら困る。


「ギルマスよぉ、いつの間に支部を移転したのさぁ。てっきり支部を乗っ取られたかと思って攻撃しそうになったよぉ」

「やはり問題児ではないか」


 いやぁ、何も言い返せないな。


「それにしても面白い話だねぇ、レベルVのダンジョン初見攻略かぁ」

「おっ、ノリ気ですね」

「冒険者なら誰もが一度は夢見るでしょぉ、ダンジョン初見踏破なんてさ」

「よし、じゃあカースさんは参加と」

「待て、今のパーティーはまだ承諾を得てなかったのか?」

「そりゃ昨日の今日ですし……」


 というかゼニス様たちも性急過ぎる……というかこのパターン、また何かあったんじゃないだろうか?


「アルムさん、何か急ぐ理由がありますか?」

「うっ」


 あるのかっ!?


「実は……いや、ここじゃマズい。後で迎えを寄越す」

「あ、はい」


 踵を返して行ったアルムさんを見送る。あの人も大変だな。


「それで、カースちゃん以外には誰がいるの?」

「ああ、コレが私の考えたパーティーメンバーです」


 リストをカースさんに渡すとフードが揺れる。


「また凄い面子を選んだね。マトモなのカースちゃんとガルボーぐらいじゃん」

「……ですかね?」


 カースさんもその凄い面子側なんだけどね。

 でもそんなカースさんから見てもマトモ判定されるガルボーさんは本当にデキる男だ。お酒が入るとトップを爆速するやらかしおじさんだけど。



◼︎



「代理から正式にギルマスなって無茶振りに拍車がかかったか?」

「ダメ? ですか?」

「ダンジョンより先にこの連中をまとめる気苦労でダウンしちまうよ」


 ガルボーさんにダンジョン攻略の話をしたら最初はノリ気だったのだがパーティーメンバーを見た瞬間この有様である。


「だが、今辺境にいる連中ならこの辺りじゃないとレベルVには挑めねぇのも事実か」

「流石、レベルV経験者!」


 ガルボーさんは辺境に在籍する冒険者の中ではレベルVダンジョンに挑んだ唯一の人物だ。


「経験者とは言っても俺が挑んだダンジョンはおおよそ情報が明らかになっていたダンジョンだ。初見ダンジョンとなるとその難易度は跳ね上がるぞ……威力偵察はしないのか?」

「……ゼニス様次第ですかね」


 威力偵察、要は初見攻略なんてロマンは捨て、まずは犠牲になっても問題ない犯罪者や問題児をダンジョンに送り込んでダンジョンを調べるという方法で、ある国では死刑囚たちをダンジョンに潜らせて情報を持ち帰らせてから刑に処すという非人道的行為をやったなんて噂もある。


「ま、あの嬢ちゃんはやらんだろ……となるとやはりこのパーティーが無難か」


 ガルボーさんが少し考えこみ、膝を叩く。


「まあいい、やってやろう。冒険者やってても未踏のダンジョンに挑める機会なんて滅多にないからな」

「ありがとうございます!」


 よし、これで少なくともパーティーが瓦解して全滅は無くなった。何とか生きて帰って来れるだろう。


「ただし、危険だと判断したら即撤退する。いいな?」

「もちろんですよ。私だって皆さんに無事帰って来てもらいたいんですから」



◼︎



 ダンジョン踏破は冒険者にとってドラゴン退治に並ぶかそれ以上の誉れ。レベルVなら歴史に名を残すほどの偉業になる。

 だからこそ、この程度の横槍は想定しておくべきだった。


「実は王都から新発見されたダンジョン攻略の権利を明け渡すよう連絡があった」


 そう説明するゼニス様の表情はなんとも不服そうだ。

 アルムさんが手配した馬車の中で今回の経緯を聞く。一体どこから漏れたのか、ゼニス様が昨晩渡しておいた申請書類を書いている最中に王都から遣いが来たらしい。


「だが流石に譲りたくもないし、もしパーティーが決まっていたら先に乗り込ませてしまえたらと思っ」

「それは出来ません」


 ゼニス様の話を途中でばっさり切って拒否する。私らしからぬ対応にゼニス様と隣に座るミランダさんが目を見開く。


「レベルVに挑むのであれば、相応の準備が必要になります。軽はずみに入れる場所ではありませんから」

「……ごめんなさい」


 ……ちょっと言い方がキツかったかな?

 とはいえ昨日も感じていたが新ダンジョンの発見にみんなどこか浮ついている雰囲気があった。

 間違いなく歴史に名を残せる偉業だしリターンがデカいから無理もないけど、しっかり気持ちは引き締めて欲しいのだ。


 私はゼニス様の手を取りその目を見つめる。


「辺境初のダンジョン踏破、歴代領主様が成せなかった偉業を果たしたいというお気持ちはわかります。ですが功を焦ってはいけません」

「……」


 ゼニス様がコクリと頷く。

 きっと私ならなんだかんだ言ってやってくれると期待してくれたのだろう。私だって彼女の期待に応えてあげたいという気持ちはある。


 しかし、レベルVは本当に危険なのだ。


「ゼニス様はまずこの情報がどこから漏れたか探ってみてください」

「……わかった」


 素直に頷くゼニス様の頭を撫でる。

 さて、私もちょっと気を引き締めないといけない。

 王都からの間者の情報を掴み損ねているのはもちろん、まんまと話を盗み聞きされていたとしたら油断しすぎだ。

 大規模な人事異動で気持ちに余裕が無いにしても失態である。


 ……というかこのやり口、セレナちゃんに似てるな。


 馬車を途中下車し、ゼニス様たちと別れて歩きながら考えをまとめる。

 なんだか私を業務で圧迫してその隙に何か事を進められているような気がするのだ。


 セレナちゃん事件以前なら考え過ぎとも思ったが、ロンダリングで回収した呪物の件もある。

 私身近な人物の暗躍は考えられるが……目的はさっぱりだ。

 とはいえ一度に全て調べる事は出来ないから、まずは件のダンジョンがどんなものか見に行ってみよう。


 まあどれだけ危険だったとしても、深淵が占拠してるダンジョンに比べたら多少はマシだろう。


フラグ建設をするフランドール。


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