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魔女と呼ばれる私、癒しの花を咲かせます  作者: しぃ太郎
第四章 カーマイン・ベール

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SS キアンのプロポーズ 祝福の花が咲く日

書きたくて温めていたSSです。


 私は、いつも通り薬草園で水をやっていた。

 日差しが眩しい。

 もう新緑が鮮やかな季節になった。

 この時期に収穫できる薬草は――そんなことを考えていると、いきなりセラに腕を引かれた。


 ――え?今日は随分と早起きだ。


「ルミア!ちょっとちょっと!今から私に付き合ってくれない?」

「へ?セラ、珍しいね。こんな時間に外に出てくるなんて」


 思わず、素直な感想が口をついて出た。

 セラが一瞬、バツの悪そうな顔をして視線を逸らす。


「……もう。そんなに引きこもってばかりじゃないはずだもの!」

「ふふふ。セラは夜中まで頑張ってるんだもん。ただ珍しくて驚いただけだよ」


 セラは私の顔を見て、少しだけ口角を上げた。

 そのまま、頭の先からつま先まで観察される。


「うん。あいつら、本当に突然無茶を言うけど……。ルミアならいけるわ!うんと驚かせて、黙らせてやるんだから」

「えええ?さっきから何の話!?」


 彼女に腕を掴まれ、家の中へ連れ込まれる。

 そこで私を待ち受けていたメンバーに、驚きの声をあげてしまう。


「あれ、エレナ母さん?それに、リナちゃんとエミさんまで……!いや、本当にどうしたの?」


 私の疑問に、エレナ母さんはにやりと口元を歪ませた。

 リナちゃんは真剣そのものだ。

 何故か瞳がキラキラしている気がする。

 エミさんは……あれ?一番オーラが凄い。


「さて、みんな!時間がないよ!ルミアを絶世の美女に仕立て上げて、度肝を抜かせてやろう!」


 エレナ母さんが手を打ち付けて合図をすると、女性陣が一斉に動き出した。


 いや、待って!?

 まずは私に説明を――!



 そして数時間後。


 純白のドレスにベールまで被せられ、薄く化粧をした私が完成した。

 銀髪も、いつもと違い、エミさんが丁寧に編み込んでくれている。

 ここまで来ると、さすがの私も気づく。

 これはまさか。

 いや、でも私に相談なく進めちゃう!?


「ルミアお姉ちゃん!これ、わたしが作ったブーケなんだ!カーマイン・ベールで作ったの!」


 リナちゃんが元気よく渡してくれた花束を受け取る。

 カーマイン・ベールを中心に、所々に散らされたかすみ草で柔らかい印象になっている。


「ありがとう。綺麗だね」

「あはは!ルミアお姉ちゃんの方がよっぽど綺麗だよ!天使さまみたい」


 リナちゃんの大袈裟な褒め言葉に、思わず顔が赤くなる。

 純粋すぎて、こちらが参っちゃうよリナちゃん。


「よし、準備万端だ!男どもの驚く顔が楽しみだね!」

「「ええ!」」


 私以外の女性陣が拳を握っている。

 いや、でも……。

 こんなドレス、本当にどうしたの?

 全部、みんなが用意してくれたんだろうか。

 少しだけ目頭が熱くなる。

 泣いちゃ駄目だ、エミさんがお化粧してくれたんだから。


 そして私は、無理やり正装させられて教会に連れ出された。

 あの日から、村の人たちの視線が優しい。

 村にある小さな教会の前に、白いタキシードで正装したキアンが立っていた。

 数人の村人も並んで立っている。

 そこには、トーマスさんも、アルの姿もあった。


 教会に新しく赴任してきた新人の神父様が、私に笑いかけてくれる。


「これはこれは、美しい花嫁さんですね」


 神父様の言葉に思わず赤くなる。

 褒められるのには慣れていない……。

 キアンは?キアンから見たらどうなんだろう……。


「ルミア……」


 キアンが、熱っぽい瞳で私を見つめてくる。

 目を合わせるのが恥ずかしくて、思わず視線を下に向けてしまう。


 キアンが、そっと私の手に触れた。

 手に持ったブーケごと、彼の大きな手に包まれる。


「やっぱりルミアは、俺の光だよ。……綺麗だ」


 そして、片膝をついて私の手にキスを落とした。


「俺はあの日、あの街で初めて会ったときから――」


 一度言葉を切った彼の喉仏が上下するのが見えた。

 キアンも緊張しているのかもしれない。


「あの日に見た、力強い女の子にずっと惚れていた。その後、何が起きても逃げないで戦っている、この手に寄り添いたいと思った」


 私の胸が、キュッと締め付けられるような痛みに襲われる。

 それは、私がキアン――お日様に出会った日の話だ。

 キアンの琥珀の瞳が、蕩けるように甘くなった。


「一生、側にいさせて。ルミアが立ち上がるときは支えたい。ルミアが逃げたいときは一緒に逃げる。……ルミアが覚悟を決めて先に進んだら、絶対に追いつくから」


 真剣な琥珀色の瞳が、私を射抜いて離さない。


「俺を選んで」


 もう。気障なんだから。

 こんなサプライズなんて計画して……毎回私に、今まで知らなかった感情を教えてくれる。


 私は、キアンの額に自分の額を合わせて笑った。

 上手く笑えているだろうか。

 ちょっと目元から涙が滲んでいないかな。


「ふふふ!私は最初からキアンを選んでるよ……大好き!」


 そのままキアンの首に抱きついた。

 力強く受け止めてくれる腕が愛しい。


 そして。

 持っていた花に『癒しの力』を込める。


 ――ばっ!

 そのブーケを、リナちゃんの頭上に投げてあげる。

 リナちゃんは、それを笑顔で受け止めようと手を伸ばしている。

 その瞬間。


 彼女の頭の上で、様々な種類の花が舞った。

 なぜかブーケにも入ってない花びらが空を覆う。


 蕾だった花は、満開に。

 萎れかけの花は瑞々しく、鮮やかに。

 村中にある花が、色とりどりに咲いたのだった。



 一瞬、キアンが息を呑む気配がした。

 彼の目が潤んだように見える。

 でも、ぐっと堪えるように、それでも我慢できないように私を強く抱き締めた。

 そして彼は小さく笑う。


「……参った」

「えへへ。ちょっとやり過ぎちゃったね」


 キアンは一度、私の唇に軽くキスを落とした。


 ――その後、観客に見えないようにくるりと背中を向けて、二度目のキスをしたのだった。


「キアン……みんなの前で恥ずかしいよ……」


 照れて文句を言う私を抱き上げて、彼はその場から走って逃げ出した。


「せっかくだから、邪魔者がいない所へ行こうか」

「あはは!後でみんなに叱られちゃうよ」


 背後では笑い声や、呆れた声が聞こえてくる。

 それでも、みんなが祝福してくれているのがわかった。


 その日、村には祝福の花が咲いた。

 石畳の道にも、白い壁の家々にも、鮮やかな光が降り注いでいた。


 幼い子どもは、突然舞い上がった花びらに手を伸ばし、いきなり花壇の蕾が咲いた女性は驚きの声を上げた。


 理由なんて知らなくても、人々の顔に笑顔が浮かぶ。

 そう。

 ただ、綺麗な光景に誰もが見惚れた――。

 それだけだったのだから。




 

この作品は、本当に勉強になりました。

時間の無駄なんじゃないだろうか。

ほかの作品を書いたほうがいいのでは?

何度もそう考えながら、完結まで持っていった作品です。


まだSSネタが残っているので、もう少し頑張ります。

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