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白騎士さんが通る  作者: 煙道 紫
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金策

ネットゲームに多い傾向として、家庭用ゲーム機よりも多くの周回要素が有る。

家庭用ゲーム機は幅広い年齢層を取り入れるために比較的難易度が低めに設定されているのだが、ネットゲームに関しては顧客に課金をさせる事を前提としている為にゲーム自体の難易度が高い傾向にあるのだ。


そして、面倒事の一つとして周回要素が有る。これはゲームの世界に依存させて本来必要としない課金を促す運営の罠だった。パチンコやスロットとの違いは殆ど無いと言っても過言ではないだろう。


周回には効率と言うものが有る。例えば経験値であれば、討伐時に経験値の高い敵モンスターが多い地域で依頼を受ける方が時間あたりの経験値獲得数が多い。これは金策も同様の考え方が出来る。


何故そのような説明をするのか、ついさっき捕獲した男が金策に必要な暗殺ギルドの幹部だったからだ。





路地裏で、彼の格好を真似たので声を掛けた。言葉が通じないことは先のギルドで確認済みだったが、今の黒金糸装備が所謂、民衆受けする装備であるのかが解らない以上、相手とのコミュニケーションを取らなければ確認できない。白騎士装備の受けが悪かったのを考えると私の中に在る普通がこの街の普通とは限らないのだった。


歴史を考えると、日本人は和服を着ているのが当時の常識であったのが現代になっては洋服が常識。

当時の貿易時代、港には様々な異文化の交流があった。洋服を着た髪色の違う異国民を奇異の目に晒していた事は想像に難くない。


今、私がやっているのは異文化交流なのだ。私の常識が通用する国で無い事は確かだろう。

此処にいる街民の格好を真似て民衆に溶け込む。相手の文化を認めるのが交流の第一歩になると考えた。


「やあ、街民君。私は異国から来た者だが私の格好を見てどう思うかな?」


いきなり声を掛けたせいで目の前の街民は緊張している様子であったが礼儀正しい人間なのだろう。

ギルドの様な疎外感を感じなかったし装備を変更したのは正解だった。

私も駅で外人に英語で声を掛けられた時には緊張する。彼の緊張感を笑う事は出来ない。


「成功だ!」


やっと、街民から見て不自然では無い服装を手に入れる事が出来た。

恐らくだが、白色の鎧が良くなかったのだろう。鎧は街に入る際に、門番が着用している事を確認しているしギルドの冒険者たちも着用していたので、一般的に普及していると考えられる。

しかし、その何れもが鉄を加工した鉄鎧か皮鎧であった。大勢が似た様な装備をして居る中での白騎士装備は悪目立ちするのだ。

私は嬉しさから彼の肩を叩いて、喜んだ。知らない人間だったが、ある意味で恩人だったので縁を紡いでも良いだろう。

感謝の言葉を表して一礼すると彼が話しかけて来た。


「△▼□◆■〇〇〇?」


「ありがとう、君のお陰だ」


「△▼□◆■〇〇〇□◆■△▼□△▼□」


もにゃもにゃとゲーム内の造語を話す。なんと言っているのかは解らない。造語なので文法さえ決められていないだろうし話せるようになりたいとも思わなかった。

そういえば、彼は何者なのだろうか?


「まあ、よく居る貴族だろうけど・・・。」


彼のステータスを確認すると所属の欄が暗殺ギルドだった。

大変な幸運だ。暗殺ギルドは国外に逃がすだけで戦争クエストが発生するトリガーになる。戦争クエストは歩合制なのだが、非常に実入りが大きく、大抵のクエストよりも報酬金額が多いのが特徴。


しかも人類種がドロップするアイテムの中に、○○の魂シリーズがある。これは最上級武器を作るときに必要なレア素材の一つでその貴重さから七十億ゼニー前後の価値を誇っていた。

戦争では自然と人類種の討伐数が多くなるのでドロップしやすいのが特徴だった。実入りの少ない冒険者ギルドのクエストの中でも最高報酬だ。


私はアクションの1種である【捕獲】をする。腰辺りでゴソゴソとするモーションの後に上から相手を麻袋に入れる事が出来るもので、相手をエネミーとしてアイテム収納できるアクションだ。

敵モンスターを【捕獲】するクエストも多少ながら存在していた。


「!?」


暗殺ギルド員を【捕獲】した。ゴソゴソと麻布の袋が数度、大きく動き捕獲が完了する。


「よしっ!じゃあ門の外に出すか!」


【捕獲】は確率式であり、敵を弱らせるとその確率が高くなっていく。その為敵を殺さない様に攻撃し、長いモーションをするのは大変な苦労が有るのでクエストとしては不人気だった。

暗殺ギルド員を捕獲できたのはレベル差による補正のお陰だろう。この為、モンスターテイマー系の職業は味方が増えないとレベルが上がらないのに味方を増やすにはレベルが必要と言うジレンマに陥っていた不遇職だったのだ。


「懐かしい。」


思わず呟いた言葉は歳を重ねた人間特有のものだろう。

精力的に働いている街人達を路地裏から眺める。異国特有の街並みに思わず一人、疎外感を感じたのだった。



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