みんな大好き戦争クエスト
ゲームには立ち回りと言うものが有る。
例えば魔術師であれば、遠距離から敵を攻撃するのに対して、攻撃された敵モンスターは遠距離から近付いて来る。つまり、魔術師は近付いて来る敵から一定以上の距離を取り続ける必要があるのだ。
逆にパーティーの盾となる槍使いは、敵モンスターの最前線とも呼ばれる至近距離で戦う。後ろに盾が有っても何の役にも立たないのだからそれは当然の事だった。
月光騎士は数ある職業の中でも特殊な立ち回りで在り、スキル毎に近距離、遠距離と適正距離が存在する。
近距離で敵に当てるスキルを中距離で当ててしまうと威力が激減するし、敵勢距離で当てる事が出来たスキルに関しては他の職業を一時的に上回る程の威力を発揮する。
此れは、ある種の無双ゲーに近い立ち回りだった。
1つのゲームで職業毎に立ち回りが完全に違うのはこのゲームの魅力の1つでもあったのだ。
魔術師であればシューティングゲームの様な。
狩人であれば忍者ゲームの様な。
格闘士であれば格闘ゲームの様な立ち回りが特徴的で、その様々なゲームジャンルを混ぜ合わせたゲーム性は多くのユーザーからの好評を得ていた。
立ち回りが違うことからスキルの特徴もまた異なり、職業によって得意なクエスト・苦手なクエストと言う差別化が明確に生まれる事となったのだった。
同じクエストをしていても職業によっては難易度が変わると言った事は良く在る事で、今回の戦争クエストは広範囲殲滅が得意な舞剣士、魔術師、月光騎士と言った職業が得意とするものである。
戦争クエストには波というラウンドが設定されており、波1では小手調べの雑魚。波2では特殊攻撃をする雑魚。波3では・・・。と言った様に波を重ねるにつれてどんどんと敵が強くなって行くのが特徴的だ。
戦争クエストでの波は合計5回。最後の波ではボスキャラといった敵キャラクターが1体追加される。
各、敵キャラクターにはポイントと言うものが設定されており、敵の強さによってポイントの変動が有る。戦争クエストではその獲得ポイントによって報酬が変わると言う仕組みで在った。
だからこそ。
「なんで俺。1人なの?」
このただっ広い平原に自分だけがただ1人、ぽつんと立って居る現在の状況の意味が良く解っていなかった。
「まぁ、ええか。」
戦争クエストでは報酬金額が高い。だからこそゲームのプレイヤー達は多くの場合、戦争クエストを受注可能になった時点で奪い合う様にして、クエストに参加するのだが、今回の戦争クエストでは私1人での進行になりそうであった。
戦争クエストの特徴として、参加人数とレベルに応じてクエスト難易度の調整が成されており、クエストの参加人数が多ければ多い程高レベルの敵キャラクターが登場する事となる。
特にボスモンスターに関しては参加者と協力してでしか倒せないような、レベルの高いモンスターが登場する場合が殆どで、そのモンスターの部位破壊の報酬だけでも他のクエストの報酬よりも高い傾向にあるのだ。
私のレベルはメインストーリーを終了させた時点で最高レベルに達しており、その後の覚醒クエストを完了させているので上限が更に開放された最高到達地点。
参加人数でボスの強さが決まり、参加人数の平均レベルで雑魚の多さが決定するので雑魚が多く、最弱のボスが登場するに違いない。
楽と言えば楽だが・・・。楽しくない、単調なクエストになりそうだ。
「おっ。来た来た。」
遠目で見えるのは、敵軍隊の登場シーン。大軍が砂煙を上げて遠目から確認できるのは群れの威圧感が出ている。
戦争クエスト開始前に強制的に見せられるムービーでもあり、運営の気合の入りようが良く解る。
「準備開始ぃ~。」
こうなってしまっては、ステータスアップのアイテム作成も無駄になってしまった感が在ったが、タイムアタック気分でやれば、少しは楽しいだろう。
大規模な狩のやり方は簡単で、『相手を纏めて攻撃する』だ。高威力のスキルには長いクールタイムが存在し、連続で使用できない。だからこそスキル範囲に如何に敵を纏める事が出来るのかが重要になって来る。
他にプレイヤーが存在していないので自分から突っ込んで移動スキルを無駄に使う必要はない。勝手に纏まってくれるのであれば待つのが最善。
敵の登場から暫く待てば私の四方を囲むように敵が進軍して来る。
「待っていれば、こうなるのか。」
通常のプレイでは敵が進軍する前に波1は終了する。というか雑魚しかいない波1では、最上級レベルのプレイヤーが何人も居るので敵は1、2分もすれば消えている。
最後まで展開し切った陣形を見るのは此れが初めての事だった。
敵の指揮官が声を上げて攻撃を仕掛けて来る。これも始めて見た。
「ちょっと楽しいな。」
通常プレイでは蒸発する雑魚モンスター達の戦略性のある陣形に加えて、恐らく誰一人として見た事が無いであろう現状が案外、運営は良く作り込んでいたんだなぁ。と思わせる動きだった。
強い敵を倒すのも楽しいが、小さい生物に目を向けてその在り様を観察するのも面白い。
私は敵が攻撃してきた事を核にすると『パワーシード』を服用する。力のステータスを上昇させる錬金アイテムだ。
全身が一瞬、紅いオーラの様な物に包まれる。アイテムを服用した時に現れるエフェクトだ。
【紅い月の演武】は一定時間、自身のステータスを極大上昇させるスキル。大剣を頭上で大きく一回転させると白銀に輝く大剣が白い満月の様に見えた。
直ぐ様、近付いて来た敵に【月光斬】。月を半分に割ったと言われる極大威力の横薙ぎが半径180°。前方24mまでの高範囲で放たれた。密度の高い陣形のお陰で、気持ち良く敵を巻き込める。
高威力のせいで砂埃が一面に舞った。視界はやや曇ったが陣形は確認しているので大した問題ではない。
次いで【ブレードカーネイジ】。下から上に切り上げる様に大剣を振ると前方32mまでゆっくりと斬撃が飛んで行く。斬撃が通過した後には綺麗に道が出来ていた。
私が斬撃の道を確認した直後に上方から弓矢が振って来る。
「はーい。【満月】」
足元に複雑な円形の魔方陣が浮かぶと大剣を中央に突き立てる。自身と魔方陣の上にいる味方プレイヤーを強化、ガードするスキル。ガードする際に範囲内の攻撃エフェクトを薙ぎ払うアクションが発生する。
再度、弓矢が雨の様に降って来たので【守護光玉】を発動。周囲に8つの光る珠が回転し、空間に溶ける様に消えて全てのスキルクールタイムをリセットする。そして再度【満月】。
クールタイムが長い月光系のスキルを連続して使用したので5次職から解放されるルナティックゲージが溜まる。
これは、ゲージを最大まで溜める事で発動できるスキルを使用する為の物。
【朱月】。攻撃速度を1.8倍するスキル。大剣を自分の胸に刺す事で全身に紅いオーラが炎の様に揺らめく。
「どう見ても貫通してんだよなぁ。これ。」
見てくれはグロいがこれをしないと月光騎士は話にならない。
「さて、本番と行きますか。」
高速紙飛行機と呼ばれた職業の真価が今、此処に発揮される。




