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白騎士さんが通る  作者: 煙道 紫
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白い絶望 その5

軍の殆どを壊滅させて白騎士が私に迫る。

私は【双牙】で白騎士を迎え撃つ。双剣をそれぞれ横文字に薙ぎ払う様に切りつける双獣流(そうじゅうりゅう)の剣技で双剣の軌跡に青白い閃光が光った。


(これは・・・威力が向上している?)


私にとってはよく使う技の一つで慣れ親しんだスキルだ。威力も間合いも熟知している。繰り出した剣は速く鋭く重厚で進化とも取れる威力の上昇は寧ろ、他の技と言い張っても良いだろうと思わせる。


白騎士は大剣を一回転させて私の【双牙】を受け流す。


(技の合間に大剣を回していたのはこの為かっ!)


白騎士は相手の攻撃を掬い取る様に受け流す防御を含めた連撃を我々に見舞っていたのだ。剣士の基本は『攻撃を受けない』事にある。特に大剣を持つ白騎士は装備の関係上、盾を持てない。大剣を両手で使い受け流すのは盾の代用として十分な性能を誇っていた。


受け流されたと認識した瞬間には武器を絡め盗られない様に双獣流奥義【飛天乱舞】を使用し左片方の剣を手放し、右手の剣で白騎士に突進攻撃をした。白騎士は其れを半身で避け大剣を振るう。


(ッズ------)


私の首筋目掛けて横薙ぎに払われた剣の軌跡を認識する前に頭を下げて回避。剣筋が見えないで在ろう事は望遠鏡で確認していた為に動きに淀みは無い。


頭頂部を暴風が奔る。余りの威力に空間が斬れ、真空状態になった空間を補填するかのように周囲の空気が剣の軌道に奔って行ったのだ。


(通常攻撃でこの威力か!)


遠目で見た時の理解不能な動きではなく、明確に殺気立った剣筋から先程とは違う何かを感じていた。

白騎士にとって此れは技ではなく、唯『剣を振った』だけに過ぎないのだと肌見で感じる。


私は下げた頭のままに手放した剣を空中で拾い、白騎士の開いた胸に右手で切りつける。双獣流奥義【飛天乱舞】は決まった攻撃動作は無い。ただ、相手の攻撃を受け流すか回避して攻撃を誘い攻撃後の隙を突く技である。飛天とは、相手の油断や隙を誘う為に片手剣を片方投げ飛ばす様から付けられたものだ。


特に剣技では相手の剣を絡め盗る動作が多く使用される。最終的には兵士は『剣での斬り合い』ではなく『寝技の応酬』となる戦場では如何に相手を無力化するのかが重要であり、相手の武器を絡め盗り遠くに飛ばすのはどの流派でも技として存在する程に必須と言える技能だった。


白騎士はそれを剣の柄で弾き、軌道を変えると私の視界の下から剣が斬り上がって来た。


(くっ!)


思いっきり空を見上げる様に首を上げると避け切れなかったのか顎の先が縦に割れた。


顎先から唇の下までパックリと裂傷が走る。

すかさず白騎士の薙ぎ払い攻撃。多くの兵士を纏めて半分にした技だ。これは喰らってはいけない。


私は首を上げた慣性をそのまま生かして大きく飛び上がった。靴底の滑り止めが一部削れ、如何にか薄皮一枚で回避できたと言った様である。


そのまま空中から双剣で下突きを繰り出すと白騎士は大剣で受け止め、そのまま私ごと大剣を回転させた。


(しまっ!)


背中から地面に強く叩きつけられる。受け身は取る事が出来たが白騎士の力が余りにも強い為、殆ど意味を成していなかった。叩きつけられた時の衝撃で身体がバウンドしたので、そのままバックステップで距離を取ろうとしたが、一瞬、バックステップで白騎士を確認できない所に、そのまま接近され柄の先で突き刺す様に攻撃をされた。


「ガッ!」


大剣でこんなにも速く攻撃出来るものなのか!


大剣は当然ながら重い。重い物を持ちながらの戦闘は必然的に体力を使うし距離を取られてしまうとその分、移動する必要が出る。重い物を持ち上げるだけの力に戦闘を継続する為の持久力。それに速力まで加わっている。


1撃は重く、強くとも、それを連続で繰り出すなど何の冗談なのか。

そして、速さを得意とする双剣使いに追い付いてくる攻撃速度は明らかに常人の域を出ており、私に進化の力を感じさせない程だった。


しかし、絶望の中でも胸の奥からは闘志が湧き上がって来る。白騎士を見た瞬間。ある種の諦めに近い感情が湧いた事が嘘だったのかと思える様に。


(!?私の中に何か・・・技が眠っている!)


そして、この緊急時に感じたのは新たな技が生まれる前兆。多くの流派の始祖達はこうして戦場の中で技を閃き、己を磨いて行った。私が好んだ双獣流は獣人の王であるライオネス2世が世に残したモノの一つであり、双獣流は双剣術を使用する者の基礎となり様々な流派が枝分かれして行った。


誰でも簡単に出来る基礎を詰め込んだものだが、実力者が使用する双獣流はその趣が完全に異なりそれこそが、基礎力の表れでもあるのだ。


双獣流は『基本的な事を極める』というのが流派の目的で在った。そして基本的なものと言うのは柔軟にその形を変えることが出来る。自分の使いやすいように変化させる事で多様に枝分かれして行く流派を見るのは獣人族の信仰する聖樹の様で美しいとも思っていた。


(私も・・・進化の時なのだ。)


格上と戦い急激に実力が上がっていくのを感じる。私はまだ、成長出来た。

そして、


--------(此れが最後の技となる)。」


神経を研ぎ澄まし、目を閉じる。

暗闇の水面に一滴の雫が音を立てて落ちて行った。

どう動けば良いのか。湧き上がる心の熱が全身を包み其れを教えてくれた。


「双()()()奥義」


そして、この瞬間(とき)だけ・・・声が戻った気がした。


【無双乱舞】


白騎士へ向かい地面を削りながら、私の【双牙】が縦横無尽に切りつける。

本来、()()が必要な【双牙】を連続で放つのは今の状態でも腕が引きちぎれそうな程の苦痛を伴い、其れでも無呼吸での重厚な連撃は至近距離にいた白騎士を容易く飲み込む。


鉄を削るような凄まじい連続音が辺りに響き鼓膜を震わせた。


「ハアッ・・・ハアッ・・・ハアッ・・・」


力の限りの連撃が終了すると私はその場に倒れ込んだ。無呼吸での連撃は私の肺の空気を全て使用し、意識を遠のけ、重厚な連撃の代償である腕の筋肉は所々断裂しているのを感じた。回復薬を飲まねば腕さえ上げる事は出来ないだろう。

地面が削れて濃い砂煙が立ち上り白騎士の状態は確認できない。荒い呼吸が白騎士の安否を確認する事を拒んだのだった。


(やった・・・か?)


そう思った瞬間。大地を割るような叫び声が聞こえた。


「■■■■■■■■■■■■ッ!!!!」


(ああ、そうか。お前は。)


砂煙の中からは無傷で悠々と此方へ向かって来る白騎士の姿。しかし、私は満身創痍で抵抗は出来ない。

自らの運命を察したのだろうか。全ての体力を使い切った身体が微かに痙攣した。


(此れでも死なんのか・・・。)


白騎士はわた/し・・・の・・・く・び・・・を。


意識が無くなる中、私は真の自由に出会った。

次回は2/12の投稿になります!

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