錬金術
1晩、宿に泊まってギルドに向かう。
討伐系のクエストを熟そうと思っていたのだが、露店では低級で練度の低い薬しか売っていなかったので自分で錬金するしかない。
そして、錬金には素材が必要だ。この素材集めが面倒で、エリアにランダム生成される採取できる素材を複数集めなければならない。
当然だろ。というプレイヤーも居たが、採取ポイントもランダム生成であるので世界中を回って素材を採取する必要があり、ネットゲームと言う特性上、大勢のプレイヤーが素材を採取するので一種の争奪戦の様相を示していた。素材を集めるのが面倒なプレイヤーはゲームプレイヤーが出店出来る露店機能を使用し売買を行ったが、争奪戦の報酬とも言える錬金素材たちは非常に高価で取引されていた程だ。
需要が高い理由はアイテムを生成できるからではない。錬金スキルを全て上げ切る事で発生する特殊ポイントと言うものがあり、このポイントはスキルを強化する為に使用できるのだ。
スキルを自由に強化できるのがそれぞれのプレイヤーそれぞれの性格が出る部分とされていたが、ゲーム内のダメージ計算式を発見した上位プレイヤー達が最も効率的にダメージを与えることが出来るポイントの振り方をインターネット上で発表したので、プレイヤーそれぞれの性格が出るスキル振りと言う部分は形骸化して久しい。
錬金はアイテムを生成する為の技術では無いのだが、今回は助かった。自分で錬金する事でステータス上昇効果の付いたアイテムと最上級の回復薬を錬金する事が出来る。
「さて、そう決まれば素材が必要な訳ですが・・・。露店を確認するかー。」
最高に面倒な素材集めは初心者の金策になっていた。先ずは露店を確認し、無かったら素材収集ツアーに出かける。丁度、課金した乗り物もあるので採取は最速で行う事が出来るだろう。
「ぴぃっ!」「ひっ!」「・・・ブクブクブク」
・・・露店を覗く度に怯えられている気がする。白騎士装備の時も町民に怯えられていたが黒金糸装備の場合は野良パーティーまで組めたのだ。比較的真面と言うだけなのだろうか?
ここは異世界。間性の違いは文化の違いから生まれるのだと思っている。確かに新宿でフルプレートの白騎士が路上を歩いていたら2度見するが、ここはファンタジー系の異世界では無かったのだろうか?冒険者ギルドで見た冒険者達の格好は、其れこそ現代では見る事が出来ないような軽鎧を着込んでいたのだが。
「うーん困った。如何したものか・・・。」
普通、ネットゲームに現実世界で着るような洋服は無い。大抵の人間は現実と違う物を求めているのだから当然だろう。だからこそ私は、町民のような汚れた服を持っていないのだ。
TPO=時間(Time)、場所(Place)、場合(Occasion)と言うビジネスマナーが有る。時間や場所や場合によって服装や言動をよく考えて行動すべしと言うマナーになるが、今怯えられているのはそういう事なのだろう。一応、他の装備も持っているが少々性的に過ぎる。おっさんが着るには精神が削れ過ぎるのだった。
「まあ、仕方ない・・・か。」
正直、えちえち装備を着る気はないので慣れて貰うしかない。露店を確認した限りでは一定量の素材を入手出来た。露店で良いと思ったのはそれぞれの素材に値段が付いている事。驚かせた詫びに少々多めに金貨を払い、素材を入手していく。
「後足りないのは・・・ソウルエディタか。」
最高位の錬金術のアイテム精製では、レア素材の『○○の魂』を使用する。ソウルエディターはモンスターを討伐した際の魂系素材の総称で出現確率は1%程度。
少なく思えるが雑魚狩りでも得ることが出来るので比較的入手はし易い。
魂を取り込むことで一時的に材料になった魂に宿る特性を取り込むことが出来る。と言う設定だった気がする。ステータス上昇系のアイテムは全て敵モンスタードロップのレア素材が必要だった。
必要なのは『力』の特性を持った魂。戦争クエストでは攻撃力と殲滅力が正義なのだ。
「クエストで集めるか。簡単な飛竜で良いかな。」
通常モンスターは逃げる事もある。前回のボス討伐で痛い目を見た私に慢心は無い。飛行速度も遅い雑魚を狩る。ボス系統のモンスターでは無いのでスキルによっては一撃だ。
一応の流れが決定したのでさっさとギルドへ向かう。今日もギルドは静かだった。恐らく、パーティーチャットを使用して会話しているのだろう。
全体に発言し、全てのプレイヤーが確認できる全体チャットと違って、パーティーチャットはパーティー内にのみに閲覧可能なのだ。固定パーティーが居るのであれば態々全体に発言する意味が無い。
つまり、野良パーティーは組み難いと言う事だろう。先日は偶然、パーティーを組むことが出来たのだが、本当に幸運だったのだと思い知った。
私は飛竜の依頼が描かれた依頼書をクエストボードから剥ぎ取り、受付に持って行く。
簡単な処理を済ませると乗り物に乗って討伐地域へ向かうのだった。
森・丘と呼ばれるフィールドで飛竜の討伐を行う。1時間で20個のソウルエディタを入手した。これで大体60~80個のステータス上昇アイテムを錬金できる。
私は宿に帰り、部屋に籠もると錬金術を行う。個数は多いがゲームの仕様上、精製には数十秒しか掛らない。
「よしっ、完了。」
私は一息付いてベッドに横になる。クエストの準備は完了した。今回の依頼で戦争クエストの発生条件も満たした。後は、
「上位者との競争だ。」
戦争クエストは金策に有効だ。大抵のプレイヤーが挙って参加するので獲物は奪い合いになる。だからこそ攻撃力が重要になって来るのだ。
魔術師 ・ 月光騎士 ・ 舞剣士。注意するのはこの辺りの職業だろうか。イベントの様に楽しいクエストで競争なのだ。全力でやらなければ楽しくない。
戦功によっては多くの金貨が手に入る。私は気合を入れて明日に備えるのだった。




