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白騎士さんが通る  作者: 煙道 紫
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即死級ダメージ

「そんな事ある?」


私はクエスト失敗に驚いていた。ゲーム内のモンスターはプレイヤーのレベルや人数は関係なしに襲ってくる。それは、レベル1の雑魚モンスターも同様であり、そうでなければゲームにならないのだ。


プレイヤーから逃げるモンスターも存在はするがボスが逃げるなど聞いた事も無い。通常のプレイではありえない事態に私自身付いていけずに、みすみすボスを逃がすと言う間抜けな事をしてクエスト失敗の汚名を着たのだった。


しかし、現在時点である仮説が浮上する。私はこの世界は完全にゲームを模した世界であると考えていた。


例えば魔法の存在は科学では解明できない部分が多すぎるし、そもそも私が装備している黒金糸装備は白い布が憎しみで黒く染まったと言う不思議素材。

露店では体力を一定量回復させるポーションが売っているし、ギルドで殴って死亡させてしまった冒険者はスキルで生き返った。


めちゃくちゃだ。現実としてあり得ないことが多すぎるが為に、この異世界の仕様はゲームに則しており、食事も睡眠も必要としないこの身体はゲームのままの原則を以てこの異世界に精神が入れ替わった様なものだと考えていたが・・・。


「ある程度の不可思議を受け入れた現実なのか?」


普通、何もない処から火だの水だのは生まれない。確かに空気中には水分の元となる原子は存在するが水分にする為には化学式的に考えて加工が必要だ。しかし、この異世界ではスキルを使うだけでそれが出来る。しかし、そこに一摘まみの現実を入れるとどうなるか。


ボスでも格上と相対した場合には逃げるし、NPCは現実めいた生活を送る。

ファンタジーである。この世界には理解できない部分が多すぎる。


大昔、大陸は平面で世界の端から水が流れ出ていると考えられていた。勿論の事、現在はそのように考える人間は居ない。

しかし、この異世界では本当に星が球状ではなく平面である可能性さえあるのだ。


「困ったな・・・生活の基盤が必要になってしまった。」


現在、目立たない黒金糸装備をして居るとは言えども、帝国に溶け込むには通常の人間のふりをする必要がある。食べなくても寝なくても良い生物など居ないのだから、新種の生物として大人な研究室で研究素材として囚われてしまう可能性があるからだ。


「くっ殺されたくないし・・・郊外に家でも買うか?」


選択肢は複数ある。何処にも根付かずに旅をするか、帝国民として溶け込むか。アデュート帝国が冒険者ギルドを優遇している事は設定に描いてあった気がするので、なるべく帝国民として溶け込みたいのだが人と関わると食事や睡眠の事がばれる可能性がある。


食料を買っても、買った分だけ廃棄が出るのだから不審に思われていくに違いないのだ。

つまり、人との関わりの少ない郊外での生活が理想か。旅に出るのはおっさんには厳しい。若ければ・・・と思った事は少なくないのがおっさんだ。


「お金・・・溜めるか。」


資本主義の国から来たのだからお金で何でも解決したい。戦争クエストは依頼を後3回熟さないと出てこないし、通常の錬金のレベルが低すぎるせいで、出回っている回復薬は低練度の物ばかり。普段帝国民が食べて言える食事についてもステータス上昇の効果が付与されているとは思えない。


依頼を3回熟す前に戦争クエストをする為の強化剤は自分で作成する必要がありそうだった。

効率的に動けるように脳内で攻略ルートを構築していくと陽が暮れそうだった。


「宿屋に行くか。」


白騎士装備では宿屋の娘さんが動かずに固まっていたのだ。個人的には気に入っている装備だが他人に受け入れられない事には仕方ない。私は黒金糸装備のまま宿屋の扉を開けた。


「・・・・・・・・・」


言葉が通じない事は解っているので金貨を出して指を1本立てる。

1日の宿泊をすると言うジェスチャーである。どうにも、受付の娘さんは無口なようで、いつまでも動かない。

私が困っていると奥からオヤジさんが出て来たので、同じジェスチャーをした。今度は伝わった様で、鍵を受け取ったので鍵に着いた部屋番と同じ部屋に向かって行くのであった。


部屋に入ると部屋の中の水瓶の中の水を小さな桶で掬い布を濡らす。今日だけでも色々な所へ行ったので身体を拭いたかったのだ。

黒金糸装備を脱ぐと少しの解放感と共に()()()が現れた。私は其のまま左腕から・・・。


「うん?白い肌?・・・・・・あっ」


私はキャラクリエイトで月光騎士(ムーングレイバー)を選んだ際に月から来た兎をモチーフに少女キャラとしてキャラクタークリエイトをして居た事を思い出した。

ゴツイおっさんのケツを見続けたくなかったから少女のキャラクターにしたのだ。しかし、今になって・・・ゲームのクリエイトのままの身体を持って来てやがる。


これは、思った以上にダメージがデカい。中身おっさんやぞ。


「ああぁぁぁぁあぁあぁぁぁ」


長い溜息と共に少しの後悔。仕方ないと直ぐに立ち直れないのは私が未熟だからだろうか。

身体をさっさと拭い、黒金糸装備を装備する。早めに寝て忘れよう。



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