パパ、ごねる
「嫌ぁー!もうおうちに帰るー!」
これ程の強い決意は生まれて初めてだ。年寄りはもう十分に生きた。これ以上頑張んなくてもいいのではないか。
「くっ、殺せ!」
くっころパパと化した俺はごねた。とにかくごねた。スーパーで泣く幼児の如くごねた。
俺がごねた結果、衝立を設置し、相手の顔が見れない様にする事と耳栓をする事で妥協したのだ。
女衆の時は衝立に覗き穴をつけてもらう。勿論嫁には内緒だ。絶対だ。
俺は震えながら数をこなす。アイドルの握手会というのはこんな気持ちなのだろうか。
――ピコーン。俺の第七感が指の舐め方が変わった事を告げる。しかしこの展開はもう……やめるんだ俺……
衝立の細工を外すとそこに映る光景は――当然の様に男衆でした。
「女衆の方はこっちに並んでくださーい」
女衆は嫁の指を吸う。衝立で見えない……
そう、この物語のせいで特殊な性癖の人間を生み出す訳にはいかないのだ。
うちの娘に欲情などさせないし、ケモナー、エロフなどはもっての他だ。教育に宜しくない!
決して腹いせではないのである。
ちなみに俺と嫁の血を吸った村人はしばらく淡い光に包まれてたから多分、色々良かったんじゃないでしょうかね。どーでもいいわ。
血の悲劇を乗り越えた俺はさすがに疲れていた。嫁もそこそこ疲れていた。
猫の芋虎は慰める様に俺をなめ、村長を思い出し一瞬消えたのであった。
今日はもう寝よう。明日は行きたくないからクローゼットは封印しよう。
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俺の精神に多大なる犠牲をだしたものの家族全員無事に帰還できた。
「それにしても芋虎でかくなったな……」
ゴロゴロと喉を鳴らす芋虎を撫でる。獣医師さんに何と説明したものか……もう芋虎が従魔って事でいいんじゃないだろうか……
「異世界に行って肌の調子がいいわー」
嫁は上機嫌だ。願わくばこの平和が一生続いてほしい。
『パゥ!(またいきたい!)』
舞ちゃんは元気だねー。
「魔力は感じるか?スキルは使えそう?」
「うーん、多分無理だと思う。なんか空気が違うよね」
「そうだな、俺もあっちほど気を感じられないし、舞の念話のボリュームも小さいもんな」
検証すべき事も増えた。異世界のパワーやスキルがどの程度使えるのか
また俺が気を失った瞬間『眠った』と判定された事。これはある意味さらに安全になったといえるが、まだ『死んだ』時どうなるかが分からない。
大変心苦しいが小動物で実験するしかないだろう。
後は『魂の系譜』システム。嫁はあんまり強化されてない感じだが、舞はどうなんだろうか。聞いてみたが『ウゥー(わからない)』との事。まあ、おいおいってとこだな
とりあえず2、3日冒険はお休みしよう。村長の顔は暫く見たくない。




