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ピースオブレペンス   作者: くらげ
一学期
2/22

王子様の平民勧誘

 講堂で始業式を終えて戻ってくるとすぐに休み時間に入った。

 そして隣の金髪男子が話しかけてきた。


「おい。平民。平民はお前一人だ」


 いや。この人、さっき私の名前覚えたって言ったよね。言ったよね?

 私の聞き間違い?


 まあ、一歩学園の外に出れば、比率は逆転するんだけれど。


「俺は平民というものを知りたいと思う。だからおまえを生徒会の雑用係に任命する。ありがたく思え」


 はあ? 雑用って言い切ったよ。この人。

 というか私に断る権利は?


「あの……ご意見してよろし……」


「あ?」


「やっぱりいいです」


「よし」


 満足げに「よし」って言われても……


「そしてお前」


 すごく偉そうにレイス様を指さす。


「お前、頭はいいんだろう? 生徒会に入れ」 


「は? 入らないよ」


 あまり品の良くない本をすごくつまらなさそうに読んでいたレイス様がちょっとだけ顔を上げて、またすぐ本に目を落とす。 

  さっきからその本のタイトルがすごく気になるんですけれど。

 彼の机には『鉱物図鑑』『ワイン富豪列伝ー私はこうして成功した』『世界は丸いか平たいか』『臨死体験』他、ばらばらなジャンルの本が積まれているのに、なぜわざわざそれを選ぶ?

 というかそれ学校に持って来てはいけない本のような気がするんだけれど。


「せめて表紙隠しなさいよ」

「読む?」

「読まないわよ!」


 腐本にアルミナがぷりぷり怒っているのを尻目にアルミナの前の席の女の子が、彼の机に積んである本のタイトルを興味深げに眺めて彼に話しかけた。 確かプリムラと言ったか。


「そっちの『悪魔の料理』とかちょっと読ませてくれない?」

「いいよ。中身は郷土料理本だけれど」

「へー。お菓子とか載っている?」


「あるとしても問題は材料そろうかだね。できたら僕にも食べさせて」


「残念。彼氏と半分こするわよ」


 ああ、この子にも婚約者か彼氏がいるんだ。


「ところで、君の国の料理ってどんなの?」


 レイス様がこちらを振り向いた。急に振られても困るのだが。


「えー、生まれは他国ですけれど、育ちはこの国ですので、あまり詳しくは」


「どこの国の出身?」


 プリムラとレイス様はまだ見ぬ国の料理に興味深深のようだ。


「バルバスという南大陸の国です」

「昔は南大陸は悪魔の国って言われていたから、この料理本はそこらへんの料理が多いよ」


「悪魔の国?」


 覚えていないとはいえ自分の故郷をそんな呼ばれ方されたくない。 


「たまに南大陸しかない病がこの大陸で猛威を振るうことがあって……。まあ、向こうからすればこっちが雪の悪魔の国なんだろうけど、君の国を悪く言うつもりはなかったんだ。ごめん」


 顔に出てしまったようだ。レイス様が頭を下げる。


「いえ、私自身はこの国の民ですから」


「俺の命令を拒否するのか?」


「王子様は知能足りないの。さっきの話すっかり忘れちゃったの? 僕、君たち嫌いなんだけれど」


 今、なんかとても怖い単語がまぎれていたけれど、『王子様』って比喩だよね? 比喩だよね。 

 誰か比喩って言ってぇー。


「不敬罪で逮捕するぞ!」


「ふーん? 別に僕はどこだろうと大差ないと思っているからご勝手に。

ただ、生徒会に入るのは拒否させてもらうけれど」


 今だ。どさくさにまぎれて断るんだ。最後のチャンスは今しかない!


「私も……そういうものに時間を拘束されるのは。荷解きもありますし」


 死亡寸前の蚊が鳴くようにお断りの言葉を述べる。


 屋敷から連れてきた侍女がもう部屋を整えているだろうが。


「あ?」


「いえ、荷解きがあるので本日は……」


「ああ、まだ下僕を集めるのに時間がかかる。生徒会に来るのは明日でいいぞ」


 最後のチャンスを掴み損ねてしまいました。


 


 王子様(仮)は次の休みになるとどこかに行ってしまった。


 「あんたってば本当に度胸あるわね」


 「あれで断ったら、私ここにいれない気がするんです。 あの、席替えって二学期にありますよね?」


 ご令嬢方の視線がびしびし痛い。なんなら今すぐお譲りしますよ?


「そうね。いや……でも」


 「そもそもなんで私がおーじ様の隣なんでしょうか」


 がちがち震えた声でたずねると、


「下手に貴族のご令嬢を隣に置いて、恋仲にでもなったりしたらまずいからだと思うよ。この列、相手がいる令嬢で占められているし。」


「私、相手とかいない」

「どこの勢力圏にも属さない上、間違いが起きたら城のお堀に浮かべれば済むからじゃない?」


「浮かびたくないです。それにガ……俺様タイプはちょっと……」


 ぐっと声をひそめて 王子かなんだか知らないがガキ大将にしか見えない。


「そうよね~。あんなんでアズライト様の勧誘なんてできるのかしら」


 アルミナが教室の開きっぱなしの扉を見てため息をついた。



 基本掃除は清掃員がやってくれるのだが、学期の初めと終わりは机への「よろしく」と「ありがとう」を込めて自分で拭くことになっていた。


「私の机拭いときなさい」


 私の顔に絹の雑巾がぺちゃりと投げられた。 絹だよ絹。もったいない。

 私の読んだ小説では牛乳を染み込ませた汚い雑巾を投げるものだと思っていたけれど、普通に冷たい水だ。ほっ。


「侯爵令嬢! 侯爵の娘にふさわしい振る舞いをしたらいかがですか」


 アルミナが、なぜか私以上に怒っている。

 それよりちゃんと絞れていないよ。侯爵令嬢さん病弱なのに、きっと無理して学校来てるんだね。


「あなたなんて子爵じゃない」


 ふんっと鼻をならす侯爵令嬢の言葉にアルミナが 


「生徒会に入りたいなら、ちゃんと王子様に頼めばいいでしょう?」


「侯爵の枠はすでに埋まっている。お前などいらん」


 王子様ばっさり。

 病弱ななんとか侯爵令嬢ちゃんをちょっとは労わってあげて!

 その上、教師は目の前にいるのに見ないフリ?


「王子様。最低限の連携も取れない者にアズライト様は手に入らないよ」


 それだけ言うとレイス様はさっさと自分の布巾を持ってさっさと侯爵令嬢の机を拭きに行った。


「これできれいになった」


 にこっとひまわりのような笑顔を作ったレイス様を侯爵令嬢はぎりっと睨んだかと思うとその鋭いまなざしをこちらに向けた。


「この女に命じたのです! これでは意味が無いのよ!」


「ふーん。どんな意味? ちゃんと説明してくれる? 1から10まで」


 にこにこと笑顔でレイス様が説明を求める。


「殿方が口を挟むことではありませんわ!」


 病弱な侯爵令嬢さんあんなに大声出して血圧大丈夫だろうか。


ラインハルト・レイス……不思議系。王家を恨んでる。


アルミナ・コランダム……婚約者あり。


プリムラ・コーニッシュ……趣味お菓子作り。婚約者あり。




病弱な侯爵令嬢……新キャラ。

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