表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

目覚めてしまった意思

本作品はカクヨムにも投稿しています。

「このまま全身の感覚を無くして、生かしたまま解剖してもらうことにしよう。その方が、研究のためになる」


 脱力して膝をつく杠葉ゆずりは蒼斗あおとを前に、僕──キオル・プロテオは淡々と告げる。


 厄災の獣に世界を滅ぼされ、自身もまた力を刻まれた男。

 同情はしてやるが、命令は命令だ。


 それにこの男がいるからあの人は、リゼさんは立場を悪くしているんだ。

 この男がいなくなれば、あの人に対する上からの圧力も弱まる……はず。


 そのためにも、この男の意識を完全に奪う必要がある。


「……ん?」

「ははっ……! くはははははッ!」

「っ!?」


 突然杠葉の気配が変化し、背後に跳ぶ。

 杠葉は大きく口を開け、高らかに笑っていた。


 なんだ、いきなり?

 絶望的な状況を前に頭がいかれたか?


 ……いや、違う。

 こいつ、一瞬で雰囲気が変わった……?


「あーあ」


 膝立ちのまま、杠葉がニヤリと笑う。


「お前、死ねよ」


 瞬間、杠葉の背中から何かが生えた。

 細く黒く、よくしなるそれは鞭のようで、先端部には剣を思わせる鋭利なパーツがある。


 あれは──尾、なのか?

 数は四本、背中からクロスを描くように生えてきたそれは、切っ先を僕に向けた。


「っ!?」


 速いっ!?

 瞬く間に伸びた尾を、辛うじて避ける。


 直後、立っていた場所に四本の刃が突き刺さって炸裂した。

 そして広がる粉塵を振り払うように、突き破るように、再び尾は伸びる。


 感覚を絶つ……いや、触れられるか?


 僕の能力は「触れた部位の感覚を一定時間無くす」もの。

 部位は腕や足、胴体や頭といった区切り方をし、効果時間は3分間。

 そこだけ聞けば無法な能力のようにも思えるが、当然弱点がある。それも単純な。


 1つ、体力消費が激しい。ターミナル人の持つ異能は、心臓が生み出す魔力を「こういう能力」として外部に放出する。

 僕の場合、魔力を「触れたら感覚を奪う能力」という形に脳内で加工し、相手に触れる瞬間に発動するわけだ。


 2つ、そもそも感覚を無くしているだけで、動かせなくなるわけではない。


 3つ、間合いが短い。手で触れることが発動条件である能力は、当然手の届く距離までしか対象に取れない。


 4つ、これが最も単純にして最も致命的な弱点だが──。


「触れた瞬間、斬り飛ばされる……!」


 能力を発動する際、僕の手は特に強化されたりしない。

 そしてこれは能力の弱点と同時に僕の欠点でもあるが、身体強化、硬化系統の異能を僕は使えない。適性がないから。


 ……マズい、能力に覚醒していないと聞いていたのに、なんだこれは……!


 内心で毒づきながら尾を避ける。

 実質無能力者が相手ならと、中途半端に能力を行使したのが裏目に出た。


 このまま防戦一方のままだと、徐々に杠葉の体が元通りになってしまう。

 今は尾しか動かせないようだから回避に集中できているが、杠葉自身が動けるようになればどうなるかは分からない。

 恐らく能力の覚醒に合わせ、身体能力も底上げされているはずだ。


「おいおいおい!」


 杠葉が声を張り上げる。


「さっきまでの余裕ぶった態度はどうしたー? 雑魚みたいに逃げてばっかでだっせぇなぁ!」

「このっ、いい気になるなよ!」


 与えられた命令は捕獲であり、可能な限り傷つけることなく、と念を押されている。

 刻印持ちは希少で、人道的観点からも解剖や人体実験は認められていないが、それはあくまで建前に過ぎない。


 リゼさんを含めたこれまでの刻印持ちは、ターミナルで保護された時点で能力に覚醒していて、非人道的な実験を行うことができなかった。

 当然、抵抗された際に打つ手がないからだ。


 けどこの男は違う、はずだった。

 能力に覚醒していないからこそ、今のうちに解剖してしまおう、それが上の判断。


 だがこうなった以上、それは無理だ。

 なら、一番弱い、今この瞬間に殺すしかない!


「お前はここで処分する!」


 上着の下に隠し持っていた拳銃を抜き、引き金を引く。

 が、しかし。


「はっ!」


 尾が機敏に反応し、弾丸を叩き落す。

 精度が尋常じゃない……!


「なら……!」


 弾倉を抜き、別のものに交換。

 引き金を引く瞬間に魔力を込め、トリガー。


「がっ……!?」


 放たれた弾丸は黄金の輝きを纏って飛翔し、杠葉の尾を貫く。

 

 ──殺った!


「はっ」


 にやりと、杠葉が嗤う。


 瞬間、奴の右目が割れた。


 そして光弾は右目に吸われ、消滅した。


 ……いや、喰われた?


 杠葉の右目が変化して現れた、獣の顎のようなものに。


「動き止まっちまったなぁ!」

「しまっ……!?」


 四方から襲い来る刃。

 それを避けきれず、体から鮮血が流れる。


「おらぁッ!」


 杠葉が大きく跳ね、僕の体を踏み潰した。


「っ……!」

「雑魚乙!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ