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53.孤児院訪問 3

 子供達に孤児院の中のダイニングテーブルに連れて行ってもらい、改めてシスターとちびっ子達に自己紹介する。


「改めまして、アランです。妹のリーシェと……付き添いのジェンナイとフェッブだ」


「こんにちは、リーシェよ。昨日オッジとマーニに親切にしてもらったからお礼に来たの。まずはみんな手を洗いましょう」


 おやつの前は手洗いよね。どうやら洗面所はないみたいだ。「何で手を?」と呟いてる子供達がキッチンのシンクで順番に手を洗っているところを見守る。

 年長の子達はシンクに手が届かない年下の子を後ろから抱っこしてあげて、終わったら椅子に座らせていく。短時間見ているだけで、普段からこうして力を合わせて生活している様子が窺えた。


「じゃあ配るわね。今日の朝私とお兄様……お、お兄ちゃんとで、作ったのよ」


 ジェンナイに持っていてもらったバスケットからパウンドケーキを取り出し、人数分に取り分けてお皿代わりの紙に乗せていくと、お兄様が子供達とシスターに配ってくれた。

 たちまち「いい匂い!」とたくさんの声が上がったが、シスターは戸惑ったように呟く。


「こんな立派なもの、私も頂いて良かったのかしら……」


「もちろん、食べてみてください。それに、何かお手伝い出来ることがあったら教えてくださいね」


 シスターは潤んだ瞳を隠すように下を向き「ありがとう。みんな、いただきましょう」と抱きかかえていた赤ちゃんをなでていた。


「わー!初めてこんな美味しいの食べた!」

「すごい!何これ?美味しい!」

「っ!うまっ!」


 あー、良かったあ。子供が美味しい美味しいって食べてる姿って、なんでこんなに幸せな気持ちになるのかしら。心がポカポカしてきて自然と口が弧を描く。横を見ればアランお兄様もジェンナイもフェッブも満足気に微笑んでいた。


 あら、ジェンナイ少し泣いてない!?鼻も赤いし目も潤んでいるわ。


「……昨日は、悪かったな。酷いこと言った……」


 ん?ボソボソと声がした方を向くとオッジが赤い顔をして謝っていた。


「ううん、いいの。オッジとマーニは他の子より少し大きいのね。2人が年長なのかしら?」


「俺が7歳でマーニが6歳、マルツォとアプリーとユージンが4歳でマッジョが2歳。ジュンはたぶん1歳だよ」


「えっ、オッジ私の1つ下だったの?それにたぶん1歳って……??」


 てっきりオッジもマーニも5歳くらいだと思っていたわ。そうか、栄養が足りてなくて成長が阻害されているのかもしれない。


「ジュンは孤児院の前に捨てられてた時から赤ちゃんだったからよくわかんないんだよ」


 捨てられていたという話をなんて事のないように言ったオッジに、そんな事孤児院では珍しい事ではないとまざまざと見せつけられたようで胸にズッシリと重石が乗ったような気分になった。

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