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48.孤児

 

 護衛の2人が私達をかばうように前に出て何か言っていたが、全然頭に入ってこない……

 リーシェルの身体から体温が奪われたように熱が引いて、アランお兄様が握ってくれた手だけが温かかった。


「あ、私……そんなつもりじゃ……」


「うん、大丈夫。わかっているよ。リーシェは決して悪い事はしてないよ」


 お兄様が撫でてくれる背中に、やっと少し体温が戻ってきたようだった。頬を撫でられ、親指で目元を拭われて初めて自分が泣いていた事を知った。


 気がつくと馬車に揺られてアランお兄様に慰められていたようだ。


「怖い思いをしたね。街中では粗野な言動をする者もいる。特に孤児ならなおさら」


 ―――怖い?そうか、私は怖かったのか。あの子達がではなく、あの細い手足が、こけた頬が。

 心のどこかでゲームだと思っていたこの世界で、まざまざと見せつけられたのだ。

 自分と家族だけが助かればいいと思って、何も知らず

 、何も見てこなかった。私がぬくぬくと部屋で引きこもっている間にもその領地で満足に食事を食べられない人がいるなんて思ってもみなかった。

 自分の家族とゲームの登場人物以外の人にも生活がある事を、知っているつもりでも何もわかっていなかった。


「お兄様……孤児とおっしゃいましたが、あの子達はどこに住んでいるの?」


「きっと教会に併設されている孤児院ではないかな?フェッブがあの先に教会があると言っていたからね」


 私に出来ることは何もないかもしれないし、何か出来るなんて思い上がりかもしれない。貴族という安全圏から差し伸べる手なんて、とても傲慢だと思う。

 それでも、見てしまったあの子達が食事に困る生活なんてしてほしくない。


「明日も街へ……孤児院へ行きたいです」



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