40.領地に出発 1
いざ馬車に乗ろうと行ってきますの挨拶をお母様とお兄様にしようとしたら、どうやらアランお兄様も一緒に行くらしい。
「僕も領地の事はたくさん知っておきたいし、リーシェが心配だからね」
少しいたずらな笑顔にウィンクまでしたお兄様はキザな王子様そのもので、もう、本当ごちそうさまですっ!ってくらい可愛いかっこ良かった。
いっそのこと全員で行けたらいいのにと言ったら、お母様は王妃様主催のお茶会があるらしくどうしても外せないと悔やんでいた。
ちょっぴり涙目のお母様も可愛い……なんて思っていたらお父様と抱擁して
「朝起きて1人だなんて寂しいわ……」
「暫く抱きしめる事も出来ないなんて、胸が張り裂けそうだよ」
うわわわわー、桃色の空気醸してきたわ。
これ始まると長くなるのよねーとアランお兄様をチラリと見ると、どうやら同じ事を考えていたらしいお兄様と苦笑し合う。
お見送りに並んでいた使用人達は微笑ましく見守っていたみたいだけど、カルタムだけは死んだ魚のような目で微笑んでいたのは見逃さなかったわ。
やっぱり長年近くで一緒にいるとそうなっちゃうわよねー。わかる、わかる。
あ、カルタムに気を取られている間にちゅっちゅ聞こえてきたと思ったらキスまでしだした!
ちょっ、お父様、お母様……いくら軽い口づけだからってそんな朝から子供の前で……
思わず「先に乗っていましょうか」と言った私に賛同してくれたお兄様と素早く馬車に乗り込んだ。




