95.カイラの決意
「それじゃあ今から国際独立軍が置かれている状況を説明していくよ」
俺はカイラたち四人をモニターの前へ連れてきて言った。
「今現在国際独立軍と敵対している組織はない。だが今回のギルドの一件でガジス王国がある大陸は混乱している。帝国は先の大戦で敗戦国となり、ガジス王国に対して五年間の関税の撤廃や物資補償などの敗戦処理がなされている。そして帝国から国連総会開催の申請があった。今回の一件で帝国はその制度に何らかのケチはつけてくるだろうと思う」
こんな感じで国際独立軍関連の国際情勢を話した。
「なるほどね」
話を一通り聞き終えたカイラは目を閉じて考え込む。
「それで私たちは何をすればいいのかしら?」
黙り込んでしまったカイラをよそにムルが話しかけてくる。
「まずはこの情報作戦室でひたすら国際独立軍の日常になれてもらおうと思う。なので勤務時間中はここで座って見学しておくように」
もちろんこれには裏の意味がある。それは誰がどういう役目に向いているのかを把握することである。
これの目的はスヴェートにのみ伝えてあるので、俺が勤務時間外の時はスヴェートがカイラたちを見る事になっている。
「わかったわ」
「りょーかい」
「承知いたしました」
カイラ以外の他三人は俺の指示に対して返事をした。
カイラは相変わらず黙り込んでいる。
「カイラ。上官からの命令なんだが」
俺はカイラに向かって言う。
「え?あぁ。わかったわ」
カイラは我に返ったように返事をする。
「じゃあムル。シル。セルアータは作戦情報室に待機。何かあれば館内放送で呼んでくれ」
俺はカイラ以外の三人に声をかけた。
「カイラはちょっと俺についてくるように」
カイラにも声をかける。
カイラはうなずいた。
「カイラ。国際独立軍に入隊したんだから、俺の指示には従ってもらう。それに反応が遅すぎるぞ」
俺はカイラを会議室に連れてきて注意していた。
ギルドメンバーとしては先輩だったので、命令口調で話すのは抵抗があるのだが軍隊の司令官として上下関係はしっかりとしておかなければならない。でなければ軍隊としての規律が保てない。規律が崩れれば、それは軍隊ではなくただの暴徒である。
そこはしっかりとしておかなければならなかった。
「それはごめんなさい。それはそうとして聞きたいことがあるの」
「それはそうとしてじゃないだろ。軍隊としては結構大事なことだぞ」
俺は若干語気を強めて言う。
「ごめんなさい」
カイラはちょっと反省したのか素直に謝った。
「はぁ。今後は気をつけてくれ。で?聞きたい事ってのは何だ?」
俺はカイラに聞いた。
「国連総会が開かれると言うことは国際独立軍からも代表者が出るということですか?」
カイラは口調を丁寧にして聞いてくる。
ちょっとはさっきのことを反省したらしい。
「あぁ。俺が代表者で出る」
俺は答えた。
「その代表者に私を入れてほしいの」
カイラは意を決したように俺に言った。