94.アルディアータ共和国の方針
「では我が国からガジス王国に対しては何も要求しなくてよいか?」
エルフ国民議会議長は国連担当長官に言う。
会議の発端は国連総会の案内が国連よりもたらされたことである。
国連加盟国には国連から無線機が貸し出され国連本部との通信が可能である。
この無線機はあくまでも国連と加盟国との通信専用であり加盟国間では通信できない。
その通信機から国連総会開催の知らせがもたらされたのである。
一応首脳陣は予測していた事態だったのでそこまで動揺はなかった。
しかし国として方針を決める必要があるので会議が行われている。
国連総会での立場を決定するという観点から外務大臣ではなく国連担当長官が意見を求められていた。
国連担当長官はサトウのところに来た代表団の団長であった。
「そうですな。今回はガジス王国を擁護するのが得策かと考えますな。今回の一件でガジス王国は非常に立場が危うくなります。そこを我が国がガジス王国に助け船を出すことによってガジス王国に恩を売るのが一番利があるように思いますぞ」
「それではガジス王国に対する対応は擁護でいいか?」
エルフ国民議会議長は会議室を見渡して言った。
「大まかには同意しますが、あまりガジス王国側につくと足下をすくわれる可能性がありますな」
発言したのは外務大臣である。
「ほう。続けてくれ」
エルフ国民議会議長は続きを促す。
「はい。ガジス王国側にあえて寄り添うことによりガジス王国に恩を売る事自体は賛成します。しかしあまりにも親しくしすぎると我が国にも火の粉が降りかかる恐れがあります」
「ではどうすればいい」
「我が国の声明としてはガジス王国をやや非難する文体にしましょう。例えば「我がアルディアータ共和国は今回の一件に対してガジス王国側に貴族のしっかりとした監視をするよう求める。しかし今回の一件は我が国としては大きな不利益を被っていないので、損害の補償等は考えていない」とでも書いておけばいいでしょう」
「しかしそれでは恩を売るには微妙な立ち位置になりますぞ」
外務大臣の案をやんわりと否定したのは国連担当長官である。
「まぁまぁ。落ち着きなされ。もちろんこれで恩を売れるなどとは考えておらぬ。あくまで予測だが帝国は今回の一件でガジス王国に対してふっかけた条件の提示するだろう。それを「そこまで大きな事案ではないと考えるが」と助け船を出せば恩を売れるだろう。反論で「貴国は今回の一件を何も思っていないのか」とかなんとか言われたら「声明では批判しております」と言えば極度にガジス王国側にたったとも思われにくく、最悪共倒れというような自体にはならないと思いますぞ」
「では外務大臣が今言った案で反対の者はいるか?」
エルフ国民議会議長が会議のまとめに入った。
会議の出席者は皆うなずく。
こうして大まかな方針が決定されアルディアータ共和国では官僚たちが細かな書類を作り始めるのだった。




